1inch
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| 種類 | 非公開企業 |
|---|---|
| 略称 | 1inch |
| 設立 | 2019年5月19日 |
| 業種 | 分散型金融 (DeFi)、ブロックチェーン |
| 代表者 | Sergej Kunz, Anton Bukov |
| 所有者 | Degensoft Ltd. |
| 外部リンク | https://1inch.com/ |
1inchは、複数のブロックチェーンネットワークに対応した分散型金融(DeFi)のエコシステムであり、暗号資産トークンのスワップ機能や[1][2]、複数の分散型取引所(DEX)およびマーケットメイカーから流動性を集約して取引を最適化する仕組みを提供している[3][4]。もともとはDEXアグリゲーターとして始まったが、近年では、承認されたリゾルバーがダッチオークション方式で注文を執行するインテントベースのスワップ機能も導入している。
1inch という名称は、単一の中央集権的な企業を指すものではなく、分散型金融(DeFi)のエコシステム全体を指している。プロジェクトは、DeFiインフラの開発に重点を置いたコミュニティ主導の取り組みとして始まった。1inchの中核となる技術はDegensoft Ltd.によって開発されている。その後、1inchブランドは消費者向けアプリケーション、分散型プロトコル、企業向けサービスへと展開を広げ、こうした発展はプロジェクト全体のリブランディングにも反映された。
1inchエコシステムは、トークンスワップ、資産管理、ならびにサードパーティとの統合を目的としたインフラサービスのための各種ツールを提供している[5]。中核技術は、Ethereum Virtual Machine(EVM)互換ネットワークおよびSolanaを含む複数のブロックチェーン上の流動性を集約する仕組みを採用している[6]。2026年時点で、1inchはEthereum、BNB Chain、Polygon、Arbitrum、Optimism、Base、Avalanche、zkSync Era、Linea、Sonic、Unichainなど、計13のブロックチェーンネットワークに対応している。
沿革
初期開発(2019年–2020年)
1inchは、2019年5月にニューヨーク市で開催されたETHGlobalハッカソンにおいて、Sergej KunzとAnton Bukovが分散型取引所(DEX)アグリゲーションの初期プロトタイプを開発したことをきっかけに始まった[7]。プロジェクトは、複数の分散型取引所から流動性を集約し、トークンスワップレートの改善を目的としていた。翌年には、開発を継続的に支援するため、Degensoft Ltd.が正式に設立された[8]。
2020年8月11日、最初のプライベートトークンセールを実施し、Binance Labsが主導する形で280万米ドルを調達した。同年12月2日には第2回のプライベートトークンセールが行われ、Pantera Capitalを含む投資家から追加で1,200万米ドルを確保した。その後、2020年12月後半に1INCHトークンが公開取引所に上場し、同時期に1inch DAOが設立されたことで、トークン配布とコミュニティ主導によるガバナンスが開始された[9][10]。
拡大とプロトコル開発(2021年–2023年)
2021年4月22日、1inchは、デジタル資産の管理およびトークンスワップを行うための非カストディアル型モバイルウォレットである1inch Walletをリリースした[11]。続いて、同年6月8日には、ユーザーがオフチェーンでリミットオーダーを作成し、オンチェーンで決済を行うことを可能にするLimit Order Protocolが導入された[12][13]。
2021年12月1日には、3回目となるプライベートトークンセールが実施され、Amber Groupが主導し、Jane Street、VanEck、Fenbushi Capital、Alameda Researchなどの機関投資家が参加した。この資金調達により、評価額22億5,000万米ドルで総額1億7,500万米ドルが調達された[1]。このラウンドは、伝統的な金融機関の分散型金融(DeFi)分野への関与を意識したものとされている[7]。
2022年12月25日には、インテントベースの実行方式を通じて、プロトコル間のルーティングおよび流動性集約の効率化を図る1inch Fusion Protocolが公開された[14][15]。さらに、2023年7月には、開発者向けにWeb3プロダクト構築のためのAPIを提供するクラウド型ソフトウェア・アズ・ア・サービス(SaaS)として1inch Developer Portalが立ち上げられ、後に1inch Businessへとリブランディングされた[16][17]。
最近の動向(2024年–2025年)
2024年9月8日、1inchはFusion+をリリースし、アトミックスワッププロトコルを用いることで、ユーザーが自らブリッジ操作を行うことなくクロスチェーンスワップを可能にした[18][19]。
2025年4月29日、Solanaブロックチェーンへの対応を開始し、8月19日にはSolanaと他のブロックチェーンネットワークとの間でクロスチェーンスワップ機能を拡張した[20]。続いて、10月1日には、分散型金融(DeFi)と伝統的金融を結び付ける方針を反映し、企業リブランディングを完了した[21]。
2025年11月17日、Aquaを発表。Aquaは、流動性提供者およびマーケットメイカーの資本利用効率と運用効率の向上を目的とした共有流動性プロトコルである[22][23]。このプロトコルにより、ユーザーのカストディを損なうことなく、複数のDeFi戦略が同一の資本基盤に同時にアクセスすることが可能となる[22][24]。Aquaの開発者向けプレビューはアルゼンチンで開催されたDevconnectにおいて公開され、完全なフロントエンドインターフェースは2026年に提供される予定である[23][25]。
製品およびサービス
消費者向け製品(B2C)
Simple Swap(旧称:1inch Swap)は、インテントベースの実行と、多数の分散型取引所およびマーケットメイカーにまたがる流動性の集約を組み合わせた、1inchプラットフォームの主要なトークンスワップ用インターフェースである。同サービスは、価格の改善を目的としてスワップの経路選択(ルーティング)を行うほか、最大抽出可能価値(MEV、Maximal Extractable Value)に対する保護機能やセキュリティ機能を備える。また、13以上のブロックチェーンネットワークにおけるトークンスワップに対応している[26]。
