ジャン=リュック・マリオン
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| 生誕 |
1946年7月6日(79歳) オー=ド=セーヌ県ムードン |
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| 国籍 |
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| 教育 | |
| 出身校 | パリ高等師範学校 |
| 出身大学 | パリ第4大学(博士課程) |
| 研究 | |
| 研究機関 | ポワティエ大学、パリ第10大学、パリ第4大学、シカゴ大学 |
| 研究分野 | カトリシズム・ポストモダン・現象学・形而上学・哲学史・神学・存在論・他者論 など |
ジャン=リュック・マリオン(Jean-Luc Marion, 1946年7月3日 - )は、フランスの哲学者。ムードン(オー=ド=セーヌ県)生まれ。アカデミー・フランセーズ会員(2008年 -)。専門は、カトリシズム・ポストモダン・現象学・形而上学・哲学史・神学・存在論・他者論など。
ムードンで初等教育、セーヴルの国際リセで中等教育を受けたのち、(ダニエル・ガロワとジャン・ボーフレが教鞭をとる)リセ・コンドルセのグランゼコール準備過程に入学する。パリ高等師範学校の卒業生である。(1967年から1971年まで在籍。)高等師範学校では、哲学教授資格者で哲学博士のルイ・アルチュセールに学んだ。
その後、パリ第4大学(ソルボンヌ大学)の形而上学講義のポストを前任のエマニュエル・レヴィナスから引き継ぐまでは、まずはポワティエ大学、次いでパリ・ナンテール大学で哲学を講じた。また、ケベック・ラヴァル大学(1994–1996)やジョンズ・ホプキンス大学(2006/2007/2013)など、多くの機関で招聘教授を務めた。さらに、パリ・カトリック大学のエティエンヌ・ジルソン記念講義(2004–2005)を任され、現在は、リクールの後任としてシカゴ大学で教授を務める。また、フランス国外の多くの大学で名誉教授の称号を受けている。
2008年11月6日には、ルスティジェ―ル枢機卿の後継としてアカデミー・フランセーズの一員に選ばれた。マリオンは枢機卿と親密で、2010年の入会演説の際には、枢機卿に賛辞を呈した。2011年12月10日には、教皇ベネディクト16世により、教皇庁文化評議会(ローマ教皇庁の一機関)の一員として指名された。
ヴァンサン・キャローとダン・アルビブが指揮を任されるまでの間、長きにわたって、フランス大学出版局の「エピメテ叢書」を宰領した。
研究・思想
マリオンの研究テーマは、大きく3つにわけることができる。
- デカルト哲学。
- 現象学。
- キリスト教神学(およびある種の他者論)。
デカルト研究の分野では、緻密な歴史的考証と大胆な解釈学的作業の両方を併せもつ独自のスタイルで、新たなデカルト像を描写することに成功し、1980年代から90年代ごろまでの研究をリードした。特に、神の無限性をめぐる議論(ならびに「無限なものの観念」をめぐる議論)や、(マルティン・ハイデッガーのテーゼを引き継いだ)「デカルト形而上学の存在-神-論的構成」、また、(「形而上学の破壊」ならぬ、)「形而上学の超出dépassement」など、論争喚起的・刺激的な論点を取り出し、開陳してみせた。その後の中世・近世哲学研究における影響力は大きく、特にフランスでは、キャローやアルビブなど、マリオンの流れを次ぐ一群の研究者を養成した(俗に「マリオン・シューレ」とも呼ばれる)。
現象学分野では、「贈与」や「飽和」といった概念を先鋭化して、独自のスタイルを確立した。しばしば、エマニュエル・レヴィナスやミシェル・アンリらとの思想的近縁性が指摘される。とくにエトムント・フッサールの「所与性」における「与え」の先行性の議論や、ジャック・デリダとの間で交わされた「贈与」をめぐる論争が有名。
