オタリア

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オタリア(学名:Otaria flavescens)は、アシカ科に分類される海棲哺乳類の一種。オタリア属は本種のみから成る単型。ミナミアシカ、南米アシカ、パタゴニアアシカとも呼ばれる。南アメリカ大陸南西部の沿岸に生息する。性的二形が顕著で、雄は大きな頭部と目立つたてがみを持つ。魚類頭足類を捕食し、砂、砂利、岩、礫質の海岸に上陸する。雄は繁殖の際に縄張りと一頭の雌を守るが、その他の場合もある。序列の低い雄は、群れを混乱させて繁殖を成功させようとする。個体数は安定しており、成熟個体の数は222,500頭と推定される。

概要 オタリア, 保全状況評価 ...
オタリア
保全状況評価[1]
LEAST CONCERN
(IUCN Red List Ver.3.1 (2001))
Status iucn3.1 LC.svg
Status iucn3.1 LC.svg
分類
ドメイン : 真核生物 Eukaryota
: 動物界 Animalia
: 脊索動物門 Chordata
亜門 : 脊椎動物亜門 Vertebrata
: 哺乳綱 Mammalia
: 食肉目 Carnivora
階級なし : 鰭脚類 Pinnipedia
: アシカ科 Otariidae
亜科 : アシカ亜科 Otariinae
: オタリア属 Otaria Péron, 1816
: オタリア O. flavescens
学名
Otaria flavescens
(Shaw, 1800)[2]
シノニム
  • Otaria byronia (de Blainville, 1820)
英名
South American Sea Lion
southern sea lion
Patagonian sea lion
分布域
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分類と名称

1800年にジョージ・ショーによって Otaria flavescens が、1820年にアンリ・ブランヴィルによって Otaria byronia記載された。この2つの学名は両方が使用されていたが、O. flavescens の使用が優先されるようになった[3][4]。英名では「southern sea lion」と呼ばれることもあるが、南半球にはオーストラリアアシカニュージーランドアシカなど他のアシカも分布するため、使用は推奨されない。地元では「león marino (海のライオン)」や「lobo marino (海のオオカミ)」と呼ばれる[3]

分布と生息地

太平洋側では北はペルーから南はホーン岬まで、大西洋側では北はブラジル南部まで、南アメリカ大陸沿岸および沖合の島々に分布する[3][5]ウルグアイイスラ・デ・ロボス英語版アルゼンチンバルデス半島ビーグル水道フォークランド諸島などが有名な繁殖地となっている。エクアドル南部で見られることもあるが、繁殖はしていない[5]。本種の移動については不明な点が多かったが、近年のバイオロギングによって、繁殖地の海での移動が明らかになってきた[6][7][8][9]フォークランド諸島での冬季の移動についての証拠は無い[10]

砂、砂利、岩、礫質の海岸で繁殖し、タイドプールのある平たい岩場でも見られる。特に岩礁海岸では、コロニーは小さく点在する傾向にある。暖かく晴れた日には、コロニー内の個体は密集しない[5]

形態

アシカの中でも性的二形が最も顕著である。雄は体長3m、体重350kgに達し、雌は雄よりも小さく、体長2m、体重150kg程度である。生まれたての幼獣は体長0.86m、体重12-15kgである。幼獣の頃から雄の方が大きい[3]。雄成獣は頭部が大きく、鼻は短く上向きで、たてがみは長く肩まで届く[5]。毛色は主に茶色だが、雄成獣では暗く、雌では黄色がかる。生まれたての幼獣は黒色だが、最初の換毛を経て赤褐色になる[3]。雄のたてがみの色は若干明るいオレンジである。雌の頭部や首の辺りの体表は若干明るいオレンジである。

生態と行動

様々な鳴き声を発し、性別や年齢によって変化する。雄成獣は攻撃的な行動の際に高い鳴き声を発し、縄張りを作る際には吠え声や唸り声、雌との交流時には唸り声を、敵対的な行動の後には吐息を発する。母親は子との交流時に「mother primary call」を発し、他の雌との争いの際は唸り声を発する。幼獣は「pup primary calls」を発する。これらの鳴き声は個体識別に役立つ可能性がある[11]

