コノフィツム属

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コノフィツム属[1][2][3](コノフィツムぞく、学名:Conophytum)は、ハマミズナ科に属する多肉植物の1である[4][5]南アフリカからナミビアにかけてのアフリカ大陸に多くの種が自生する[4][5]。過酷な環境に耐えるため、小型化し、高度に多肉化している[6]コノフィトゥム属[7][8](コノフィタム属[8])と表記されることもある。

概要 コノフィツム属, 分類(APG IV 2016) ...
コノフィツム属
Conophytum bilobum subsp. altum
淡雪 Conophytum bilobum subsp. altum
分類APG IV 2016)
: 植物界 Plantae
: 維管束植物門 Tracheophyta
階級なし : 被子植物 angiosperms
階級なし : 真正双子葉類 eudicots
階級なし : 中核真正双子葉類 core eudicots
階級なし : キク上類 superasterids
: ナデシコ目 Caryophyllales
: ハマミズナ科 Aizoaceae
亜科 : ルスキア亜科 Ruschioideae
: ルスキア連 Ruschieae
: コノフィツム属 Conophytum
学名
Conophytum N.E.Br. (1922)
タイプ種
Conophytum minutum (Haw.) N.E. Br.
シノニム
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記載

本属の植物ははじめ、メセンブリアンテムム属 Mesembryanthemum に含められていた[9]1821年エイドリアン・ハーディ・ハワースはメセンブリアンテムム属中の1 Mesembryanthemum sect. Minima Haw. (1821) に対し「この節が属として認められる場合、Conophyton という名が適切であろう」と記述した[9]。しかし、ハワース自身はこれを採用せず、また属として認めなかったため、これは正式に発表された属名とはみなされない[9]

本属は1922年、ニコラス・エドワード・ブラウンによって定期刊行物 The Gardeners' Chronicle & Agricultural Gazette ser. 3. 71 中で記載された[9][4][10]。タイプ種は、1951年にエドウィン・パーシー・フィリップス英語版によって Conophytum minutum (Haw.) N.E.Br. (1922)レクトタイプ指定された[10]

学名 Conophytum は、古代ギリシア語κῶνος (konos)「円錐球果」と φυτόνphuton)「植物」の合成語である[11]。これは本属の多くの種で対生葉が癒合し、円錐形(逆円錐形[1])の植物体をなすことによる[11]

形態

植物体は高度に多肉化し[12]、茎と葉が癒合して[13]、普通1対の多肉葉を残すのみとなる[12]。概して小型である[14]。特に多肉植物の中で最小の種を含むといわれ[14]、コノフィツム属最小のコノフィツム・プビカリックス Conophytum pubicalyx は幅 3 mm である[15]。一方高さ 80 mm に達するものも知られる[14]

染色体数コノフィツム・カルクルス Conophytum calculusコノフィツム・マウガニー Conophytum maughanii で分かっており、2n = 18[16]

対生する2枚の癒合[12]、1つの円錐形(球状[5])となる[11]。葉と葉の間には細い隙間を残すのみとなる[12]。この細隙には茎頂を含み、新たな対生葉や花はこれを押し拡げて出現する[17]。新たな葉や花の出現に伴い、古い多肉葉は委縮し、枯死する[17]

足袋型[18]コノフィツム・ビローブム C. bilobum
小型足袋型[19]コノフィツム・タイロリアヌム・エルニアヌム C. taylorianum subsp. ernianum
鞍型のコノフィツム・フィキフォルメ C. ficiforme
玉型(球形)[20]コノフィツム・カルクルス C. calculus

葉の形態は種によって多様で、伝統的に丸型(マル型)、足袋型(タビ型)、鞍型(クラ型)などに大別されて形容される[14][5][13]。このうち、丸型のものはコノフィツム亜属 subg. Conophytum、足袋型のものはデレンベルギア亜属 subg. Derenbergia とされた[2]。この形態を細分化し、12の基本形に類別される[14]。すなわち、大型足袋型、中型足袋型、小型足袋型、肉厚足袋型、鞍型、凹丸型、独楽型(コマ型)、平丸型、丸型、長丸型、卵型、ハート型である[14]

コノフィツム・ピランシー C. pillansii として知られる有窓型のコノフィツム・スブフェネストラツム C. subfenestratum
毛に覆われたコノフィツム・ステファニー C. stephanii

