「物件97号」の声とともに、出てきたのは病人のような少年だった。ここ惑星サーゴンでは、奴隷船で運ばれた人間の競りが行われていた。誰も手を出そうとしないその少年を落札したのは、隻眼で片足の老乞食バスリムだった。バスリムとの生活で、その少年ソービーはだんだんと健康を回復していった。バスリムは乞食に似合わないほどの、知識と人脈を持っていた。彼は、義眼と義足をつけ、かつらで変装して、何かの活動をしていることがあった。ソービーに秘密裏の伝言を頼むこともあった。バスリムはかつて宇宙軍の重要な地位にいて、何かの調査をしていたのだ。ソービーはバスリムから教育を受け、知識を蓄えていった。ある日、バスリムが殺された。その真相は、敵に捕まる前に、自ら服毒自殺をしたようであり、死に顔には微笑を浮かべていたらしい。生前のバスリムに、知らない言語による伝言を託されていたソービーは、恒星間宇宙船シス号のクラウサ船長にそれを伝えた。その内容はこうだった。「私の息子(養子)を銀河連邦宇宙軍の司令に引き渡し、連邦市民の遭難者であることを告げ、その家族を探してもらいたい」。クラウサ船長は、「バスリムからの借りを返す」と言って、ソービーを宇宙船に乗せることにした。警戒の厳重な宇宙港へ、ソービーは貨物に紛れて忍びこみ、船は無事にサーゴンから離陸して、次の目的地に向かった。シス号は自由交易者の宇宙船で、一つの家族80人あまりで運航されていた。家族が増えたときには、新しい宇宙船を手に入れて分家にするので、シス号のような交易船は、現在では何百隻もあるらしかった。