ア・トライブ・コールド・クエスト
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ア・トライブ・コールド・クエスト(英: A Tribe Called Quest)は、アメリカ合衆国ニューヨーク市クイーンズ区で結成されたヒップホップ・グループ。通称は「ATCQ」。Qティップ、ファイフ・ドーグ、アリ・シャヒード・ムハマド、ジェロビ・ホワイトの4人によって構成される。
ジャングル・ブラザーズ、デ・ラ・ソウル、クイーン・ラティファらとともに、ヒップホップ集団ネイティブ・タンの中核を担った。
多様なサンプル音源を再構築した音作りや、Qティップとファイフ・ドーグによる、遊び心と社会批評を織り交ぜたラップの掛け合いを特徴とする。こうした表現を通じて、オルタナティヴ・ヒップホップやジャズ・ラップの発展に大きく貢献した[1]。
1990年から1998年にかけて5枚のスタジオ・アルバムを発表したのち解散したが、その後も断続的に再結成して公演を行った。2016年には18年ぶりとなる6作目のアルバムを発表し、翌2017年に最後の公演を行った。2024年にはパフォーマー部門でロックの殿堂入りを果たした[1]。
来歴

1985年 - 1990年:結成とデビュー
Qティップとファイフ・ドーグは幼少期からの友人で、ファイフとジェロビ・ホワイトも中学生のころから交流があった。のちにアリ・シャヒード・ムハマドが加わり、1980年代半ばに「クエスト」の名で活動を開始した。現在のグループ名は、同じ高校に通っていたジャングル・ブラザーズのアフリカ・ベイビー・バムによって命名された[2]。
Qティップは1988年、ジャングル・ブラザーズの楽曲「Black Is Black」「The Promo」に参加した。グループはジャングル・ブラザーズやデ・ラ・ソウルとの交流を深め、思想や音楽性を共有するネイティブ・タンを形成した。ネイティブ・タンには、のちにクイーン・ラティファ、モニー・ラヴ、ブラック・シープらも参加した[3]。
グループはジャイヴ・レコードと契約し、1990年にデビュー・アルバム『ピープルズ・インスティンクティヴ・トラヴェルズ・アンド・ザ・パスズ・オブ・リズム』を発売した。同作では、ジャズ、ソウル、ファンク、ロックなど幅広い音源を組み合わせ、「I Left My Wallet in El Segundo」「Bonita Applebum」「Can I Kick It?」など、ユーモアや日常的な物語を扱った楽曲を収録した。ヒップホップ専門誌The Sourceでは、同誌史上初となる最高評価「5本マイク」を獲得した[2]。ジェロビは同作発表後、表立った音楽活動から離れたが、正式にグループとの関係を断ったわけではなかった[4]。
1991年 - 1993年:音楽的確立と商業的成功
1991年、2作目『ロウ・エンド・セオリー』を発表した。同作では、硬質なドラムと太いベースを前面に置いたストイックなサウンドを構築し、ジャズの音色とヒップホップの強固なループを緊密に結びつけた。ジャズ・ベーシストのロン・カーターも「Verses from the Abstract」に参加した[5]。
前作では参加が限定的だったファイフ・ドーグの比重が増し、「Check the Rhime」などでQティップとの掛け合いがグループの中心的な表現として確立された。アルバム終盤の「Scenario」にはリーダーズ・オブ・ザ・ニュースクールが参加し、バスタ・ライムスの知名度を高める契機にもなった。『ロウ・エンド・セオリー』は後年、2021年のグラミー殿堂に選出された[5]。
1993年には3作目『ミッドナイト・マローダーズ』を発表した。前作で確立した音楽性を引き継ぎながら、より多様なサンプルを緻密に重ね、メロウで浮遊感のある曲調へと発展させた。曲間では、ロボット風のツアーガイドがアルバムのコンセプトや雑学、社会的なメッセージを語るナレーションが流れ、作品全体に未来的かつコンセプチュアルな統一感を持たせた[6]。「Award Tour」「Electric Relaxation」「Oh My God」などを収録し、アルバムはビルボード200で8位、R&B/ヒップホップ・アルバム・チャートで1位を記録した[2]。
1994年 - 1998年:ジ・ウマー期と解散
『ミッドナイト・マローダーズ』以後、Qティップとアリ・シャヒード・ムハマドは、デトロイト出身のプロデューサー、ジェイ・ディーとともに制作チーム「ジ・ウマー」を結成した。1996年の4作目『ビーツ、ライムズ・アンド・ライフ』ではジ・ウマーが制作の中心となり、Qティップの従弟であるコンシークエンスも複数の楽曲に参加した。
同作では、初期作品の明るい雰囲気から、音楽産業、人種、精神性などを扱う内省的な内容へと移行した。ビルボード200で初登場1位を記録し、「1nce Again」とアルバム本体がそれぞれグラミー賞にノミネートされた[7]。
1998年、5作目『ザ・ラヴ・ムーヴメント』を発表した。同作は徹底的な引き算の美学で作られた、隙間の多い空間的なサウンドを基調とし、恋愛や人間関係を主要な題材とした。制作の過程ではQティップとファイフの関係を含むグループ内部の緊張が深まり、アルバム発売前後に解散が発表された[4]。同作はグラミー賞の最優秀ラップ・アルバム部門にノミネートされた[7]。
2006年 - 2013年:再結成とドキュメンタリー