また、葉の上面一体は半透明となり、同化組織が発達しない「」を形成するものも知られる[17][21][2]。この有窓型のものはフェネストラツム亜属 subg. Fenestratum とされた[2]コノフィツム・リトプソイデス C. lithopsoides などに顕著である[22][23]。また、かつてオフタルモフィルム属とされた群(#下位分類参照)も、大きな窓を有する葉形態を持つ[2][24][25]。乾燥地に生育するため、季節によっては窓以外の部分は土砂に埋没し、強光を緩和する役割を有するなどの節がある[17]

コノフィツム・デプレッスム C. depressumコノフィツム・ステファニー C. stephanii などのように、葉が毛状突起に覆われるものもある[22]

コノフィツム・フリードリッヒアエ C. friedrichiae の花(AIタイプ)
コノフィツム・ビローブム C. bilobum の花(AIIタイプ)
コノフィツム・ウェットステイニー C. wettsteinii(BIタイプ)

キク科頭花のように見えるが、単生する[8][25]。本属を含むハマミズナ科の花は開放花であり、花弁を欠き、花弁状の仮雄蕊を持つ[22]。特に、本属の花弁状の仮雄蕊は基部が合着して管状の花を形成する[22]。この花の構造は本属に特有な判別形質であり、同じ亜科の他の属では、花弁状の仮雄蕊が管状にはならない[22]。本属の花の形態は、筒部の長さや雄蕊・柱頭の位置により5タイプが区別される[22]

花弁状仮雄蕊が反り返り、萼筒と仮雄蕊の筒部がともに短いものをAタイプ、萼筒が短く、仮雄蕊の筒部は長いものをBタイプ、萼裂片が膜質で退縮し、仮雄蕊の大部分が合着して筒部が非常に長くなったものをCタイプと呼ぶ[26]。Aタイプのうち、花柱が分枝して離生し、花柱の分枝が筒部を超えて突出するものをAIタイプ、花柱の分枝が基部でわずかに合着し、葯と花柱の分枝が花弁状の仮雄しべより短く、よく露出するものをAIIタイプとして区別する[26]。Bタイプのうち、花弁状仮雄蕊が反り返り、葯はよく露出し、花柱は長い円柱状に融合し、分枝は非常に短いものをBIタイプ、花弁状仮雄蕊が漏斗状を呈し、花糸は非常に短く、筒部の基部付近に隠れ、花柱も短いものをBIIタイプとして区別する[26]。Cタイプは C. acutum のみにみられるもので、葯は花柱よりも露出するが、仮雄蕊の筒部内に留まる。花柱は基部のみ合着する[26]

花色は色彩が豊富で、白色、桃色、紫色、黄色、赤色などが知られる[14]。例えば、黄色の淡雪 C. bilobum subsp. altum[5]、オレンジ色の寂光 C. frutescens[27]、ピンク色の京稚児 C. khamiesbergense[28]、白からクリーム色の玉彦(白眉玉)C. obcordellum[28]などが知られる。果実は小さく、卵形[8]

花粉の最外層である花粉壁の表面の装飾は、疣状紋型(E型)と波状疣状紋型(F型)のどちらのタイプのものもある[29]

分布と生態

旧体が衰弱しているコノフィツム・ウェットステイニー Conophytum wettsteinii

本属は、広域ケープ植物区系(Greater Cape Floristic Region; GCFR) [注釈 1]の乾燥地域で2番目に大きな属で、種の 83.9% がこの地域に固有である[22]南アフリカ西南部(ケープ州)からナミビア南部にかけてのアフリカ大陸西南部に分布する[4][5]。特に南アフリカではケープ州北西部のブッシュマンランドおよび小ナマクアランド、ナミビアでは大ナマクアランドの年間降水量が 100 mm 以下の最乾燥地に集中する[6]。ナミビアに産するものはごく一部である[14]。同じく窓を持つリトープス属もこの地域に産する[6]

この地域では、冬季に降雨する[14]。また、この地域の低地では日中の気温が30℃以上となり、かなり暑い[6]。それを避けて岩山[6]や高原などの冷涼な地域に自生する種が多く、高温を苦手とする[21]花崗岩の裂罅に細根を伸ばし、夜霧の発生によって得られる僅かな水分を吸収して生育する[6]。小型の種では半日陰の岩場で、雲霧がかかるような環境に生育する[31]

また、CAM植物の1つであり、日中は乾燥を防ぐため気孔を閉鎖し、窓から光を受けてリンゴ酸を合成し、大きな細胞に貯蔵する[6]。夜になって気温が下がると気孔を開き、二酸化炭素を取り込んで炭酸固定を行う[6]

