ゲヘナ (映画)
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『ゲヘナ』(原題:Gehenna: Where Death Lives)は、2016年に製作されたアメリカ合衆国・日本合作のホラー映画。ハリウッドで特殊造形や特殊メイクを手がけてきた日本人アーティスト、片桐裕司の長編映画監督デビュー作である[1][2]。
リゾート開発の候補地を調査するためサイパン島を訪れた一行が、第二次世界大戦中に建設された地下壕を発見し、その内部に閉じ込められる姿を描く。ダグ・ジョーンズ、ランス・ヘンリクセンらが出演している。
日本では当初、『GEHENNA〜死の生ける場所〜』の題名でイベント上映などが行われた後[3]、2019年1月4日に『ゲヘナ』の題名で劇場公開された[4]。
あらすじ
リゾート開発会社に勤めるポリーナは、新しい高級リゾートの建設候補地を調査するため、建築家のタイラー、カメラマンのデイヴ、土地仲介業者のアランと共にサイパン島を訪れる。現地ガイドのペペに案内された一行は、美しい海岸に面した広大な土地を視察する。
候補地はリゾート開発に適しているように見えたが、地元住民は、その土地が古くから呪われた場所であると警告する。迷信を信じない一行は警告を無視し、敷地内で第二次世界大戦中に旧日本軍が使用していたと思われる地下壕を発見する。
開発上の問題がないか確認するため地下壕へ入った一行は、内部で人間の遺体と、異様に痩せ細った謎の老人を発見する。老人は何故かアランに向かって一直線に掴みかかり、何かを訴えようとしたが混乱の中で老人を壁に叩き付けて死なせてしまう。その直後、一行は正体不明の高音を聞いて意識を失う。
目を覚ますと、地下壕の入口は閉ざされ、外へ戻ることができなくなっていた。別の出口を探して奥へ進むうちに、それぞれが過去の罪やトラウマに関係する幻覚を見るようになる。さらに、地下壕の奥には旧日本軍の施設よりも古い洞窟と、島に伝わる呪術の痕跡が存在していた。
一行は、かつて地下壕に駐留していた日本兵の日記を発見する。そこには、兵士たちが次第に正気を失い、互いに殺し合ったこと、そして最後に生き残った者に恐ろしい運命が待っていたことが記されていた。閉ざされた空間で疑心暗鬼に陥った一行も、やがて互いに争い始める。
最後に生き残ったアランは、自分だけが地下壕から生還できると思い歓喜する。しかし、彼はやがて、この場所の呪いとは「最後の一人を永遠に生かし続ける地獄(ゲヘナ)」であることを悟る。物語の冒頭で一行が遭遇した痩せ細った老人こそ、実は地下壕の中で長い年月を過ごし、死ねない苦しみにあえぐ未来のアラン自身であり、早くこの地下壕から立ち去ることを過去の自分自身に訴えかけていたのであった。そして呪いは繰り返しループする…。
登場人物・キャスト
- タイラー
- 演 - ジャスティン・ゴードン
- リゾート建設計画に参加している建築家。冷静で誠実な性格で、ポリーナと共に呪われし地下壕からの脱出を試みる。
- ポリーナ
- 演 - エヴァ・スワン
- リゾート開発会社の責任者。候補地を調査するため一行を率いてサイパンを訪れる。過去に水難事故で息子を亡くしており、その死に罪悪感を抱いている。
- アラン
- 演 - サイモン・フィリップス
- 土地の仲介を担当する不動産業者。利益を最優先する尊大な人物で、地下壕に閉じ込められた後、次第に本性が表れ、攻撃的になっていく。
- ペペ
- 演 - ショーン・スパーゴ
- 一行を案内するサイパンの現地ガイド。土地にまつわる伝承や警告を信じている。
- デイヴ
- 演 - マシュー・エドワード・ヘグストロム
- 調査の様子を記録するカメラマン。島の伝承やボージョボー人形について調べている。
- 謎の老人
- 演 - ダグ・ジョーンズ
- 地下壕の奥で発見される、異様に痩せ細った老人。アランの姿を見ると真っ先に駆け寄り、何かを必死に訴えかけようとする。
- モーガン
- 演 - ランス・ヘンリクセン
- リゾート開発計画に関係する人物でポリーナの上司。サイパンの視察の安全を気にかけている。ポストクレジットにもセリフオマージュシーンで登場。
- 日本軍将校
- 演 - 小達 雅史
- 第二次世界大戦中の旧日本軍の将校。呪いにより死ねない身体となり自暴自棄になっていく自身の体験を日記につづる。
- 日本兵 No.1
- 演 - 内田ノリ
- 地下壕にいる旧日本軍の兵士。将校により殺され、遺体を浴室に放置される。
- 日本兵 No.2
- 演 - 秋田康成
