シーベルト
国際単位系の一つ
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定義
線量当量とは、吸収線量(放射線から受けるエネルギー)に線質係数[注 3]を掛けたものである[6]。 その名称は、放射線防護の研究で功績のあったロルフ・マキシミリアン・シーベルトにちなむ[6]。
日本の計量法では「グレイで表した吸収線量の値に経済産業省令で定める係数を乗じた値が一である線量当量」と定義している[7]。
上記の「経済産業省令で定める係数」は、水中の線衝突阻止能(荷電粒子が水中を進むとき1 マイクロメートル(µm)につき電子との衝突により失う運動エネルギーが、1 キロボルト (kV)の電位を電子が移動するときに必要とするエネルギーの何倍に相当するかを表す。)に基づく線質係数として、1から20の数値を定めている[8]。
シーベルトとグレイ
ある物質が放射線に照射されたとき、その物質の吸収線量を示す単位がグレイ(記号 Gy。定義 J/kg)である[6]。生体(人体)が受けた放射線の影響は、受けた放射線の種類と対象組織によって異なるため、吸収線量値に、放射線の種類ないし対象組織ごとに定められた修正係数を乗じて線量当量を算出する[6]。
- Sv = 修正係数 × Gy
例えば、等価線量を算出する際には、修正係数として放射線荷重係数が使用される。放射線荷重係数は、放射線の種類によって値が異なり、X線、ガンマ線、ベータ線は1、 陽子線は5、 アルファ線は20、 中性子線はエネルギーにより5から20までの値をとる。これらの係数は無次元量(単位がない)なので、シーベルトはグレイと同じ J/kgでも書ける。
シーベルトの分量単位
- 1 Sv = 1000 mSv(ミリシーベルト) = 1000000 μSv(マイクロシーベルト)
シーベルトとレム
国際単位系に切り換わる以前はレム (rem) が使われたが、レムは国際単位系における一貫性がないため、使われなくなった[注 4]。換算は以下の通りである。
- 1 レム(rem) = 0.01 シーベルト(Sv)[7]
線量当量率
単位時間あたりの線量当量を「線量当量率」という。計量法では、物象の状態の量(典型72量)のひとつである(法定計量単位#物象の状態の量、番号72))。国際単位系(SI)における一貫した組立単位は、シーベルト毎秒(Sv/s)である。計量法は、これ以外に、シーベルト毎分(Sv/min)、シーベルト毎時(Sv/h)を規定している[9]。 シーベルトが被曝の総量を表すのに対し、シーベルト毎秒、シーベルト毎分、シーベルト毎時は、被曝の強さを表す。
シーベルト毎時
シーベルト毎時 (Sv/h) は、1時間あたりの生体への被曝の大きさの単位。1 Sv/hは、1時間につき 1 Svの被曝量を受けることに相当する強さ。
(例)
- 25 μSv/h の被曝を2時間にわたって受けると、被曝の総量は 50 μSv (マイクロシーベルト) = 0.05 mSv = 0.00005 Sv になる。
- 400 mSv/h の被曝を15分間受けると、被曝量は 100 mSv (ミリシーベルト) = 0.1 Sv になる。
- 10 Sv/h の被曝を30分受けると、被曝量は5 Sv = 5000 mSv = 5000000 μSvになる。
測定の実際
線量当量は計算値であり、直接測定可能な量ではない。したがってサーベイメーターで測定する空間ガンマ線量率や個人線量計で測定する個人線量当量は、人体組織等価の密度及び元素組成を有する直径30 cmの球(ICRU球と呼ぶ)を人体の代表モデルとし[10][11]、人体モデルの特定の深さにおける単位時間あたりの吸収線量を過小評価することのないように換算することで線量当量率を表示する。
- 空間線量率(空間ガンマ線量率)
- サーベイメーターで測定する空間線量率は、ICRU球の表面より半径方向に 1 cm の深さにおける吸収線量率を、線量当量率に換算して表示する。サーベイメーターは放射線の検出機構により計測可能な線種が限定されるため、用途・目的別にガンマ線・ベータ線・アルファ線ならびに中性子線[注 5]ごとに単独の線種、または検出器を複数組み合わせて線量当量率を表示する[13]。特に中性子線の検出には、検出器に 3Heや10Bなど、捕獲した中性子線との相互作用により荷電粒子を放出する核種を封入しておき、娘核種から出る荷電粒子を検出器で検出させる[12]。したがって中性子線も測定可能なサーベイメーターはその仕組み上、設計難易度が高く、一般的なサーベイメーターではエックス線・ガンマ線のみの測定しかできない。なおモニタリングポストで計測する放射線の種類はガンマ線に限定しているため、「空間ガンマ線線量率」と線種を限定表記する場合がある。
- 個人線量当量
- フィルムバッジや個人線量計で測定可能な放射線は、エックス線やガンマ線が主である。フィルムバッジの構成や複数センサーの搭載でベータ線の照射にも対応可能であるが、中性子線の場合は中性子線の捕捉のため材質を違えたフィルムバッジを必要とする[14]。種類の異なる複数のフィルムバッジを身に着けるのは煩雑なため、ひとつにまとめたフィルムバッジが上市されている[15][14]。またフィルムバッジはその仕組み上、線量当量率は測定不可であり、個人の累積線量当量の管理に適している。個人線量計もまたエックス線・ガンマ線の測定用が主なものであるが、中性子線の飛び交うおそれのある場所向けに中性子線も計測可能な個人線量計もある[16]。
基準
放射線防護とシーベルト
人体が放射線にさらされる事を放射線被曝 (ほうしゃせんひばく) といい、人体は全世界で平均すると年間およそ 2.4 mSvの自然放射線にさらされている[6]。放射線は量が多いほど人体に有害であるため、放射性物質を扱う環境にある人は、自分がどの程度の放射線を受けたのかを、常に厳密に管理しなくてはならない。その際に用いられる尺度の一つがシーベルトである。
胃のX線撮影1回分の線量は0.5–4 mSv、X線CTスキャンによる撮像1回分の線量は7–20 mSvである[6]。
2 Svの放射線を全身に浴びると5 %の人が死亡し、4 Sv で50 %、7 Sv で99 %の人が死亡すると言われている。一方で、0.2 Sv以下の被曝では、急性の臨床的症状は認められないとされるが、こちらは長期的な影響について議論があり、また低線量の被曝についても「健康被害が生じた」として訴訟が起きている[21]。
なお、一度に大きな線量を被曝した場合の線量単位にはシーベルトではなくグレイが用いられるが、X線とガンマ線による被曝に関しては数値に違いがない。
短時間・大線量被曝でシーベルトが用いられない理由は線量率効果[22]である。なぜなら単位「シーベルト」に求められる性質のひとつは数値の加算可能性であり、ある時点Aでの被曝と別の時点Bでの被曝の影響を全体として評価する場合に、両者の評価数値を加算したものに意味がなければならないからである。同じ放射線を被曝しても線量率によって影響が異なるのであるから、低線量率被曝の評価数値と高線量率被曝の評価数値は加算できない。シーベルトは低線量率の被曝環境における人体への影響を評価することを目的とした単位である。
これに加えて、シーベルトはグレイに対して放射線種や対象組織による係数(厳密な数値ではない)を乗じて得るものなので、たとえ放射線種がX線やガンマ線であってもグレイと同等の厳密さを持つと考えてはならない。SI組立単位に入ってはいるが、シーベルトはあくまでも管理された環境における人体防護に主眼を置いた放射線管理・放射線防護のための単位であり、社会学的な単位とも言える。