Asiagraph
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ASIAGRAPH(アジアグラフ)は、アジア地域のCG(コンピュータグラフィックス)・デジタルコンテンツに関する国際イベントである。CGアート作品の展示、アニメーション上映、学術発表、匠賞・創賞の顕彰を柱とする。日本・中国・韓国を中心にアジア各国の研究者やクリエイターが参加し、2006年から毎年開催されている。
CGアート作品の公募展示「CGアートギャラリー」、CGアニメーション作品の上映「CGアニメーションシアター」、学術論文の発表、および匠賞・創賞(紡賞)の授与がおもな活動にあたる。
名称は「ASIA」と「GRAPH(IC)」を組み合わせた造語である。米国のSIGGRAPHとは組織上の関係はなく、アジア側から独自に立ち上げられた[1]。
運営には日本バーチャルリアリティ学会(VRSJ)が学術面で関与し、一般財団法人デジタルコンテンツ協会(DCAJ)がイベント運営を担ってきた。近年は大垣女子短期大学および岐阜県図書館との共催が定着している[2]。
設立経緯
ASIAGRAPHの前身は、河口洋一郎(東京大学教授、CGアーティスト)、喜多見康(文京学院大学教授)、金鐘棋(東西大学教授)の3名を中心に構想された「アジアグラフィック」である。河口は以前からアジア発のメディア芸術の場の必要性を唱えており、喜多見は日本国内のCGクリエイターのネットワーク形成を手がけていた。金は中国・韓国との学術交流を推進し、2004年7月にアジア芸術科学学会を設立した[1]。
中国で開催されたメディア芸術系の学会に喜多見が日本のCG作品を持ち込んだことを契機として、日中韓3か国の協力体制が具体化した。2005年には愛知万博で「アジアグラフィック2005」が開催され、日本30名、中国15名、韓国5名のクリエイターが参加した。翌2006年、上海で第1回ASIAGRAPHが正式に開催された[1]。
金鐘棋は「21世紀は家族の絆を大切にする東洋文化から、人間の生活を豊かにするものを生み出す時代」と語り、上海・釜山・日本をネットワーク型の大学で結ぶ構想や、3か国の持ち回りによるトリエンナーレ開催を提唱した[1]。
開催地の変遷
初期は上海、東京(日本科学未来館)などで開催された。2009年以降はDCExpo(デジタルコンテンツEXPO)の一環として東京・日本科学未来館を主会場とするようになり、2018年から2019年にかけては幕張メッセで開催された。
2020年以降はCOVID-19の影響もあり、オンラインと実地のハイブリッド開催となった。CGアートギャラリーの展示は台湾(国立台南芸術大学)と岐阜(岐阜県図書館)を拠点とする体制が定着している[2]。匠賞・創賞の授賞式は2022年以降、Inter BEE IGNITION x DCEXPOの枠内で幕張メッセにて行われている[3]。
| 年 | 東京会場 | 海外・地方会場 | 備考 |
|---|---|---|---|
| 2005 | 愛知万博 | 「アジアグラフィック2005」名義 | |
| 2006 | 上海 | 第1回ASIAGRAPH | |
| 2007–2008 | 日本科学未来館 | ||
| 2009–2017 | 日本科学未来館 | 2010年:上海、2013年:鹿児島、2017年:高雄(台湾) | DCExpo併催 |
| 2018–2019 | 幕張メッセ | DCExpo併催 | |
| 2020 | オンライン | 台南(台湾)、岐阜 | COVID-19対応 |
| 2021–2025 | 岐阜県図書館、台南/台湾芸術大学 | 授賞式はInter BEE(幕張メッセ) |
組織
部門構成
複数の公募部門があり、年度によって構成が変わる。近年の部門は以下のとおり。
- 第一部門 CGアートギャラリー(静止画作品の公募展示)
- 第二部門 CGアニメーションシアター(動画作品の公募・上映)
- 第三部門 学生アニメーション部門(25歳以下対象)
- 第四部門 こどもCGコンテスト(中学生以下対象)
- 第五部門 パソコン甲子園 高校生国際部門(会津大学と共同、2016年設置)
このほか年度によって「初音ミクと描く未来部門」(クリプトン・フューチャー・メディア協力、2015年新設)や「ウルトラ怪獣デザインコンテスト」(円谷プロダクション協力、2014年)などの特別部門が設けられた[4]。
応募資格はアジア地域に出生・居住・国籍を有する者で、プロ・アマを問わない。2024年の募集要項では画像生成AIを用いた作品は応募不可とされた[5]。
