イスハーク・イブン・フナイン

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イスハーク・イブン・フナインによる『幾何学原論』のアラビア語翻訳。1270年に制作された写本。チェスター・ビーティ図書館所蔵。

イスハーク・イブン・フナインIsḥāq b. Ḥunayn, ? - 910年頃歿)は、9-10世紀のバグダードで活動したキリスト教徒の医師[1][2]エウクレイデスの『幾何学原論』やガレノスの著作のアラビア語翻訳で知られる。同様に医師であり、高名な翻訳者であったフナイン・イブン・イスハークの息子である[1][2]

イスハーク・イブン・フナインの生涯に関する情報の古典期の情報源としては、ナディームの『目録の書』やキフティーの『学者列伝』がある[1][2]。また、ザヒールッディーン・バイハキーTatimmat Ṣiwān al-Ḥikma, イブン・ジュルジュルṬabaqāt al-Aṭibbā' wa’l-Ḥukamā', イブン・ハッリカーンWafayāt al-A'yān もある[2]サーイド・アンダルスィーイブン・アビー・ウサイビアバルヘブラエウスの著作にも情報がある[2]

生涯

より詳細な名前は、Abū Yaʿqūb Isḥāq b, Ḥunayn b. Isḥāq al‐ʿIbādī と伝わる[1][3]。ニスバの「イバーディー」は「イバード」から来ている[4]。「イバード」とはこの場合、イラク中部の都市ヒーラに住むキリスト教徒のアラブのことである[4]。イスハークはネストリウス派キリスト教徒のアラブの一部族を出自とすると考えられている[1]

イスハーク・イブン・フナインの属する父方の家系は医業をなりわいとし、高名な翻訳者を幾人も輩出した[1]。イスハーク自身はもとより、その父で、イスハークと同様に医師であったフナイン・イブン・イスハークは、同時代で最も重要な翻訳者でもある[1]。兄弟のダーウード・イブン・フナインは医師である[2]。父方いとこのフバイシュ・イブン・ハサンとイーサー・イブン・ヤフヤーはイスハークと共に父フナインの訳業を手伝った[2][4]。イスハークの何人かいる息子のうちの二人、ダーウード・イブン・イスハークは翻訳家になり、フナイン・イブン・イスハーク・イブン・フナインは医師になった[2]

フナイン・イブン・イスハークはギリシア語からアラビア語への翻訳のやり方や翻訳の質の全体的な底上げに貢献し、その知見を息子に伝えた[1]。フナインは自分が翻訳あるいは校訂したガレノスの著作129冊について説明した書簡の中で、自分はこれらを、特に息子が使うために翻訳したと書いている[1]。つまり、おそらくはイスハークが医師になるための教育の一環として、勉強させるためにガレノスを翻訳したということのようである[1]。イスハークは父の指導の下でギリシア科学を学修し、翻訳を練習した[2]。イスハークの(また、父も)第一言語シリア語である[2]。イスハークはアラビア語とシリア語の両方に通じていたが、シリア語で書くことを好んだ[2]。当時の知識層と同様にアラビア語での詩作に没頭し、ナディームやキフティーによると彼のアラビア語は父よりも優れているとのことである[2][3]

イスハークは父と共にバグダードへ出て、バヌー・ムーサー三兄弟と呼ばれる彼ら自身も学者である豪族にやとわれた[4]。給料は月500ディーナールという、当時としてはかなりの高給であった[4]。父は医師あるいは学者として高名になると、アッバース朝カリフ・ムタワッキルの宮廷に侍医として招かれた[4]。その後、イスハークも宮廷に侍医として招かれる[2]。カリフ・ムウタミド(在位842-892年)とカリフ・ムウタディド(在位892-902年)、2代にわたるカリフがイスハークを重用し、ムウタディド宮廷の宰相であったカースィム・イブン・ウバイドゥッラー英語版もイスハークを重用した[2]

イスハークはまた、シーア派神学者のハサン・イブン・ナウバフティーとつながりのある学者サークルとも交流している[2]バイハキーは、この学者サークルとの交流の中でこそ、イスハークがイスラームに改宗したのだと主張している[2]

著作

翻訳を除くと、イスハーク・イブン・フナインじしんが書いた独自の著作は少ない[2]。『簡単な医術について』『医術梗概』という著作があったが散逸した[2]Taʾrīf al‐Aṭibbāʾ(医学の歴史)という著作が有名である[2]。著者はこの著作が6世紀アレクサンドリアのピロポノスが著した同じ題名の著作を参照して書いたと記している[2]Taʾrīf al‐Aṭibbāʾ は、ピロポノスが列挙した医学者ごとに同時代の哲学者の評伝を一人ずつ追加し、さらに歴史的事件に関する簡単な記述を付加したものである[2]

翻訳

後世への影響

出典

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