レンサ球菌咽頭炎
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レンサ球菌咽頭炎(レンサきゅうきんいんとうえん)、またはレンサ球菌扁桃炎(れんさきゅうきんへんとうえん、英:Streptococcal pharyngitis、口語的にはstrep throatと呼ばれる)は、A群β溶血性レンサ球菌(化膿レンサ球菌)によって惹き起こされる咽頭炎の一種である[1]。扁桃を含む咽頭に炎症を起こし、喉頭まで広がることもある。よくみられる症状に、発熱、咽頭痛、リンパ節の腫脹がある。小児の咽頭痛の37%[2]、成人の咽頭痛の5~15%がレンサ球菌咽頭炎によるものである[3]。
レンサ球菌咽頭炎は感染者との密接な接触によって広がる伝染性疾患である。咽頭培養によって診断を確定するが、治療法は症状次第であるため、必ずしも培養を実施する必要はない。レンサ球菌性であることが強く疑われる症例や確定した症例には、合併症の予防および早期回復のいずれの面からも抗生物質が有用である[4]。
症状と徴候
原因
診断
| 点数 | レンサ球菌咽頭炎の可能性 | 治療 |
|---|---|---|
| 1以下 | ~10% | 抗生物質や培養は不要 |
| 2 | 11~17% | 培養またはA群β溶血性連鎖球菌迅速診断(RADT)
後、抗生物質を投与 |
| 3 | 28~35% | |
| 4 または 5 | 52% | 培養などの結果を待たず抗生物質を投与 |
咽頭炎の治療法を検討する上で Modified Centor criteriaを用いることがある。5つの診断基準に基づきレンサ球菌に感染している可能性を割り出すというものである[4]。
各項目につき1点を加算[4]
- 咳がないこと
- 圧痛を伴う頸部リンパ節腫脹
- 38.0 °C (100.4 °F)以上の発熱
- 扁桃の腫脹や滲出物
- 15歳未満である (45歳以上の場合は1点を減じる)
ただし、米国感染症学会 は経験的治療を推奨しておらず、試験の結果陽性であることが確認された場合に限り抗生物質を用いるべきであるとする立場をとっている[3]。3歳以下の小児にはA群β溶血性レンサ球菌およびリウマチ熱のいずれも稀であるため、試験は不要である。ただし兄弟が同疾患に罹患している場合は例外である[3]。
臨床検査
咽頭培養は感度90~95%と高く[4]、レンサ球菌咽頭炎の診断に至適である[9] AA群レンサ球菌迅速診断キット (RADT) を用いることもある。A 群レンサ球菌迅速診断キットのほうが迅速であるが、感度は咽頭培養より低く(70%)、特異度は統計的に同程度である(98%)[4]。
レンサ球菌咽頭炎の疑いのある患者には、症状があり咽頭培養またはRADT陽性であれば陽性診断が可能である[10]。成人ではRADT陰性であれば除外診断ができるが、小児の場合、診断を確かなものにするため咽頭培養が推奨される[3]。常に咽頭にレンサ球菌を保菌している保菌者が一定割合存在するものの、なんら有害な影響はないため、症状のみられない患者にルーチンに咽頭培養やRADTを実施すべきではない[10]。
鑑別診断
レンサ球菌咽頭炎の症状は他の疾患の条件と重複しているため、臨床的に診断を行うことが難しくなっている[4]。発熱および咽頭痛に加えて咳や鼻水、下痢、充血や眼のかゆみがみられる場合にはレンサ球菌咽頭炎よりむしろウイルス性咽頭痛であることを示す[4]。 咽頭痛、発熱および扁桃の腫大に伴う著明なリンパ節腫大は、伝染性単核球症にもみられるものである[11]。
予防
治療
レンサ球菌咽頭炎は未治療でも通常数日で軽快する[4]。抗生物質による治療を実施すれば、急性疾患の持続時間を16時間程度減少させる[4]。抗生物質による治療を実施する主要な目的はリウマチ熱や咽頭後壁膿瘍などの合併症のリスクを減らすことであり[4]、症状が出始めてから9日以内に投与すれば効果が期待できる[7]。
鎮痛剤
非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)やパラセタモール (アセトアミノフェン)などの鎮痛剤は、レンサ球菌咽頭炎に伴う痛みの軽減に非常に有効である[15]。リドカイン貼付剤もまた有用である[16]。ステロイドも痛みの軽減に効果的ではあるが[7][17]、通常は推奨されていない[3]。成人にはアスピリンを使用することもあるが、小児にはライ症候群のリスクがあるため推奨されない[7]。
抗生物質
米国では安全性、費用および効果の点でペニシリンVがレンサ球菌咽頭炎の治療に使用されている[4]。ヨーロッパではアモキシシリンが好まれている[18]。リウマチ熱のリスクが高いインドでは、筋注ベンザチンペニシリンGが第一選択薬となっている[7]。しかるべき抗生物質を投与すれば症状の持続期間(平均3~5日)を約1日減少させ、接触感染性も低下させる[10]。抗生物質は第一にリウマチ熱や扁桃周囲膿瘍などの稀に起こる合併症を予防する目的で処方されている[19]。抗生物質治療を肯定する意見がある一方で起こりうる副作用を加味して考慮する必要があり[6]、投薬によって有害反応を示す健康な成人に対し抗菌治療を実施しないよう提起することは理にかなっている[19]。しかし、レンサ球菌咽頭炎に対してその有病率から想定されるより高い割合で抗生物質が処方されている[20]。重度のペニシリンアレルギーのある患者にはエリスロマイシンをはじめとするマクロライド系抗生物質やクリンダマイシンが推奨される[4][3]。アレルギーが重度のなければ第一世代セファロスポリンを用いることがある[4]。A群β溶血性レンサ球菌感染から急性糸球体腎炎を惹き起こすことがあり、抗生物質投与によってこの合併症の発生率を減少させることはできない[7]。