Pro Interface(旧称:1inch Pro)は、拡張されたルーティングオプションやガス最適化など、経験者向けの追加機能を備えた取引インターフェースである。Simple Swapと同一のプロトコルスタック上に構築されている[27]。
1inch Walletは、ユーザーがデジタル資産を自己管理し、分散型アプリケーション(dApps)と連携してトークンスワップを行うことができる自己管理型(セルフカストディ)のモバイルウォレットアプリである[28]。複数のブロックチェーンネットワークに対応し、DEXアグリゲーターを内蔵するほか、トランザクションシミュレーションやフィッシング検出などのセキュリティ機能を備える[29][30]。
1inch Portfolioは、対応するブロックチェーンネットワークにまたがるユーザーの残高やポジションを集約して表示する分析プラットフォームである。保有資産、取引履歴、損益などの指標を閲覧できる[31]。
1inch Cardは、Crypto LifeおよびMastercardとの提携により発行される暗号資産デビットカードであり、日常の支払いに暗号資産を利用できるようにする[29]。取引時に暗号資産を法定通貨に換算し、Apple PayおよびGoogle Payによる非接触決済に対応する。欧州経済領域(EEA)および英国で提供され、FCAの認可を受けた電子マネー機関でありMastercardのプリンシパルメンバーであるMonavateが発行体となっている。
法人向けソリューション(B2B)
1inch Business(旧称:1inch Developer Portal)は、ウォレット、分散型アプリケーション、中央集権型取引所、ネオバンク、その他の暗号資産関連サービスによる統合を目的としたWeb3 APIおよびインフラ基盤である。2025年10月に、1inch Businessへとリブランディングされた[32]。
同プラットフォームは、複数のAPIへのアクセスを可能としており、スワップのルーティング(アグリゲーション、インテントベース、クロスチェーン)、残高照会、ブロックチェーンノードへのアクセス、ポートフォリオ追跡、リミットオーダー関連データ、トランザクションのブロードキャスト、履歴データ、トークンおよびNFT情報、ガス価格データ、スポット価格フィードなどの機能に対応している[33]。
1inch Businessは、Ethereum Virtual Machine(EVM)互換チェーンやSolanaを含む、1inchプロトコルが対応する複数のブロックチェーンネットワーク上での統合に対応している[34]。
技術およびプロトコル
1inch アグリゲーション・プロトコル
1inch Aggregation Protocolは、スマートコントラクトに基づく取引執行システムであり、注文を複数の分散型取引所に分割して執行することで、価格の改善およびガスコストの低減を目的としている[6]。本プロトコルは、複数の潜在的な取引ルートを解析するPathfinderアルゴリズムを採用しており、最適化の過程においてガス消費を考慮しつつ、複数の流動性ソース間でスワップを分割することを可能としている[14]。
1inch リミットオーダー・プロトコル
Limit Order Protocolは、ユーザーがガス効率の高いリミット注文や、プログラム可能な条件付き注文を作成することを可能とするプロトコルである[12]。注文はオフチェーンで作成され、オンチェーンで決済される構造を採用しており、Request for Quote(RFQ)型の実行モデルに対応している。本プロトコルは、1inchの自社インターフェース内で利用されるほか、APIインフラを通じて外部パートナーにも提供されている[35]。
Fusion および Fusion+ プロトコル
2022年12月にローンチされたFusionは、Limit Order Protocolを基盤とするインテントベースのスワッププロトコルである[14]。競争的なリゾルバネットワークを通じて、ユーザー側でのガス支払いを必要とせず、フロントランニング耐性を備えたスワップを可能としており、取引の執行にはダッチオークション方式に類似したメカニズムが用いられている。リゾルバはプロフェッショナルなマーケットメイカーで構成され、ユーザーの注文条件に基づき、レートを競争的に提示する仕組みとなっている[36]。
2024年9月にリリースされたFusion+は、このインテントベースモデルをクロスチェーンスワップへと拡張したプロトコルである。従来のブロックチェーンブリッジを使用することなく、アトミックなクロスチェーン実行を可能としており、複数のブロックチェーンにまたがる決済処理の複雑性はリゾルバが担う設計となっている[18]。
1inch Aqua
1inch Aquaは、2025年11月に発表された共有流動性プロトコルであり、資産をユーザーのカストディ下に保持したまま、複数の分散型金融(DeFi)戦略が同一の資本に同時にアクセスすることを可能とする設計となっている[22]。本プロトコルでは、資産はユーザーのウォレット内に留まり、あらかじめ定義された条件が満たされた場合にのみ、アトミックトランザクションを通じて利用される共有流動性レイヤーが導入されている[37]。
同プロトコルは、レジストリベースのアローワンス(許可)システムを用いることで、流動性提供者がトークン残高を複数のDeFi戦略に配分できるようにすることにより、流動性の断片化への対応を図る設計となっている[23]。Aquaは2025年11月にブエノスアイレスで開催されたDevconnectにおいて開発者向けに公開され、併せて開発ツールや、最適化およびバグ発見に対する報酬を提供するバウンティプログラムが公開された[38]。
スポット価格アグリゲーター
1inch Spot Price Aggregatorは、複数の流動性ソースを分析することで、操作耐性のあるオンチェーン価格データを提供するインフラコンポーネントである。この仕組みにより、特定の市場や流動性に依存しない価格算出を可能としている。同コンポーネントは、1inchの各種アプリケーション内部で利用されるほか、Business APIスイートを通じてサードパーティによる統合にも開放されている[39]。