Laval Virtual
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Laval Virtual(ラバルバーチャル)は、フランス・マイエンヌ県ラヴァル市で毎年開催される、仮想現実(VR)・拡張現実(AR)・複合現実(MR)など没入型技術に関するヨーロッパ最大級の国際展示会・カンファレンスである[1]。1999年の第1回開催以来、毎年3月から4月にかけて開催されており、2026年で第28回を迎える[2]。
展示会に併設して、優れたVR/AR/XRプロジェクトを表彰するLaval Virtual Awards(ラバルバーチャルアワード)が授与される。また、学術国際会議VRIC(Virtual Reality International Conference、後にVRIC ConVRgenceに改称)や、デジタルアート展Recto VRsoも同時開催される。
Laval Virtualは、VR/AR/MR(XR)技術の展示・カンファレンス・コンペティションを柱とする国際イベントである。会期は通常5日間で、前半の3日間は業界関係者向け、後半の2日間は一般公開となる[3]。
近年の規模は、330以上の出展者が9,000平方メートル以上の展示スペースに集い、200名以上の講演者、18,000人以上の来場者を記録している[3]。展示対象はVR・ARのみならず、3Dインタラクション、ロボット工学、人工知能、モーションキャプチャ、ブレイン・コンピュータ・インタフェース(BCI)、音声認識、バイオメトリクス、ボリュメトリックビデオなど多岐にわたる[3]。
歴史
創設(1999年)
Laval Virtualは、元フランス研究担当大臣でラヴァル市長を務めたフランソワ・ドベール(François d'Aubert)の発意のもと、1999年に創設された[3]。コンセプトの設計には、アンジェ大学教授でフュチュロスコープの共同創設者でもあるベルナール・タラヴェル(Bernard Taravel)、GART事務局長のギ・ル・ブラ(Guy Le Bras)、アール・ゼ・メティエ(Arts et Métiers ParisTech)教授のシモン・リシール(Simon Richir)が携わった[3]。
1999年6月に開催された第1回では、8,000人以上の来場者を集め、広範なメディア報道と日本の大学の積極的な参加が注目された[3]。VRに特化した世界初の展示会として、ラヴァル市はテクノロジーの街としての地位を確立する大きな賭けに成功した。
成長と発展
ラヴァル市は1996年に設立したラヴァル・マイエンヌ・テクノポール(Laval Mayenne Technopole)を核に、VRを重点分野としたイノベーション推進戦略を展開していた[4]。人口約5万人のラヴァル市は、VRクラスター、スタートアップ企業群、研究所、テクノロジー移転センター、高等教育機関を擁する「ヨーロッパのVR首都」と称されるようになった[4]。
2017年には、Laval Virtual協会、研究センターCLARTE、アール・ゼ・メティエ・ラヴァルキャンパスを集約したLaval Virtual Center(ラバルバーチャルセンター)が設立された[1]。
COVID-19とバーチャル開催(2020年)
2020年、新型コロナウイルス感染症の影響により、Laval Virtualは史上初の完全バーチャル開催に移行した。「Laval Virtual World」と名付けられたこのバーチャル展示会は、VirBELAのプラットフォームを利用して2020年4月22日〜24日に実施された[5]。当初1,500人の参加を想定していたが、11,200人が登録し、6,000以上のアバターが会場を行き交った[6]。
国際展開
2017年、Laval Virtualは中国・青島市崂山区政府との協定に基づき、Laval Virtual Asiaを開催した[7]。初回は2017年11月9日〜11日に開催され、90の出展者と4,000人のビジネス来場者を集めた。第2回(2018年)は27か国から123の出展者が参加した。青島市は没入型技術分野に5億ユーロを投じ、この分野の主要拠点になることを目指した。
主催組織
Laval Virtualは、没入型技術(VR/AR/MR)分野のフランスの非営利団体(association)である。本部はラヴァル市のLaval Virtual Centerに置かれている[1]。
協会は「Gather(適切な人材を集め、ポジティブで意義ある影響を生む)」「Inspire(今日のイノベーターを明日のリーダーに育てる)」「Valorize(人類に貢献するイノベーションの価値を高める)」の3つの理念を掲げている[1]。
共同創設者のシモン・リシールは、アール・ゼ・メティエの教授でもあり、LAMPA研究室の「Presence & Innovation」研究チームを率いている[8]。
Laval Virtualは、フランスの没入型技術関連8団体で構成されるCNXR(Conseil National de la XR)の構成メンバーでもある[9]。
Laval Virtual Awards
概要