神学分野では、形而上学(あるいは人間的思考)のシステムに取り込まれない仕方で、神の超越性を定義するために、「存在なき神」なる概念を提示する。神はただ「与える」ものであるとした上で、そうした「与え」を「愛 (amour/charité) 」と言い換える。この限りで、思惟や存在といった形而上学的原理とはちがった、「愛の秩序」という地平が開かれる。
なお、その他幅広い研究がある。
芸術の哲学の分野では、マーク・ロスコやギュスターヴ・クールベの絵画に特に関心を寄せる一方で、エルジェのために『エルジェ、恐ろしい金の音、あるいは富のアルファベット』という小論を刊行した。
政治的には、カトリック教会と教義の権威への回帰を促進した。その権威によってのみ、信徒の共同体が市民の共同体の基礎をなすことができるだろうと論証し、またその権威によってのみ、正義が保証されるとした(自身もカトリックの信仰をもち、パリ大司教ジャン=マリ・ルスティジェールの密なる協力者であった)。
受容
パリ・カトリック学院での教え子エマニュエル・ファルクによれば、マリオンの最も重要な著作は『与えられることで』(1997)である。彼によれば、同書に比肩するのは、「新たな『純粋理性批判』、そうでないなら、ひっくり返された『純粋理性批判』だ」。
ドミニク・ジャニコーは、マリオンならびに1990年代のフランス現象学者たちを糾弾したが、それは[以上のような思索において]マリオンが、自身の信仰に資するよう哲学的な仕事を利用し、かくして「フランス現象学の神学的転回」に加担した、という廉でのことである。この論争を長引かせるためにジャニコーが見つけ出した標的は、マリオンの人格である。1999年、ジャニコーは『分裂した現象学』を刊行し、特にマリオンについて言及しつつ、自らの立場から調査を続ける。2009年の4月には、ガリマール出版から、『フランス現象学の神学的転回』と『引き裂かれた現象学』とを合冊にして、『揺れ動く現象学』を刊行した。
より一般的には、2009年に哲学者ジャック・ブーヴレスは次のように記した。
フランス哲学では、神学と哲学との間に維持されているきわめて密接なつながりがあり、このつながりは、たとえば、きわめて典型的には、アカデミー・フランセーズ会員となったカトリックの大哲学者、ジャン=リュック・マリオンのような人々を通じて存続している。
賞と栄典
- 1978年:『偶像と距離』でフランス人文院シャルル・ランベール賞
- 1982年:『存在なき神』でアカデミー・フランセーズアンリ・デュマレスト賞
- 1992年:一連の著作によりアカデミー・フランセーズ哲学グランプリ
- 2008年
- 6月25日:ハイデルベルク大学とハイデルベルク市よりカール・ヤスパース賞
- 11月6日:アカデミー・フランセーズ会員
- 2009年:アッカデーミア・デイ・リンチェイ会員
名誉学位
- 2006年:ユトレヒト大学(
オランダ) - 2009年:サン・マルティン国立大学(
アルゼンチン) - 2010年:ハバフォード大学(
イギリス) - 2011年:パーズマーニ・ペーテル・カトリック大学(
ハンガリー) - 2013年
- 2015年:オーストラリアカトリック大学(
オーストラリア)
勲章
レジオンドヌール勲章シュヴァリエ[i. e. 第5章]
教育功労章オフィシエ[i. e. 第4章]
大聖グレゴリウス勲章コメンダトーレ(
聖座より)
公刊著作
- 1970,アラン・ドゥ・ブノワ(共著)『神とともに,それとも神なしで?』(『若手研究者シンポジウム』シリーズ)ボーシェーヌ社.〔Avec Alain de Benoist, Avec ou sans Dieu ?, coll. « Carrefour des jeunes », Beauchesne.〕
- 1975,『デカルトにおける灰色の存在論について:『規則論』におけるデカルト的学知とアリストテレス的知』ヴラン哲学書店.Sur l’ontologie grise de Descartes. Science cartésienne et savoir aristotélicien dans les Regulae, Librairie Philosophique J. Vrin.
