キンギョヘルペスウイルス
From Wikipedia, the free encyclopedia
| キンギョヘルペスウイルス | |||||||||||||||
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 分類 | |||||||||||||||
| |||||||||||||||
| 学名 | |||||||||||||||
| Cyprinid herpesvirus 2 | |||||||||||||||
| 英名 | |||||||||||||||
| goldfish haematopoietic necrosis herpes virus |
キンギョヘルペスウイルス(英: goldfish haematopoietic necrosis herpes virus: Cyprinid herpes virus-2 (CyHV-2))は、キンギョ(品種を問わず)に特有のキンギョヘルペスウイルス病、キンギョヘルペスウイルス性造血器壊死症の原因となる二本鎖DNAウイルス。感染個体の未治療の場合の致死率は90%と言われている。
日本では1999年に埼玉県で確認され、キンギョの生体流通施設(セリ、市場)等での飼育水の同居感染により日本全国に広がり、2017年現在も流行が続いており、日本国内でパンデミック(大規模感染)の状態である。
ウイルス分離当初、ウイルスによって引き起こされる病気の形態や増殖形式から「ヘルペスウイルス」として分類されてきたが、哺乳類におけるヘルペスウイルスと比べるとゲノムが非常に大きく、内容も異なっていることから異論があった。しかし、現在では研究の進展によって「ヘルペスウイルス」として分類されることで落ち着いている。
コイにおいても本種に似たコイヘルペスウイルスがあるが、正確な学名は本種と合わせていずれも決定されていないため、キンギョヘルペスウイルスはCyprinid herpes virus-2 (コイ科ヘルペスウイルス2、CyHV-2)、コイヘルペスウイルスはCyprinid herpes virus-3 (CyHV-3)として暫定的に分類されており、キンギョヘルペスウイルス(キンギョのみ感染)、コイヘルペスウイルス(コイのみ感染)とも、宿主は名前の通り固有で他の類縁魚類は宿主にならないと考えられていた。
1995年に台湾、1999年に日本、2006年にアメリカ合衆国、2016年にスイス、フランス、インドにてキンギョにキンギョヘルペスウイルスとそれに伴う造血器壊死症の発生が確認されているか強く推定されている。また2016年に中国の長江流域に生息するギベリオブナ(Carassius gibellio)にもキンギョヘルペスウイルスが感染することが確認された。
キンギョヘルペスウイルス病、ヘルペスウイルス性造血器壊死症
キンギョヘルペスウイルスが原因となる。発症すると斃死率が高く、非耐性キンギョは発症率自体が高い。発症したキンギョは
- 鰓が貧血によりピンクまたは白色になる
- 正常な姿勢のまま衰弱して、造血器(腎臓)の腐敗により横転転覆し斃死する(転覆横転しないこともある)
- 一般的な名称では「転覆病」と呼ばれ腹を膨らませて背腹反転して水面に浮かんで斃死に至る
などの外的特徴が見られる。感染力は強く100匹以上飼育している水槽に1匹の感染魚を入れただけで全個体感染し1匹の感染魚(キャリア)以外全滅したケースがあるほか、感染魚の飼育水の移入、飼育水の飛沫での感染も見られ、魚病を研究している大学施設のビニルカーテン隔離水槽を隔てて隣の水槽に(専門的な技術を持って感染を防除しようとしていたにもかかわらず、個体や飼育水の流入、ネットの使いまわし等も一切無しに)感染が広がった例がある。
なおキンギョヘルペスウイルスは塩素に対する耐性が弱く(70%エタノールに対する耐性はある程度ある)、さらし粉と次亜塩素酸ナトリウムを混合し(塩素玉と呼ばれる)水に投入し器具等を1分間消毒する殺菌方法でほぼ死滅するため、訓練を経たものが非常に慎重に取り扱えば防疫も可能であるが、上記の隔離カーテンを超えた感染等、訓練を経た者でもほんのわずかのミスが原因で感染が広がることもあるため、厳格な隔離と消毒を行っても必ず防疫が可能というわけではない。
キンギョヘルペスウイルスは35℃、4日間の昇温処理により病状の進行が止まることが知られており、早期に前述の治療方法で治療すれば発症を抑えることが出来るが、そのような抑止治療を行った個体はウイルスを体内に保持するキャリアになることが知られている。(専門家はわざとキンギョヘルペスウイルスに感染した個体や死体を水槽に入れて昇温処理を行うことを「強毒生ワクチン」と呼んでいるが、わざとウイルスに感染させてキャリアにして造血器壊死症の発症を間逃れるだけの行為である。)
2006年に簡便なDNA鑑定(PCR-電気泳動法)によりキンギョヘルペスウイルスの感染の判定ができるようになり、2017年現在、同法を用いたウイルス感染判定を行う民間サービスがあるほか、キンギョ生産者については最寄の各県の水産試験場/水産研究所/水産総合センターで検査してくれる場合もある。
感染拡大のルート
このウイルスが世界のどこで発生し、どのようなルートで感染が拡大し日本に到来したのか、2017年現在、未だに確定されていない。
日本では1999年に埼玉県で発生流行し、埼玉水産研究所により2004年に昇温処理法が確立されたほか、感染防止のために各県の水産試験場等が努力しているが、キンギョの流通形態(生体流通施設(セリ、市場)での品評と値付け)においてウイルス感染魚と非感染魚が同じ飼育水で一時的に同居することから、セリ、市場等で感染が広がり、日本全国の飼育業者/個人飼育者にウイルス保菌魚が広がっていくものと推定されている。
例えば、2002年に東京水産大学(当時)の研究室で埼玉県内のあるキンギョ飼育業者に、キンギョヘルペスウイルスに一切感染していない養殖キンギョ(SPF)を作成するように指導してキンギョヘルペスウイルスSPFキンギョを作出したが、流通施設で感染するらしくセリで買い取った業者からキンギョが全部死んでしまうと度重なるクレームが来てキンギョヘルペスウイルスSPF作成と流通を断念したケースなどがある。
このため市販の流通キンギョのうちセリを介する個体については、ほぼ昇温処理でウイルス抑止処理をした「強毒生ワクチン」(キャリア)個体、またはその個体との同居個体であり、市販流通キンギョはほぼキンギョヘルペスウイルスのキャリア(感染してウイルスを排出するが目に見えては健康な個体)と考えた方が良い。