オチキス QF 6ポンド艦砲
From Wikipedia, the free encyclopedia
オチキス QF 6ポンド艦砲(英: QF 6-pounder Hotchkiss)は、19世紀末にフランスのオチキス社が開発した軽量の速射砲である。
口径57 mmの6ポンド(約2.7 kg)砲弾を使用し、主に魚雷艇対策として海軍で採用された。
イギリスではエルズウィック・オードナンス社がライセンス生産した。
第一次世界大戦では陸軍の戦車兵装としても転用され、イギリス戦車の初期主兵装として使用された。
派生型として、短砲身版(オチキス QF 6ポンド戦車砲)がある。
オチキス QF 6ポンド艦砲は、1884年にフランスのオチキス社(Hotchkiss et Cie)により設計された。魚雷艇の脅威に対処するための軽量速射砲として開発され、初期型は駐退復座機機構を持たなかった。英国では1885年にエルズウィック・オードナンス社(アームストロング社の子会社)がMk.Iとしてライセンス生産を開始。1890年には駐退復座機機構を追加したMk.IIが登場した。以降の物は全て駐退復座機機構を備える。
第一次世界大戦では、戦時生産圧力から長砲身版の単肉構造の戦時急造簡易版が登場し、鍛造・肉厚で耐久性を確保。
第一次世界大戦中、イギリス陸軍は戦車開発時に海軍在庫のこの砲(長砲身版の単肉・肉厚の戦時急造簡易版)を転用。マーク I 戦車(1916年導入)の雄型に主兵装として搭載されたが、長砲身(40口径)が泥濘地で障害物に接触しやすい問題が発生した。
これを解決するため、1917年に短砲身(23口径)版が開発され、マーク IV 戦車以降で標準化された。この初の戦車砲専用として開発された短砲身版にも、単肉構造のMk.I(長砲身版の単肉・肉厚の戦時急造簡易版の砲身の短縮版)と、複層構造のMk.II(長砲身版のMk.I/IIの砲身の短縮版)があるので、長砲身版のMk.I/IIと混同しないように、注意が必要である。
第一次世界大戦では、長砲身版が、海軍小型艦艇や沿岸防衛で再利用されたほか、第二次世界大戦では、短砲身版が、装甲列車やピルボックス(固定陣地)にも搭載された。
仕様
基本仕様は長砲身版(40口径、8 cwt Mk.I/II)を基準とする。
| 項目 | 長砲身版(Mk.I/II) |
|---|---|
| 口径 | 57 mm |
| 砲身長 | 40口径(2.28 m) |
| 重量 | 372–385 kg(砲身+駐退機+閉鎖機構) |
| 装薬 | 57x307R(固定式、AP/HE弾) |
| 初速 | 538–554 m/s |
| 発射速度 | 20–25発/分 |
| 有効射程 | 海上: 約7,955 m 対空: 約3,050 m |
| 仰角/俯角 | -15° 〜 +90°(マウントによる) |
| 閉鎖機構 | 垂直滑動ブロック式 |
| 反動装置 | Mk.I: なし Mk.II: 油圧シリンダー2本 + 復座スプリング |
| マウント | ピボットマウント(海軍用) |
砲身構造
1885年の長砲身多管Mk.I(オチキス QF 6ポンド艦砲 Mk.I)の「鍛造組み立て」とは、砲身を複数の鋼部品(主に内管A管、ジャケットB管、ホープC管の3層)を個別に鍛造(forging)加工した後、熱収縮法で組み立てる製造手法を指す。
仕組み
- 鍛造加工の部分: 各層(tube/jacket/hoops)を高温の鋼材(oil-tempered steel)をハンマーやプレスで叩き成形・強化。19世紀末の技術で、気泡を除去し強度を高めるために必須であった。Mk.Iの場合、内管はガス圧に耐えるよう肉厚に鍛造され、外層は軽量化優先で薄めに。
- 組み立ての部分: 鍛造済みの部品を熱収縮(外層を加熱膨張させて内管に嵌め、冷却収縮)で固定。自緊効果を生み、内管を圧縮状態に保つ。これで全体を一体のように機能させ、発射時の高圧(約200-300 MPa)を分散。
- 全体の意義: 単肉(一体鍛造)より耐久性が高く、重量を抑えつつ(約372-385 kg)速射性を確保。
この手法はMk.II(1890年)でも継承され、後の戦車版(オチキス QF 6ポンド戦車砲 Mk.II)にも用いられた。
熱収縮自緊法
熱収縮自緊法(shrink fit self-tightening)とは、複層構造から成る砲身の組み立ての最後の過程で用いられる手法で、砲身は内管(内部でガス圧を受ける部分)と外管(ジャケット)を別々に鍛造し、外管を加熱して膨張させた後、内管に嵌めて冷却・収縮させることで、組み立てられる。外管の収縮力が内管を圧縮固定し、残留圧縮応力を導入。これにより、発射時の引張応力を相殺し、耐圧性を高めた。