Laval Virtual Awards(ラバルバーチャルアワード)は、1999年の第1回開催時から毎年授与されているVR/AR/XR分野の国際アワードである[10]。国際的な専門家の審査委員会が、応募プロジェクトの創造性、技術的品質、潜在的インパクトを評価し、各部門の最優秀プロジェクトを選出する。
アワードは大きく一般部門(General Categories)とReVolution コンペティションに分かれる。さらにGrand Prix(大賞)とIVRC賞が特別賞として授与される。
一般部門(General Categories)
一般部門のカテゴリは時代とともに変遷してきた。2026年時点の部門構成は以下の通りである[11]。
| 部門名 | 対象 |
|---|---|
| XR Devices and Interactions Products | ハードウェアソリューション、VR/ARと対話するための革新的システム |
| Developer & Authoring Tools | 没入型体験の設計を容易にするXR開発・制作ツール |
| XR for a Cause | 社会的・環境的・社会的に好影響をもたらす没入型プロジェクト |
| Enterprise & Productivity Solution | パフォーマンス、コラボレーション、ビジネス変革のためのXRアプリケーション |
| Education & Training | 学習・教育・職業訓練を支援する没入型体験 |
| Consumer Experience & Entertainment | ゲーム、インタラクティブエンターテインメントなど、一般消費者向けXR体験 |
過去には「Industry」「Healthcare」「Services」「Sports」「Virtual Worlds」「Marketing or Advertising Campaign」「VR for a Cause」などの部門も設けられていた[12]。
ReVolution コンペティション
ReVolution(レボリューション)は1999年からLaval Virtualと同時に設けられたコンペティションで、VR/AR分野の新興人材を顕彰する[10]。参加は無料で、受賞者はイベント期間中に展示ブースが提供され、業界の専門家からフィードバックを受けることができる。2023年時点のカテゴリは以下の通りである。
- ReVolution #Research - 大学・研究機関・研究系企業が対象。最優秀受賞者にはSIGGRAPHへの渡航が贈呈される。
- ReVolution #Startups - 設立3年以内の企業が対象。ヘルスケア、研修、不動産、観光など分野横断的。
- ReVolution #Experiences - コンテンツクリエイター、開発者、スタジオが対象。
- ReVolution #Students - Demo - 学生プロジェクトが対象。受賞者は日本のIVRCに招待される。
- ReVolution #Students - Limited Time - 30時間のハッカソン形式。10チームがリアルタイムでVRアプリケーションを制作する。
主な受賞作品
| 年 | 部門 | 受賞作品 | 受賞者・組織 | 国 |
|---|---|---|---|---|
| 2013 | Grand Prix / Interface and Materials | AquaTop Display | 電気通信大学 小池英樹研究室 | |
| 2014 | Grand Prix du Jury | Pixie Dust | 落合陽一(筑波大学) | |
| 2018 | Grand Prix du Jury | Voyage au cœur de l'Évolution | フランス国立自然史博物館 / Fondation Orange / Manzalab | |
| 2019 | Grand Prix du Jury | Apollo Moon Operations | Orbital Views | |
| 2020 | VR/AR for a Cause | Inveion | The Parallel | — |
| 2020 | VR/AR for Productivity | Braind 4.0 | FIFTHINGENIUM | |
| 2020 | VR/AR for Learning & Training | AFT-SNCF VR Training | Virtuose Reality Studio | |
| 2021 | Grand Prix | VirtySens | VirtySens | — |
| 2021 | Industry | SenseGlove Nova | SenseGlove | |
| 2021 | Education & Learning | Neoma Virtual Campus | NEOMA Business School | |
| 2021 | ReVolution #Startups | Olfy | Olfy | |
| 2021 | IVRC Award | Rebirth 2.0 | Arts et Métiers | |
| 2022 | Healthcare | Diva | パスツール研究所 / CNRS | |
| 2022 | VR for a Cause | Éternelle Notre-Dame | Emissive | |