- 1977,『偶像と距離:五つの論考』グラッセ社.L’Idole et la distance. Cinq études, Grasset.
- 1981,『デカルト における白い神学について:類比,永遠真理の創造,基礎』フランス大学出版.Sur la théologie blanche de Descartes. Analogie, création des vérités éternelles, fondement, P. U. F.
- 1982,『存在なき神』ファイヤール社./フランス大学出版,2010.Dieu sans l’être, Fayard/P. U. F.[邦訳:永井晋,中島盛夫訳,法政大学出版,2010.]
- 1986,『デカルト形而上学のプリズムについて:デカルトの存在-神-論の構成と限界』フランス大学出版.Sur le prisme métaphysique de Descartes. Constitution et limites de l’onto-théo-logie cartésienne, P.U.F. [部分訳(第2章「存在-神-論」):鈴木泉訳「存在-神-論」『現代デカルト論集 I』勁草書房,1996.]
- 1986,『愛徳のプロレゴメナ』ディフェランス出版.Prolégomènes à la charité, Éditions de la Différence.
- 1989,『還元と贈与:フッサール,ハイデガー現象学論攷』フランス大学出版.Réduction et donation. Recherches sur Husserl, Heidegger et la phénoménologie, P. U. F. [邦訳:芦田宏直他訳、行路社,1994.]
- 1991,『デカルトの諸問題 I:方法と形而上学』フランス大学出版.Questions cartésiennes I. Méthode et métaphysique, P. U. F.
- 1991,『見えるものの交錯』ディフェランス出版.La Croisée du visible, Éditions de la Différence.
- 1996,『デカルトの諸問題 II:私と神』フランス大学出版.Questions cartésiennes II. L’ego et Dieu, P. U. F.
- 1996/2006,『エルジェ,恐ろしい金の音,あるいは富のアルファベット』アシェット.Hergé. Tintin le terrible ou l'alphabet des richesses, Hachette.
- 1997,『与えられることで:贈与の現象学論考』フランス大学出版.Étant donné. Essai d’une phénoménologie de la donation, P. U. F.
- 2001/2010,『余剰について:飽和した現象についての研究』フランス大学出版.De surcroît. Études sur les phénomènes saturés, P. U. F.
- 2003,『愛の現象学』グラッセ.Le Phénomène érotique, Grasset.
- 2005,『見えるものと啓示されたもの』セール.Le Visible et le révélé, Cerf, 2005.
- 2008,『自己の代わりに:聖アウグスティヌスへのアプローチ』フランス大学出版.Au lieu de soi, l'approche de saint Augustin, PUF.
- 2010,『ネガティヴな確実性』グラッセ&ファスケル.Certitudes négatives, Grasset & Fasquelle.
- 2010,『見ることを信じること』発話と沈黙コミュニオン.Le croire pour le voir, Communio Parole et silence.
- 2010,『アカデミー・フランセーズ入会演説』グラッセ&ファスケル.Discours de réception à l’Académie française, Grasset & Fasquelle.
- 2012,『物事の厳格さ:ダン・アルビブとの対話』フラマリオン.La Rigueur des choses, entretiens avec Dan Arbib, Flammarion.
- 2013,『デカルトの受動的な思惟について』フランス大学出版.Sur la pensée passive de Descartes, P. U.F.
- 2014,『クールベ,あるいは「眼」による絵画』フラマリオン.Courbet ou la peinture à l’œil, Flammarion.
- 2014,クリストフ・ペラン編『意志についての講義』ルーヴァン大学出版.Cours sur la volonté, édité par Christophe Perrin, collection Empreintes philosophiques, Presses Universitaires de Louvain.
- 2016,『贈与再考』フランス大学出版.Reprise du donné, P. U. F.
- 2017,『カトリックの時代へ向けた短い弁明』グラッセ.Brève apologie pour un moment catholique, Grasset.