冬型の多肉植物であり、秋から春にかけて生育する[5]。夏は休眠期である[32][5][21]。5月ごろから新芽が旧体内で成長を始める[6][21]。休眠期に先んじて、旧体が紙のような保護層になり、休眠期の間新芽を強光及び乾燥から保護する[6][13]。初秋になると成長期が始まり、新芽が旧体を破って伸長、分球する[6][5]。これは俗に「脱皮」と呼ばれる[13][1]

本属は、花に顕著な多様性があり、開花期や花器官の構造、色や芳香などの違いが見られる[22]。多くのハマミズナ科が晩冬から春にかけて(7–9月)開花するのに対し、コノフィツム属の大部分の種で、花期は3–5月の秋である[22]。一部の種では、花期が冬、春、夏のものも知られる[22]。開花の時間帯は、(花の開閉時間)は、昼咲き、午後咲き、薄明薄暮性、および夜咲きと多様である[22]。本属の1/3のは夜に開花するとされるが[14]、これは科内で珍しい性質である[22]。昼咲きのものは色鮮やかなのに対し、夜咲きのものは色は華やかでなくほとんどが芳香を放つ[14]

上位分類

かつてはマツバギク科 Mesembryanthemaceae とされたが[6]APG分類体系ではハマミズナ科に統合された[33][34]。中でもルスキア亜科 Ruschioideaeルスキア連[6] Ruschieae に置かれる[16]

ほかの属との系統関係

Hartmann (1998) では、コノフィツム属は形態情報から、ドラコフィルス属[35] DracophilusHartmanthusエンセノボトリア属[36] JensenobotryaJuttadinteriaNamibiaNeliaプサモフォラ属[37] PsammophoraRuschianthus とともにドラコフィルス属群とされた[16]

Klak et al. (2013) によるハマミズナ科ルスキア連分子系統解析[注釈 2]の結果、コノフィツム属はドラコフィルス属に近縁なクレード(Dracophilus clade: DracophilusJuttadinteriaNamibiaPsammophora)には入らず、上記の群の中のエンセノボトリア属 JensenobotryaRuschianthus に加え、ケイリドプシス属[38] Cheiridopsis などとクレード(Conophytum clade)をなすことが明らかとなった[16][注釈 3]Klak et al. (2013) による系統仮説では Enarganthe姉妹群をなしていたが、Powell et al. (2016) ではケイリドプシス属と姉妹群をなすことが示された。

以下、Powell et al. (2016) による、9個の葉緑体マーカーを用いたベイズ法による多数決合意樹に基づく Conophytum clade の系統関係を示す[44]

Conophytum clade

Ruschianthus

Namaquanthus

エンセノボトリア属 Jensenobotrya

Enarganthe

Schlechteranthus

コノフィツム属 Conophytum

ケイリドプシス属 Cheiridopsis

下位分類

Herreanthus meyeri と呼ばれたコノフィツム・ヘレアンツス C. herreanthus

分類が難しいため正確な種数はわからないとされるが[5]、2022年現在、108種が認識されている[26][注釈 4]

かつて別属とされていたオフタルモフィルム属[2][39][25] Ophthalmophyllum は本属のシノニムとされる[4][注釈 5]。これはコノフィツム属内の亜属(オフタルモフィルム亜属)とされることもある[45]。また、コノフィツム・ヘレアンツス Conophytum herreanthus も一時独立属に置かれ、ヘレアンタス・メイエリ Herreanthus meyeri Schwantes (1928) と呼ばれた[46][47]。これもコノフィツム属内の亜属(ヘレアンタス亜属)とされたことがある[46]。さらに、コノフィツム・カミエスベルゲンセ Conophytum khamiesbergense (L.Bolus) Schwantes (1950) も単型のベリスフォルディア属 Berrisfordia が立てられ Berrisfordia khamiesbergensis L.Bolus, 1932 とされたことがある[48][47][注釈 6]

また、コノフィツム属の下位分類群としてコノフィツム亜属 subg. Conophytum、デレンベルギア亜属 subg. Derenbergia、フェネストラツム亜属 subg. Fenestratum の3亜属に分類することがあったが[2]、2025年現在では特に認識されていない[49]

節と属内の系統関係

コノフィツム属の分子系統樹
コノフィツム属

Clade A[a]

C. burgeri

Clade B[b]

C. khamiesbergense

C. angelicae

C. luckhoffii

C. bruynsii

C. pageae

C. maughanii

C. ratum

Clade C[c]

Clade D[d]

C. concavum

C. hians

C. phoeniceum

C. ernstii

C. wettsteinii

Clade E[e]

C. saxetanum

Clade F[f]

