頸部超音波検査

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頸部超音波検査は頸部表在臓器である甲状腺や頸部リンパ節唾液腺や頸部腫瘤性疾患などを観察する超音波検査である。頸動脈など頸部血管を評価する検査は頸部血管超音波検査である。

甲状腺全体の観察

甲状腺全体の大きさを評価する。びまん性甲状腺腫の簡易診断基準として最大横径が20mm以上、最大縦径が15mm以上、峡部が4mm以上、長径×短径×厚み/2が成人男性ならば25ml以上、成人女性ならば18mm以上のいずれかを満たした場合にびまん性甲状腺腫とする。

甲状腺の内部エコーの評価

周囲筋肉や顎下腺と比較検討し内部エコーに異常がないかを観察する。びまん性の低エコー化を認めれば自己免疫性甲状腺疾患の存在が強く疑われる。

甲状腺腫瘤性病変の有無

横断、縦断像の二方向で検索し、腫瘤性病変が存在すればその局在、性状、サイズの評価を行う。周辺臓器との関係や良悪性診断、穿刺吸引細胞診の適応を決定する。

頸部リンパ節腫大の有無

腫大あれば部位、性状、サイズの評価を行う。癌のリンパ節転移疑いの場合はstaging診断を念頭におく。

唾液腺(耳下腺、顎下腺)疾患の有無

顎下腺は軽く下顎挙上を、耳下腺は頭部を対側に軽く傾斜してもらうと観察しやすくなる。

ドプラ法による血流評価

パワードプラ法にて甲状腺実質全体や腫瘤の血流評価を行い、必要に応じてパルスドップラー法にてFFT解析(流速、PI、RIの測定など)を行う。甲状腺中毒症の鑑別診断やPEIT治療の効果判定に特に有用である。

びまん性甲状腺疾患

橋本病

橋本病の超音波像典型例では辺縁は鈍化し、表面に凹凸がみられ厚みが増し、内部エコーがびまん性に低下し、全体に粗いエコー像が特徴的である。低エコーの部分も一様ではなく、不均一なことが多い。内部エコーが著明に低い症例では前頸筋群との境界が不明瞭となる。また、内部エコーが正常に近い症例やまれに局所的な低エコーを呈するもの、腫瘤性病変を形成するもの(偽腫瘍形成)、また片葉の著明な萎縮を呈するものなど多彩な像を呈することも知られている。内部エコーの低下は病状の進行とともに起こる濾胞構造の破壊、リンパ球の浸潤や線維化などの組織学的変化を反映していると考えられている。抗Tg抗体や抗TPO抗体など抗甲状腺抗体の高力価例や機能低下例に多い。また内部エコーの低下した甲状腺機能正常例は将来機能低下に移行しやすいことも知られている。偽腫瘍形成に関しては1cm前後の高エコーを呈する境界不明瞭な充実性腫瘤像の場合が多いが、多彩な像(多発結節形成、嚢胞形成や石灰化など)を呈しうるため、穿刺吸引細胞診が鑑別に重要である。しばしばリンパ節腫大も伴い、軽度の傍気管を含む甲状腺周囲リンパ節腫大は橋本病で比較的よく遭遇する所見である。悪性リンパ腫の合併はしばしば触診ではわかりにくく超音波検査でわかることが多い。

橋本病における甲状腺の血流の程度は甲状腺機能状態、特に甲状腺刺激ホルモン(TSH)と相関する。一般にTSHは血管内皮細胞増殖因子(VEGF)を増加させることが知られている。甲状腺機能低下状態となるとTSHが増加し甲状腺内の血流が増加する。バセドウ病のカラードプラ所見に似るため鑑別が必要となる。

萎縮性甲状腺炎

橋本病の末期像である。甲状腺の萎縮と内部エコーの著明な低下が認められる。この頃になると甲状腺組織が荒廃しているためTSHが高値であっても血流は乏しいことが多い。

バセドウ病

バセドウ病の超音波像ではびまん性腫大を示すが、その程度は様々である。内部エコーは一般に低下することが多いが、逆に増強されている症例や正常に近い症例も存在する。橋本病に比べると内部エコーが保たれている例が多い。通常、内部エコーが低く、不均一なほど活動性も高く、拡張した血管像も時にみられる。低エコーの症例や血流の多い症例ほど抗甲状腺薬投与中止後の再発率が高いとも言われている。また気管周囲に比べ甲状腺実質辺縁部の低エコー化が同疾患に特徴的という報告もある。ドプラ所見は未治療例の多くで実質内部に多くの血流が表示され、拍動が燃えさかる炎のように描出され火焔状(thyroid inferno)と表現される。但し治療の開始に伴い、血流増加は鎮静化する。パルスドプラ法では上甲状腺動脈の血流速度が50cm/sec以上の時はバセドウ病を疑う。ドプラ所見は破壊性甲状腺炎(無痛性甲状腺炎や亜急性甲状腺炎)との鑑別に有用である。

EOG(Euthyroid Ophthalmic Graves病)

EOGでは超音波上は軽度のびまん性甲状腺腫を認めるのみで、内部エコーは正常のことが多い。

無痛性甲状腺炎

超音波像は軽度のびまん性甲状腺腫大と内部エコーの低下や不均一化、すなわち橋本病の典型像に準じる。亜急性甲状腺炎のような局所病変は認められず、バセドウ病のような血流増加も通常は認められない。このような除外診断が無痛性甲状腺炎の超音波検査では重要となる。

亜急性甲状腺炎

超音波像では圧痛、硬結部位に一致して境界不明瞭な(地図状といわれる)低あるいは無エコー領域が認められ甲状腺全体の体積もやや大きくなる。内部エコーは均一であったり、まだら状不均一であったり様々である。病変の移動や経過のタイミングによっては片葉全体が低エコーを呈したり、両葉に複数の低エコー域が存在することもある。圧痛、硬結部位の低エコー領域の改善は臨床症状より遅れることが多い。ドプラ所見では急性期は圧痛、硬結部位の低エコー領域ではほとんど血流が確認できない。回復期に一過性の血流増加を認める。

単純性甲状腺腫

軽度のびまん性甲状腺腫を認める以外、内部エコーは全く正常である。局所病変も少数の微小嚢胞を除いて認められない。ドプラ法でも通常は血流の異常所見は認められない。

結節性甲状腺疾患

関連項目

参考文献

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