| 2022 | Entertainment & Medias | JumpersVR | Delusion | — |
| 2023 | Enterprise & Productivity | Synergiz Harbor | Synergiz | |
| 2023 | Hardware | VIVE XR Elite | HTC Vive | |
| 2023 | XR for a Cause | Meta Table β | 神奈川工科大学 / オリィ研究所 | |
| 2023 | ReVolution #Research Grand Prix | MEcholocation | 岐阜大学 | |
| 2024 | XR Devices & Interaction Products | VIVE Ultimate Tracker | HTC Vive | |
| 2024 | Enterprise & Productivity | Nawo Live | HRV Simulation | |
| 2024 | Developer & Authoring Tools | PopcornFX | Persistant Studios | |
| 2024 | ReVolution #Research | Embrace | 国立清華大学 | |
| 2024 | ReVolution #Experiences | SEN | CinemaLeap Inc. |
日本人・日本関係の受賞
日本はLaval Virtualとの関わりが深く、第1回開催時から日本の大学が積極的に参加してきた。主な日本関連の受賞には以下がある。
- 2013年: 電気通信大学の的場やすし(博士後期課程)らによる「AquaTop Display」がGrand PrixおよびInterface and Materials Awardを同時受賞[13]。
- 2013年〜2017年: 落合陽一がLaval Virtual Awardを4年連続・計5回受賞。2014年には超音波浮揚技術「Pixie Dust」でGrand Prix du Jury(審査員大賞)を受賞した[14]。
- 2023年: 神奈川工科大学とオリィ研究所による「Meta Table β」がXR for a Cause部門を受賞[15]。
- 2023年: 岐阜大学のOGISO Naoki、SAKAI Hiroki、SAKAI Kokiらによる「MEcholocation」がReVolution #Research Grand Prixを受賞[16]。
- 2024年: CinemaLeap Inc.の「SEN」(日本の茶道を再現するインタラクティブ没入体験)がReVolution #Experiences部門を受賞。
IVRCとの連携
日本で毎年開催されるIVRC(Interverse Virtual Reality Challenge、旧称: International collegiate Virtual Reality Contest)とLaval Virtualは、2004年から国際協力協定を結んでいる[17]。
この提携により、相互にアワードが設けられている。
- 日本のIVRCでの「Laval Virtual賞」受賞チームは、フランスのLaval Virtualに招待される。
- Laval VirtualのReVolution #Students部門の受賞チームは、日本のIVRCに招待される。
この交流の橋渡しには、白井暁彦(IVRC実行委員・Laval Virtual評議員)が大きな役割を果たしている[18]。
IVRCの起源は1993年に遡り、岐阜県が1990年代にVR技術による地域振興を構想して設立した「VRテクノセンター」や、IAMAS(現・情報科学芸術大学院大学)に端を発する。Laval Virtualの現メンバーにも、この時期に日本のVR国際会議に参加した人物が含まれている[19]。
VRIC(学術会議)
Recto VRso
Recto VRso(レクトヴェルソ)は、Laval Virtualに併設されるデジタルアート・没入型アートの国際展覧会・フェスティバルである[21]。アーティスト、研究者、学生、表現者が仮想現実・複合現実を素材として制作した作品を展示する。「Art&VR Gallery」では、国際公募で選出された約15作品の公式展示が行われるほか、ラヴァル旧市街の各所でもインスタレーションが展開される。
歴代開催
| 回 | 年 | 会期 | 備考 |
|---|---|---|---|
| 第1回 | 1999年 | 1999年6月 | 来場者8,000人以上、日本の大学が積極参加 |
| 第22回 | 2020年 | 2020年4月22日〜24日 | COVID-19により初の完全バーチャル開催(Laval Virtual World)、6,000アバター |
| 第25回 | 2023年 | 2023年4月12日〜16日 | 25周年記念 |
| 第26回 | 2024年 | 2024年4月10日〜12日 | 来場者5,500人 |
| 第27回 | 2025年 | 2025年4月 | 来場者5,000人、出展者160社 |
| 第28回 | 2026年 | 2026年4月8日〜10日 | 予定 |