匠賞・創賞
ASIAGRAPHは独自の顕彰制度として匠賞(たくみしょう)と創賞(つむぎしょう)を設けている。河口洋一郎が主宰し、毎年秋に各1名(まれに複数名)を選出する。
匠賞
デジタルコンテンツや芸術文化の分野で長く活動し、実績のある人物に授与される。受賞者の分野はCGに限らず、建築、音楽、ロボット工学、脳科学、宇宙開発、伝統芸能にまでおよぶ。
創賞(紡賞)
新しい表現を切り開いた人物に授与される。アニメーション監督、映画プロデューサー、アーティスト、起業家など、受賞者の顔ぶれは多様である。
初期には「創」の字があてられていたが、近年の一部資料では「紡」の表記も確認される[6]。いずれも読みは「つむぎ」である。
歴代受賞者
| 年度 | 匠賞 | 肩書・分野 | 創賞(紡賞) | 肩書・分野 |
|---|---|---|---|---|
| 2008 | 井上雄彦 | 漫画家 | ||
| 2009 | 月尾嘉男 | 東京大学名誉教授・メディア工学 | 宮本茂 | ゲームクリエイター・任天堂 |
| 2010 | 坂根厳夫 | IAMAS名誉学長 | 鈴木敏夫 | 映画プロデューサー・スタジオジブリ |
| 2011 | 冨田勲 | 作曲家・シンセサイザー音楽の先駆者 | 秋元康 | 作詞家・プロデューサー |
| 2012 | 隈研吾 | 建築家 | 細田守 | アニメーション映画監督 |
| 2013 | 樋口真嗣 | 映画監督・特撮監督 | 清川あさみ | アーティスト |
| 2014 | 山崎直子 | 宇宙飛行士 | 石川光久 | プロダクション I.G代表取締役 |
| 2015 | 石黒浩 | 大阪大学教授・ロボット工学 | 原恵一 | アニメーション映画監督 |
| 2016 | 妹島和世 | 建築家・プリツカー賞受賞者 | ||
| 2017 | 九世野村万蔵 | 狂言師 | 片渕須直・真木太郎 | 映画監督・プロデューサー |
| 2018 | 真鍋大度 | アーティスト・プログラマー(ライゾマティクス) | 林真理子 | 小説家 |
| 2019 | 中野信子 | 脳科学者・医学博士 | 千住明 | 作曲家 |
| 2020 | 松尾豊 | 東京大学教授・AI研究 | スプツニ子! | アーティスト |
| 2021 | 布袋寅泰 | ギタリスト・音楽プロデューサー | コシノジュンコ | ファッションデザイナー |
| 2022 | 小室哲哉 | 音楽プロデューサー | 和田秀樹 | 精神科医・作家 |
| 2023 | 猪子寿之 | チームラボ代表 | 孫泰蔵 | 起業家・投資家 |
| 2024 | 落合陽一 | メディアアーティスト・筑波大学准教授 | 山崎貴 | 映画監督・VFXディレクター |
| 2025 | 藤本壮介 | 建築家 | さかなクン | 魚類学者・イラストレーター |
授賞式ではシンポジウムが併催され、受賞者と河口洋一郎との対談が行われることが通例となっている。2013年のシンポジウムは「技術とアートの融合が生み出す新しい表現」、2017年は「日本的なるものから世界的なるものへ〜メディアで昇華するインテリジェンス〜」といったテーマが設定された[7][8]。
ASIAGRAPH Reallusion Award
ASIAGRAPH Reallusion Awardは、Reallusion社との共催による国際的な学生向け3Dアニメーションコンテストである。参加チームは48時間以内にiClone等の3DCGツールを用いて短編映像を制作する。
2010年に台湾で前身イベントが始まり、2012年にアジア各国に拡大して「ASIAGRAPH Reallusion Award」に改称された。各国で予選が行われ、上位チームが台湾本選に進出する。2018年時点で13か国・111校から250チーム以上が参加した[9]。
3D部門のBest Film Awardには賞金10,000米ドルが授与された。2018年の3D部門グランプリは名古屋工学院専門学校のチームが受賞した[9]。
CGアートギャラリー
CGアートギャラリー代表の喜多見康は、CGアートが1990年代後半をピークに商業利用へ偏り、芸術表現の場が縮小したとの見方を示している。ASIAGRAPHでは「最高の技術を使って表現の限界に挑戦するアートとしてのCGの場を生み出す」ことを掲げ、独創性と視覚的な質を審査基準の中心に据えている[10][4]。
2018年時点でアジア17の国と地域から約700点の応募があった[4]。入選者にはセルシス(CLIP STUDIO PAINT開発元)から制作ソフトウェアが提供されている。