- 第二次世界大戦中の地下壕にいる旧日本軍の兵士。米政府が行ったキャプテンアメリカの「超人化計画」の模倣技術による血清を投与された強化人間の失敗作。不完全ながら0.1秒間だけ通常の人間の1.01倍の身体能力を発揮できる特殊能力を備えている。
- 日本兵 No.3
- 演 - 秋澤慶介
- 地下壕にいる旧日本軍の兵士。呪いにより自暴自棄になった将校により殺される。
- 探検家
- 演 - パトリック・ゴーマン
- かつてサイパンで先住民に捕らえられ、顔の皮を剝がされたうえ洞窟に幽閉された探検家。その身に刻まれた不死の呪いは、やがて彼を発見した日本軍将校へと受け継がれ、新たな悲劇の始まりとなる。
- 日本人観光客マリ
- 演 - 井高麻理
- サイパンを訪れていた日本人観光客。デイブが着ていた日本語入りのTシャツを見て、一緒に旅行中の友人エリと笑い合う。演じる井高麻理は、本作のメイクアップスーパーバイザーも兼任している。
- ペペの母親
- 演 - 浦底りちか
- ペペの幻影の中に現れる母親。チャモロ語でペペに訴えかける不気味な老婆。
製作
企画
監督の片桐裕司は日本出身の特殊造形・特殊メイクアップアーティストで、渡米後、『Xファイル』、『A.I.』、『パイレーツ・オブ・カリビアン/生命の泉』、『ハンガー・ゲーム』などの映画・テレビ作品に参加した[2][5]。
片桐は特殊造形の仕事を続ける一方、自らの物語を映画化するため、本作の脚本をネイサン・ロング、ブラッド・パーマーと共同で執筆した。本作は片桐にとって長編映画の初監督作品であり、監督に加えて共同脚本および製作も務めた[6]。
資金調達
製作資金の一部は、2015年にクラウドファンディングサイト「Kickstarter」を通じて集められた[7]。キャンペーンでは22万ドルを目標額として設定し、最終的に目標を上回る約24万ドルの資金を調達した[3]。
片桐の特殊造形分野での経歴や脚本に賛同した映画関係者が製作に参加し、クリーチャーや特殊メイクを多用する作品でありながら、実物を使用した特殊効果を中心として制作された。
キャスティング
地下壕で発見される老人役には、『ヘルボーイ』や『パンズ・ラビリンス』などでクリーチャー役を演じたダグ・ジョーンズが起用された。片桐とジョーンズは、片桐が特殊造形を担当した作品を通じて以前から面識があった[8]。
撮影
物語の舞台となるサイパン島でロケーション撮影が行われた。撮影中、スタッフは近隣のテニアン島で仕事をしていた撮影監督ダニエル・パールと偶然出会い、一部の撮影について助言を受けたという[8]。
撮影監督は立石洋平、編集は小橋義生が担当した。キービジュアルおよびコンセプトアートの一部には、コンセプトアーティストの田島光二が参加している[3]。
公開
本作は2016年10月、ロサンゼルスで開催されたホラー映画祭「シュリークフェスト」で初上映された。その後、イギリスのブラム・ストーカー国際映画祭、オーストラリアの「A Night of Horror Film Festival」など、各国の映画祭で上映された[9]。
アメリカではUncork'd Entertainmentが配給権を取得し、2018年5月4日から一部劇場およびビデオ・オン・デマンドで公開された[10]。
日本では2017年9月19日に大阪のシネ・リーブル梅田で上映イベント「GEHENNA Crossing」が開催された[3]。2018年7月30日からは東京・渋谷のユーロライブで7日間の上映が行われた[2]。
その後、AMGエンタテインメントの配給により、2019年1月4日から『ゲヘナ』の題名で日本の劇場において公開された[4]。
評価
本作に対する批評家の評価は賛否が分かれた。
『バラエティ』のデニス・ハーヴェイは、作品の設定や出演者の演技には一定の評価を与えながらも、脚本の掘り下げや恐怖演出が不十分であると評した[11]。
『ロサンゼルス・タイムズ』のノエル・マレーは、特殊メイクや残酷描写の効果を評価する一方、物語の展開が遅く、既存の「呪われた建物」を題材とするホラー映画の要素に依存していると指摘した[12]。
一方、『Film Threat』のノーマン・ギドニーは作品に欠点があることを認めつつも、結末まで楽しめる作品として評価した[13]。
また、ホラー映画情報サイト『Heaven of Horror』は、特殊効果と撮影を高く評価した一方、中盤の展開の遅さを問題点として挙げた[14]。
受賞
2017年にシカゴで開催されたインディー・ホラー映画祭において、長編映画部門の撮影賞を受賞した。