摂餌と食性

アルゼンチンヘイクアンチョビなど多数の魚類を捕食し、アルゼンチンマツイカ英語版パタゴニアヤリイカ英語版タコなどの頭足類も獲物となる。地域によっては甲殻類やその他の無脊椎動物も食べる[5][12]ペンギンペリカンミナミアメリカオットセイの雌や幼獣を捕食した例もある[12][13][14]。場所によっては海底で動きの遅い獲物を探したり、複数匹で獲物の群れを捕食することもある[5]。陸上でペンギンを追いかけた観察例もある[15]。捕らえた獲物を激しく揺さぶり、引き裂く[5]ハラジロカマイルカの獲物を奪う労働寄生を行った記録もある[16]。天敵はサメシャチで、バルデス半島ではシャチが浜辺に乗り上げて本種を捕食する[3]

繁殖と成長

コロニー

12月から2月にかけて繁殖し、ピークは1月である。最初に雄が到着し、縄張りを作って防衛する。雌の発情期は幼獣の誕生から6日後に始まり、その後すぐに交尾が始まる。バルデス半島においては、雄は最初に縄張りを守り、雌が到着すると雌を守るようになる。雄は雌を縄張りに集め、逃げた雌も追いかける。その後は他の雄から守る。イスラ・デ・ロボスでは、波打ち際近くの雄はバルデス半島と同様に雌を守り、縄張りはあまり明確ではないが、より内陸に近い場所では、タイドプールの近くの縄張りを厳しく守る。雄同士の争いの回数は、雌の個体数と関連している。雄は早く繁殖場に到着するほど、繁殖できる期間が長くなり、交尾の回数も増える。雄は3頭ほどの雌とハーレムを形成するが、最大で18頭の雌と形成した例もある[17][18]

雌と幼獣

縄張りとハーレムを得られなかった雄は、主に若い個体が多い。これらの雄たちは集団で襲撃を行い、雌を得ようとする。これらの襲撃は岩場よりも砂浜で起こることが多い。襲撃はハーレムを混乱させ、母親と幼獣が引き離されることもある。縄張りの雄は襲撃者と戦い、全ての雌を縄張りに留めようとする。襲撃者は雌を得られないことが多いが、雌を得る個体や、雌とともに縄張り内に留まる個体もいる。侵入した雄が幼獣を誘拐することがあり、これは雌を制御する目的があると考えられる。若い雄は幼獣の雌を誘拐し、自らの縄張りに留めることもある。これは成獣の雄が雌に対し行う行動と似ている。雄は誘拐した幼獣に乗ることもあるが、交尾は起こらない。繁殖はできないものの、雌を手に入れる経験を積むことが出来る。幼獣は誘拐の際に怪我を負ったり死亡することもある[19][20]

主にハーレムを作って繁殖するが、ペルーのある個体群ではレック繁殖英語版のような形式が見られる。この個体群では雌に比べて雄が多く、雄は集団で求愛を行い、雌は自由に移動する。ここは気候が温暖であり、雌は水場へ移動しようとするため、従来の繁殖様式を維持することが難しい。先述のような集団での襲撃はここでは起こらない[21]。母親は出産後1週間ごろは幼獣と共に過ごす。その後は3日間餌を探した後、戻って授乳する習慣を繰り返す[5][17]。母親は自分の子に近づく他の雌や、自分の乳を飲もうとする他人の子に対し攻撃的になる[22]。幼獣は生後4週間ほどで水に入り、生後1年ごろに離乳する。この頃母親は再び出産する。幼獣は徐々に波打ち際に留まる時間が増え、遊泳能力が成長する[5]

人間との関係

古代ペルーのモチェ文化では海と海洋動物が崇拝されており、本種をモチーフとした芸術品が多く存在する[23]。本種の石像がマル・デル・プラタのシンボルとなっている[24]

数千年間先住民の猟の対象だったが、16世紀以降はヨーロッパ人からも狙われるようになった[25]。これにより個体数は減少したが[14]、狩猟の減少によって個体数は回復し、絶滅は危惧されていない。分布域の多くで保護されており、繁殖地や上陸地は保護区となっている。しかし多くの地域では、効果的な規制が行われているとは言えない[1]

個体数は安定しており、成熟個体数は222,500頭と推定される[1]。2021年の時点で約45万頭が確認されている。フォークランド諸島周辺ではトロール漁での混獲や餌の減少により個体数回復が遅れている[14]。またアルゼンチンパタゴニアでは個体数が減少しているが、チリウルグアイでは増加している[1]。ペルーでは、1997-1998年にエルニーニョによって多くの個体が死亡した[1][26]。魚を盗み漁網を傷つけるため、現在も駆除が続いている[1]

日本では多くの水族館で飼育されており、繁殖にも成功している[27][28]

出典

関連項目

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