サーチウォーター・レーダー
From Wikipedia, the free encyclopedia
水上目標と低空目標を探知可能な航空機搭載レーダーであり[2]、シークラッター(波の反射によるノイズ)の中から目標のレーダー反射波を識別するため、アンテナから発信するビーム幅を狭くするとともに、パルス圧縮技術を使ってビームが海面に当たる面積を狭め、さらに周波数を激しく変化させるフルー・アジャイル機能を用いることで複数の周波数で目標のレーダー反射特性を調べることができる設計となっている[1][4]。
1980年からイギリス空軍のホーカー・シドレー・ニムロッド MR.2哨戒機に搭載されて運用が開始された[2][5][注釈 1]。1982年のフォークランド紛争に投入された際の運用成績は良好で、捜索範囲内のあらゆる艦船の長さと大体の形状を捕捉可能だったとされ、5月15日に単機のニムロッドがアルゼンチン沿岸の偵察を行った際には、アルゼンチンの東海岸全域に当たる幅640キロ・長さ1600キロにわたる範囲に中型はしけ以上の大きさの目標はほぼ存在しないことを確認したという[6][7]。およそ30年にわたる運用の後、2010年にニムロッド MR.2は退役した[5]。後継として、改良型のサーチウォーター2000MRレーダーを積んだニムロッド MRA.4が開発されていたが、予算問題により計画はキャンセルされている[5][8]。
いっぽう、フォークランド紛争ではイギリス軍に敵航空機を早期探知する早期警戒機がいないことが問題となった[7]。低空侵入してくるアルゼンチン軍の対艦攻撃機を探知できずに迎撃能力が制約された結果、艦隊への攻撃を許したことから、イギリス軍は戦後ただちにサーチウォーターの改良モデルを搭載したシーキング AEW.2A早期警戒ヘリコプターを導入した[7][9]。このヘリコプターは、胴体右側に装備された可動式パイロンの先端にレドームに覆われたサーチウォーターを装備しており、飛行中は機体下にレドームを下げて全周対空警戒を行う[1][3][10]。2002年には改良型のサーチウォーター2000を搭載したシーキングASaC.7が登場するなど、バージョンアップを重ねつつ2018年9月までイギリス海軍で運用された[3]。バージョンアップしたシーキングASaC.7は、洋上での航空目標の早期警戒のみならず車両の轍のような小さな地上目標の探知も可能であり、アフガニスタンにも派遣されて2000回以上の任務をこなしている[3]。後継としては、新たにクロウズネスト・レーダーシステムを搭載したマーリン Mk.2が導入された[3][11]。
脚注
注釈
出典
- 1 2 3 4 リチャード・S.フリードマン 他 著、落合信彦 訳『21世紀の戦争 テロと宇宙戦-究極の戦場』光文社、1986年、67-69,418頁。
- 1 2 3 S. Watts (2017年). “The Searchwater radar on Nimrod MR2”. The Institution of Engineering and Technology. 2025年9月22日閲覧。
- 1 2 3 4 5 David Donald (2018年9月27日). “Royal Navy Bids Farewell to the Sea King”. AIN. 2025年9月22日閲覧。
- ↑ 読売新聞社 編『兵器最先端6 電子戦力 エレクトロニクスの戦い』読売新聞社、1986年、143-144頁。
- 1 2 3 “Nimrod Maritime Patrol and Electronic Intelligence Aircraft”. Defense Advancement. 2025年9月22日閲覧。
- ↑ アルフレッド・プライス、ジェフリー・エセル 著、江畑謙介 訳『空戦フォークランド ハリアー英国を救う』原書房、1984年、92頁。
- 1 2 3 伊藤重夫「フォークランド(マルビナス)諸島紛争とハリアーの活躍」『鵬友』第9巻第2号、『鵬友』発行委員会、1983年7月、56,58,70。
- ↑ “Nimrod MRA4”. naval-technology.com (2000年4月13日). 2025年9月22日閲覧。
- ↑ 中村悌次「フォークランド紛争に関する一考察(4)」『波涛』第10巻第4号、兵術同好会、1984年11月、19頁。
- ↑ 『ヘリコプターの世界』航空ジャーナル、1986年、28頁。
- ↑ “Royal Navy's New Merlin Crowsnest AEW Helicopter Enters Service Ahead of CGS21 deployment” (2021年3月24日). 2025年9月22日閲覧。