エリソミケス
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栄養体
タイプ種である E. anomalus に即して記す。現時点では本属はこの種のみを含んでいる。
まず大まかな特徴として Benny & Benjamin(1975) で属の特徴として示されたものをあげる[1]。よく発達した菌糸体を形成し、胞子嚢柄は基質菌糸から出て立ち上がり、先端に向けて二叉、あるいは三又に分枝を繰り返す。最後の枝の先端には短い柄のある小胞子嚢を頂生、あるいは側生する。小胞子嚢には柱軸があり、複数の胞子を含む。またその壁は崩れない。胞子嚢胞子は球形から円柱形まで、表面は滑らか。接合胞子嚢は球形から亜球形でその壁は着色し、円錐形の突起に覆われる。支持柄はほぼ同型で対向する。
以下、より詳細に示す。
腐生菌で通常の培地で培養が出来、菌糸体はよく発達する[2]。合成ムコール培地上、26℃での培養ではコロニーは10日で直径8.5cmに達し、菌糸は密生し、当初は白いがすぐに明るい灰緑色から暗い灰緑色に変化し、時間が経つと明るい緑灰色になる。
無性生殖
無性生殖は小胞子嚢の胞子嚢胞子により、大きい胞子嚢は形成しない[3]。胞子嚢柄は無色透明から明るい黄色で背丈は1mmほどまで、径は10-15μm前後あり、不規則に仮軸状に分枝し、時間が経つと隔壁を生じる。先端の分枝より下の部分では外壁は滑らかになっている。この柄は不規則に仮軸状分枝をしており、その先に短い枝が出て、その枝は4-5回にわたり二叉、あるいは三叉の分枝をする。これらの分枝は下から上に向かって次第に短いものとなっており、最下のものでは枝の長さは40-250μm、太さは3.5-8.5μm、最後のものでは長さ3.2-18μm、太さ3.2-4.5μmとなり、その先に、あるいは側面に1-7個の小胞子嚢をつける。小胞子嚢は短い柄があり、この柄は長さ2-4.5μm、径約1μmで、先細りの形になっており、表面は滑らか[4]。小胞子嚢は球形から亜球形で径8-13μm、表面は滑らかで無色。柱軸は亜球形からドーム型で滑らか、径2-5μm。小胞子嚢は柱軸と柄の一部を含むか、あるいは含まない形で切り離される。小胞子嚢には12個かそれ以下の胞子嚢胞子が含まれる。胞子嚢胞子は亜球形から卵形、角張った卵形、やや円柱に近い形のものまであり、3.2-9μm×2.5-6.5μmで、まとまると無色から灰色を呈する。また内部は顆粒状で小さな油滴が含まれる。
また厚膜胞子をよく作り、それらは基質内の菌糸や露出した菌糸に形成される。膜は薄く、形は球形から卵形、円筒形などで、単独に、あるいは鎖状に連なって、菌糸の先端に頂生するか、介在的に形成される。その大きさは非常に変異が大きいが、大部分は4-20μm×4-30μm程度である。
有性生殖
有性生殖は接合胞子嚢の形成による[5]。自家和合性であり、単独株でよく接合胞子嚢を形成する。接合胞子嚢は球形から亜球形で、径は表面の突起を含んで40-55μmほど。表面の壁は赤っぽい褐色で透明になっており、凹凸の多い突起に覆われており、この突起は高さ6μmにまで達する。支持柄は透明から淡い黄色になっており、長さ5-20μm、太さ11-17μm。
- 全体の形
- 小胞子嚢柄の先端部・成熟したものとおさないもの
- 厚膜胞子の様子
- 接合胞子嚢の様子
分布と生育環境
類似の群など
二叉分枝を繰り返す小胞子嚢柄の先端に少数の胞子を含む小胞子嚢をつける、という点でよく似たものにエダケカビ属 Thamnidium がある[10]。本種は当初はこの属のものとして記載された。これを別属と見なし、本属を記載したBenny & Benjamin(1975)によると、以下の点での違いが重要だという。エダケカビでは胞子嚢柄はその主軸が分枝することなく、主軸の側面に出る二叉分枝する枝には小胞子嚢をつける一方、主軸の先端には大型の胞子嚢をつける。ただし大型の胞子嚢はつけない場合もあるが、本属のもののように主軸が仮軸状に分枝して、それぞれの先端に小胞子嚢の群をつける、というものとは多分に性質が違う。またエダケカビの主軸が剛直であるのに対して、本属のそれはより軟弱なものである。
小胞子嚢を二叉分枝する小胞子嚢枝につける、というものには、他にサムノスチルム属 Thamnostylum の1つ、T. repens があるが、この種では主軸先端に大きい胞子嚢をつけるほか、匍匐菌糸を伸ばすなど多くの違いがある[11]。
他方、全然形態的に異なるものでありながら似て見えるものにトリモチカビ目のエダカビ Piptocephalis がある[12]。エダカビは細長く普通は分枝しない主軸の先端が繰り返し二叉、あるいは三叉分枝し、その枝の先端に普通は小さな頂嚢の表面に細長い分節胞子嚢を多数並べ、その形は針山のようなものである。つまり、二叉分枝以外には共通点がないのだが、この属のものの一定数では多数の分節胞子嚢が1つの液滴に包まれてしまう(wet spore)。すると細かく分かれた枝先に丸い水滴がついているという姿になり、さらに分節胞子嚢が成熟してばらばらになるとまるで丸い胞子の塊が先端についているような姿になる。また主軸の形は糞上に多数のカビが伸びた姿では見分けにくく、二叉分枝の部分だけが目立つことになる。こうなると本属のものとこの属のものはひどく似た姿となる。
なお、E. anomalus に見られるように基質内菌糸、基質上菌糸の両方に多数の厚膜胞子を作ることもケカビ目では他に見られない特徴であるという[7]。