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システムトレード

投資を行う際に裁量を排し一定売買ルールに従って売買を行う方法 From Wikipedia, the free encyclopedia

システムトレードとは、あらかじめ定めた売買ルールに従って、金融商品の売買を行う手法である。

裁量による判断をできるだけ排し、一定の条件に基づいて売買を行うことから、機械的売買(mechanical trading)とも呼ばれる。売買ルールの検証や売買シグナルの生成、注文の執行などにコンピュータを利用することが多いが、システムトレードそのものは自動発注を必須とするものではない[1]。一方、アルゴリズム取引は、大口注文を小口に分割して執行するなど、注文執行をコンピュータで自動化する技術を指す場合があり、システムトレードとは目的や概念が異なる[2]。

概要

システムトレードでは、売買の条件をあらかじめルールとして定め、そのルールに従って売買を行う。ルールには、移動平均線などのテクニカル分析による指標、価格の上昇・下落、出来高、時間、保有期間など、さまざまな条件を組み合わせることができる[3]。

システムを実際の市場で使用する前に、過去の価格データを用いて売買ルールの有効性を検証するバックテストが行われる。バックテストでは、過去の市場環境においてルールを適用した場合の損益や勝率、最大ドローダウンなどを調べることができる。一方で、過去のデータに合わせて売買ルールを過度に調整すると、将来の市場で有効に機能しなくなるカーブフィッティング(過剰最適化)が生じる可能性がある[4]。

システムトレードでは、売買ルールを明文化することで、相場状況や感情に左右されにくい取引を行えることが利点とされる。一方、過去の市場で有効だったルールが将来も有効であるとは限らず、取引コストや市場環境の変化、過剰最適化などを考慮する必要がある[5]。

システムトレードの手法

システムトレードでは、さまざまな売買ルールが用いられる。代表的なものとして、移動平均線の交差を利用する手法、一定期間の高値や安値の更新を売買シグナルとするブレイクアウト、価格の方向性に追随するトレンドフォローなどがある[6]。

また、株式、先物、外国為替など対象とする市場によってもシステムの設計は異なる。複数の指標や市場間の相関関係を組み合わせた売買ルールを構築することもある[7]。

検証時に注意する事柄

システムトレードでは、過去のデータを用いて売買ルールを検証することが重要となる。検証には専用ソフトウェアのほか、表計算ソフトやプログラミング言語などが利用される。検証結果を改善するためにパラメータを繰り返し調整すると、特定の過去データに適合しすぎるカーブフィッティングが生じる場合がある[8]。

そのため、開発に使用していない期間のデータを用いた検証や、異なる市場・期間における検証などによって、売買ルールの頑健性を確認する方法が用いられる。

歴史

海外における発展

システムトレードにつながる機械的な売買ルールの考え方は、20世紀中頃から発展した。リチャード・ドンチアンは1950年代から1960年代にかけて、価格の動きに基づくトレンドフォローの売買ルールを発展させたことで知られている[9]。

1980年代には、リチャード・デニスとウィリアム・エックハートによる「タートルズ」の実験が行われた。1983年、両者は23人の未経験者に体系化されたトレンドフォローの売買ルールを教え、ルールに基づく取引を実践させた[10]。この実験は、体系化された売買ルールを用いたトレンドフォローの代表例として後年広く知られるようになった[11]。

また、ラリー・ウィリアムズは複数の市場で売買システムを構築し、過去のデータを用いて新しいアイデアを検証し、結果が良ければシステムに取り入れる手法を用いてきた[12]。パンローリングが紹介した彼の売買手法にも、具体的な条件を設定した売買ルールと、その検証結果が示されている[13]。

日本における発展

日本の取引所では、1980年代後半からデリバティブ取引などにおけるシステム売買が導入された。大阪証券取引所では、1988年9月に日経平均株価(日経225)先物取引を開始し、1988年10月には株先50と日経225先物でシステム売買を開始した。1989年6月の日経225オプション市場開設後、同年12月には同市場でもシステム売買を開始した[14]。

1991年2月には大阪証券取引所で株式現物取引のシステム売買が開始され、立会場銘柄150銘柄を除く全銘柄がコンピュータによるシステム売買へ移行した[15]。1996年には株式と先物・オプションの取引システムが統合され、1999年には株式、先物、オプションの取引が全面的に自動執行へ移行した[16]。

商品取引でもシステム化が進み、東京工業品取引所では1991年4月にザラバ仕法によるシステム売買が開始され、2005年1月には全商品がシステム売買化された[17]。

このような取引所における売買システムの電子化とは別に、個人投資家が売買ルールを構築・検証する意味でのシステムトレードも日本で普及していった。

個人投資家における普及と展開

1998年の外為法改正によって外国為替取引の規制が緩和され、その後、外国為替証拠金取引が個人投資家向けに登場した[18][19]。その後、個人投資家を対象とした外国為替のシステムトレードに関する情報や書籍なども登場した。

2000年には、トゥーシャー・シャンデの『売買システム入門――相場金融工学の考え方→作り方→評価法』の日本語版が刊行され、売買システムの開発、実行、評価などが紹介された[20][21]。

2006年には森田佳佑の『自動売買ロボット作成マニュアル――エクセルで理想のシステムトレード』が刊行され、ExcelやVBAを利用した売買ルールの構築、検証、売買シグナルの表示などが紹介された[22]。翌2007年には初級者向けの『自動売買ロボット作成マニュアル初級編』も刊行され、Excelやマクロを用いた売買プログラムの作成と検証が解説された[23]。

先物・オプションを対象としたシステムトレードについても専門書が刊行され、2010年には津島朋憲の『システムトレード&スプレッド投資法――日経225先物・オプション』が刊行された[24]。

同年にはシステムトレードに関する情報提供やセミナーなどを行うウェブサイト「システムトレード.com」も開設され、個人投資家向けの情報提供が行われた[25]。

日本株の個別銘柄を対象としたシステムトレードについては、2011年に斉藤正章の『入門 株のシステムトレード 利益が出るロジックのつくり方』が刊行された。また、同氏は日本株を対象とした検証ソフトも開発している[26][27]。

参考文献

  • トゥーシャー・シャンデ 著、鶴岡直哉 訳『売買システム入門――相場金融工学の考え方→作り方→評価法』パンローリング、2000年。ISBN 4-939103-31-5。
  • チャールズ・ルボー、デビッド・W・ルーカス 著、長尾慎太郎 訳『マーケットの魔術師 システムトレーダー編』パンローリング。
  • トーマス・ストリズマン『トレーディングシステム徹底比較』パンローリング。
  • ロバート・パルド『トレーディングシステムの開発と検証』パンローリング。

脚注

関連項目

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