ウィルヘルム・ヨハンセン
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コペンハーゲンに生まれた。若いときは薬学者をめざし、1879年に彼の薬剤師の試験に合格するまで、デンマークとドイツで働いた。1881年に、彼は化学者ヨハン・ケルダールのもとで、カールスバーグ研究所の化学部門のアシスタントとなった。種子、塊茎および芽の休眠と発芽の代謝の研究を行い、ジエチルエーテル、クロロホルムなどの様々な麻酔用化合物によって休眠が破られることを示した。1892年に、彼は王立獣医農業大学の講師に就任し、その後、植物学と植物生理学の教授となり植物生理学を教えた[1]。「自殖性」のインゲンで自家受粉で遺伝の研究を行い、重い豆と軽い豆のグループを作り、両グループの子に実った豆の重さを調べ、差のないこと示し、純系内では淘汰(選別)は効果がないという「純系説」を提唱した。現在の視点では、豆の重さの違いは環境によるもので、環境の影響による差は次代には伝えられないと考えられているので、当然の結果であるが、当時は連続変異に働く、淘汰の有効性に疑問を深めるような役割を果たした[2]。遺伝学の用語、phenotype とgenotypeを論文、 "Om arvelighed i samfund og i rene linier"の中で初めて用いた。この論文は改定されドイツ語に訳されて、"Elemente der exakten Erblichkeitslehre"として発刊され、遺伝学の基礎的なテキストとなった。
ヨハンセンの純系実験の意義は、インゲンマメの種子の大きさに見られる連続的な差を、そのまま遺伝的差異とはみなさず、自己受粉を重ねた系統の内部で生じる変動と、系統どうしの差とを切り分けた点にある[3][4]。そして、単一個体の子孫から成る純系では、個体選抜を重ねてもその系統の「型」自体は変化せず、観察される差の重要部分は遺伝的構成そのものではなく、外に現れた形質の側に属すると論じた[3][4]。この整理によって、混合集団での選抜と純系内部での選抜とを同一視しない見方が与えられ、純系説は単なる淘汰否定の命題ではなく、遺伝する差異と観察される差異を切り分ける方法論として理解しやすくなる[3][4]。
1909年の『Elemente der exakten Erblichkeitslehre』でヨハンセンは、先述の通り遺伝子型・表現型の語に加え、遺伝子(gene)という語も導入し、観察される形質と潜在的な遺伝的構成とを概念的に切り分けた[5][6]。この区別はその後の遺伝学の基礎語彙となり、植物育種の整理にも強い影響を及ぼしたと評価されている[7][5]。また近年の科学史では、この業績はメンデル再発見後の遺伝研究を、数量的観察と育種実践の両側から組み直した転換点の一つとして位置づけられている[6][7]。1905年にコペンハーゲン大学の植物生理学の教授となり、1917年に副学長になった。アメリカに何度か招かれ、講演を行った。
著書
- Limitations of natural selection on pure lines (1909)
- Arvelighed i historisk og experimentel belysning (1917)
脚注
出典
- ↑ Warming, Eug. & W. Johannsen (1895) Den almindelige Botanik (General Botany): En Lærebog, nærmest til Brug for Studerende og Lærere. 3rd edn, Kjøbenhavn. 4th edn by Warming and Johannsen 1900-01). German edn 1907-09: Lehrbuch der allgemeinen Botanik (from the 4th edn, by E. P. Meinecke). Berlin, Borntraeger. 667 pp.
- ↑ 『生物進化を考える』 木村資生(著)岩波新書
- 1 2 3 Roll-Hansen, Nils (2009). “Sources of Wilhelm Johannsen's genotype theory” (英語). Journal of the History of Biology 42 (3): 457-493. doi:10.1007/s10739-008-9166-8. PMID 20027784. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/20027784/.
- 1 2 3 Herrera, Carlos M. (2024-02). “Plant Phenotypes as Distributions: Johannsen's Beans Revisited” (英語). The American Naturalist 203 (2): 219-229. doi:10.1086/727966. PMID 38306280. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/38306280/.
- 1 2 Gorroochurn, Prakash (2024-12-29). “Round 8: The Johannsen Breakthrough - Pure-Line Theory (1903), Gene and Genotype-Phenotype Distinction (1909)” (英語). The Development of Evolutionary Genetics. Cham: Springer. pp. 477-491. doi:10.1007/978-3-031-69374-8_12. https://link.springer.com/chapter/10.1007/978-3-031-69374-8_12
- 1 2 Roll-Hansen, Nils (2025). “Plant Breeding and the Origins of Genetics” (英語). Cold Spring Harbor Perspectives in Biology 17 (9): a041714. doi:10.1101/cshperspect.a041714. https://cshperspectives.cshlp.org/content/17/9/a041714.short.
- 1 2 Berry, Dominic (2014-06). “The plant breeding industry after pure line theory: Lessons from the National Institute of Agricultural Botany” (英語). Studies in History and Philosophy of Biological and Biomedical Sciences 46: 25-37. doi:10.1016/j.shpsc.2014.02.006. PMID 24650856. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/24650856/.