2006年、グループはライブ活動のために再結成した。再結成後の公演には、糖尿病に関連する治療を受けていたファイフの医療費を支援する目的もあったとされる[4]。以後、Rock the Bellsなどの音楽祭に出演し、ジェロビも公演に参加した。
2008年の再結成ツアーには俳優のマイケル・ラパポートが同行し、メンバー間の友情、対立、ファイフの健康問題などを記録した。映像は2011年にドキュメンタリー映画『ビーツ、ライムズ・アンド・ライフ ~ア・トライブ・コールド・クエストの旅~』として公開され、翌年のグラミー賞最優秀音楽映画部門にノミネートされた[7][8]。
2013年には、カニエ・ウェストの「Yeezus Tour」のニューヨーク公演に出演した。Qティップは当時、この公演をグループ最後のライブと表明していた[9]。
2015年 - 2017年:最終アルバムと活動終了
2015年11月、デビュー作の発売25周年を記念し、メンバーはテレビ番組『ザ・トゥナイト・ショー・スターリング・ジミー・ファロン』に出演した。ザ・ルーツを伴った演奏を通してメンバー間の創作意欲が再び高まり、Qティップの自宅スタジオで新作の制作を開始した[4]。
ファイフ・ドーグはレコーディングに参加していたが、2016年3月22日、糖尿病に伴う合併症のため45歳で死去した[10]。残されたメンバーはファイフが録音したヴァースを用いながら制作を継続した。
同年11月、18年ぶりとなる6作目『ウィ・ゴット・イット・フロム・ヒア…サンキュー・フォー・ユア・サービス』を発表した。ジェロビが正式に録音へ復帰したほか、バスタ・ライムス、コンシークエンス、アンドレ3000、ケンドリック・ラマー、ジャック・ホワイト、エルトン・ジョン、アンダーソン・パークらが参加した[11]。
アルバムでは人種差別、排外主義、貧困、政治的分断などが扱われ、過去作のサンプリング感覚と生演奏を組み合わせたサウンドが展開された。ビルボード200で初登場1位となり、『ビーツ、ライムズ・アンド・ライフ』以来となるグループ2作目の全米1位アルバムとなった[12]。
2017年には同作に伴うツアーを実施し、同年9月にイギリスのBestivalで最後の公演を行った。ステージ上にはファイフを象徴する空のマイクが設置され、Qティップは同公演をア・トライブ・コールド・クエストとしての最後のライブと表明した[13]。
2024年、ア・トライブ・コールド・クエストはロックの殿堂のパフォーマー部門に選出された。殿堂入りしたメンバーはQティップ、ファイフ・ドーグ、アリ・シャヒード・ムハマド、ジェロビ・ホワイトの4人である[1]。
メンバー

- Qティップ(Q-Tip)
- 1970年4月10日生まれ、ニューヨーク・クイーンズ区出身。
- MC担当、プロデューサー。グループ解散後はソロ活動を展開。また俳優としても活動している。90年代半ばにイスラム教に改宗した。
- ファイフ・ドーグ(Phife Dawg)
- 1970年4月20日生まれ、ニューヨーク・ブルックリン地区出身。
- MC担当。グループ加入以前はバスケットボールのプロ選手になることを目指していた。遺伝性の1型糖尿病を患っている。
- もともとバスケットボール選手であったこともあり、大のバスケファン。高校バスケのスカウトとしても働く。
- 糖尿病による合併症のため、2016年3月23日死去[14]。
- ジェロビ・ホワイト(Jarobi White)
- 1971年生まれ、出身地不明。
- 1989年加入し、1stアルバム発表後に脱退。2006年の再結成の際に復帰した。
ディスコグラフィ
アルバム
| 年 | タイトル | アルバム詳細 | チャート最高位 | 認定 | |||||||||
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| US [15] |
CAN [16][17] |
NZ [18] |
UK [19] | ||||||||||
| 1990 | 『ピープルズ・インスティンクティヴ・トラヴェルズ・アンド・ザ・パスズ・オブ・リズム』 - People's Instinctive Travels and the Paths of Rhythm |
91 | — | — | 54 |
| |||||||
| 1991 | 『ロウ・エンド・セオリー』 - The Low End Theory |
|
45 | — | — | 58 |
| ||||||
| 1993 | 『ミッドナイト・マローダーズ』 - Midnight Marauders |
|
8 | 48 | — | 70 |
| ||||||
| 1996 | 『ビーツ,ライムズ・アンド・ライフ』 - Beats, Rhymes and Life |
|
1 | 7 | 32 | 28 | |||||||
| 1998 | 『ザ・ラヴ・ムーヴメント』 - The Love Movement |
|
3 | 2 | — | 38 | |||||||
| 2016 | 『ウィ・ゴット・イット・フロム・ヒア・サンキュー・フォー・ユア・サービス』 - We Got It from Here... Thank You 4 Your Service |
1 | 3 | 13 | 24 | ||||||||
| "—"は未発売またはチャート圏外を意味する。 | |||||||||||||
映画
- ビーツ、ライムズ・アンド・ライフ ~ア・トライブ・コールド・クエストの旅~ - Beats Rhymes & Life: The Travels Of A Tribe Called Quest (2011年)