Conophytum
Powell et al. (2022) によって示されている、6つのプラスチドマーカーを用いて作成されたベイズ法による MCC (Maximum Clade Credibility) 系統樹(108種中59種)

Hammer (2002) は、花の特徴と葉の形態に基づき、本属を以下の16に分けた[26]。分子系統解析では、これらの節は単系統性を示さないことがわかっている[26]。ただし、有窓型であるオフタルモフィルム Ophthalmophyllum に関しては、同じく有窓型であるコノフィツム・アカベンセ C. achabense およびコノフィツム・リトプソイデス C. lithopsoides とともにクレード(右図 Clade A)をなすことが示されている[50]

  • バルバータ節 Sect. Barbata[51]
  • バトラキア節 Sect. Batrachia[52]
  • ビロバ節 Sect. Biloba[53]
  • カタフラクタ節 Sect. Cataphracta[54]
  • チェシレ-フェレス節 Sect. Chesire-Feles[55]
  • コノフィツム節 Sect. Conophytum[56]
  • コスタータ節 Sect. Costata[57]
  • キリンドラータ節 Sect. Cylindrata[58]
  • ヘレアンツス節 Sect. Herreanthus[59]
  • ミヌスクラ節 Sect. Minuscula[60]
  • オフタルモフィルム節 Sect. Ophthalmophyllum[61]
  • ペルキーダ節 Sect. Pellucida[62]
  • サクセターナ節 Sect. Saxetana[63]
  • スブフェネストラータ節 Sect. Subfenestrata[64]
  • ヴェルコーサ節 Sect. Verrucosa[65]
  • ウェットステイニア節 Sect. Wettsteinia[66]

Powell et al. (2022) によって示されているMCC系統樹では、108種中59種の系統関係が示され、属内に6つのクレード(右図 Clade A–F)が認識されている[67]

コノフィツム・アウリフロルム C. auriflorum
コノフィツム・ブルゲリ C. burgeri
コノフィツム・カルクルス C. calculus
コノフィツム・エクティプム C. ectypum
コノフィツム・ハンメリ C. hammeri
コノフィツム・リトプソイデス C. lithopsoides
コノフィツム・メイエリ C. meyeri
コノフィツム・ミヌツム C. minutum
コノフィツム・オブコルデルム C. obcordellum
コノフィツム・ラモサム C. ramosum
コノフィツム・トルンカツム C. truncatum
コノフィツム・ウヴィフォルメ C. uviforme subsp. uviforme
コノフィツム・ヴェルチヌム C. velutinum
コノフィツム・ウェットステイニー C. wettsteinii

以下、Hassler (2025) に基づく種以下のリストを示す。また、学名の仮名表記(片仮名)を主に須藤 (2020) に基づいて示す[注釈 7]

また、以下の2雑種が記載されている[4]

  • Conophytum ×cupreiflorum Tischer (1955) - C. meyeri × C. velutinum ssp. polyandrum
  • コノフィツム・マルニエリアナム[135](流通名:円空[189][19]Conophytum ×marnierianum Tischer & H.Jacobsen (1956) - C. ectypum × C. bilobum

人間との関わり

メセン類」と呼ばれるハマミズナ科を代表する多肉植物であり、よく栽培される[5][13]リトープス属などとともに、特に「玉型メセン」と俗称される[12][32]園芸品種が豊富で、葉の色彩や透明度、模様などにバリエーションがある[5]。交配などにより新たな品種が作出され、属全体で300品種を超えるとされる[14]。日本でも「稚児桜」(ちござくら)[88]、「銀星殿」(ぎんせいでん)、「静御前」(しずかごぜん)などが作出されている[18]

自生地域では、高床花壇や砂漠ガーデンに植えられる[8]。日本で栽培する場合、夏(5月から8月まで[6])の休眠期には水を控え、雨除けのある風通しの良い半日陰で維持する[13]。休眠の準備は5月下旬から6月上旬にかけて始まる[78]。7–8月の休眠状態では一見枯れたような姿となるが、8月下旬から9月上旬にかけて生育が再開すると、脱皮して新芽が出てくる[78]。初秋になり涼しくなると水やりを行い、用土が乾くと十分な量散水して管理する[13]。有窓種や足袋型の種では日照を好むのに対し、ムンダムレイポルディーなどの系統では、弱い日差しの中で栽培される[190]

オフタルモフィルム系のコノフィツムでは、植物体が柔らかいため、ナメクジによる食害を受けやすい[190]。また、ガラス室ではアブラムシの害を受けやすい[8]

脚注

参考文献

関連項目

外部リンク

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