ジョナサン・ビス
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ビスはインディアナ州、ブルーミントンの音楽一家に生まれた。父方の義祖母であるラヤー・ガールブゾヴァはロシアのチェリストであった。彼女は女性チェリストとして広く知られた最初期の人物であり、サミュエル・バーバーが彼女のためにチェロ協奏曲を書いている。両親はいずれもヴァイオリニストのミリアム・フリードとポール・ビスである[3][4]。政治家である兄のダニエルはイリノイ州、エバンストンの市長を務める。ビスは6歳でピアノを習い始め、両親が共にヴァイオリンを教えていたインディアナ大学ブルーミントン校のジェイコブズ音楽院でカレン・テイラーとエヴェリン・ブランカートに師事した[5]。17歳でカーティス音楽院に入学するとレオン・フライシャーの薫陶を受けた[6][7]。『ニューヨーク・タイムズ』は2011年にビスのカーネギー・ホールデビューとなるリサイタルへ向けてフライシャーにインタビューを行っており、彼はそこで教え子について次のように述べている。
彼の能力と関心は超越的、崇高な事物へと向かっている。そのことが私に大きな印象を与えた。彼は室内楽と共に始まった道を、自分の母親と、より広範にはラヴィニアやマールボロといった土地の両方と健全に選択した。そしてこの職業の年長者たちに注目すべき人物として知られていったのである[8]。
キャリア
ビスは2000年に92ストリートYでニューヨークでのリサイタルデビューを飾った。2001年のはじめにはクルト・マズアの指揮するニューヨーク・フィルハーモニックと共演を果たした[9]。ヨーロッパでのキャリアを開始したのは2002年のことで、彼はこの年にBBCラジオ3の新生代の芸術家にアメリカ人として初めて選出され[10]、翌年にボルレッティ=ブイトーニ財団賞を獲得した[11]。カーネギー・ホールでリサイタルデビューを果たしたのは2011年1月のことである[8]。
ビスはアメリカ国内の主要オーケストラであるロサンジェルス・フィルハーモニック[12]、ニューヨーク・フィルハーモニック[9]、ボストン交響楽団[13]、シカゴ交響楽団[14]、サンフランシスコ交響楽団[15]、クリーヴランド管弦楽団[16]、フィラデルフィア管弦楽団との共演実績がある[17]。ヨーロッパでも独奏者として招かれており、ロンドン・フィルハーモニー管弦楽団[18]、BBC交響楽団[19]、ロンドン交響楽団[20]、ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団、ロッテルダム・フィルハーモニー管弦楽団[21]、オスロ・フィルハーモニー管弦楽団、スウェーデン放送交響楽団[22]、ブダペスト祝祭管弦楽団[23]、シュターツカペレ・ベルリン[24]、シュターツカペレ・ドレスデン[25]、ライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団、ベルリン・ドイツ交響楽団との共演経験がある[26]。室内楽にも力を注いでいるビスは内田光子[27]、レオン・フライシャー、リチャード・グード[28]、五嶋みどり[29]、キム・カシュカシャンといった著名アーティストと共演している[30]。
2010年、ビスは母校のカーティス音楽院のニューバウアー・ファミリー議長としてピアノの教員に任用された[31]。教員としてのキャリアの一環としてクラシック音楽の音楽家として初めてコーセラと提携することになった。彼らは協力してベートーヴェンのピアノソナタの中でも最も有名な数曲に関する無料の映像教材である「Exploring Beethoven's Piano Sonatas」(ベートーヴェンのピアノソナタの探索)を制作した[32]。この教材は185か国以上の国の15万人以上の受講生が視聴した[33][34]。ビスはピアノソナタ全曲を網羅し終えるまで講義を録り続ける予定としている。
ビスがキャリアを通じてひとりの作曲家に焦点を当て続けていることはとりわけ注目を集めている。2011年のベートーヴェンの誕生日に、彼はベートーヴェンのピアノソナタを演奏するという芸術に関する思索を記した1万9千語からなる電子書籍『Beethoven's Shadow』(ベートーヴェンの影)を発表した。彼はAmazon Kindleから電子書籍の執筆依頼を受けたはじめてのクラシック音楽の音楽家となったのであった[35]。2011年にOnyxレーベルから、ビスのベートーヴェンのピアノソナタ集の最初の録音が発売された。これはここから数年かけて公表されていく9枚のCDの最初の1枚であった[36]。ビスは2012年から2013年にかけてのシーズンをロベルト・シューマンに専心し、自分が「シューマンが記した全ての音符の熱狂的信者」であると宣言した[37]。この取り組みは「シューマン:その影響下で」と銘打たれ、シューマンの影響と彼の遺産に関して探求が行われた。ビスはモーツァルト、ベートーヴェン、パーセルといったシューマンにとっての先達たち、そしてヤナーチェク、ベルクらのシューマンの影響を受けた作曲家、クルターグ・ジェルジュ、ティモ・アンドレスという現代作曲家の作品を世界各地で演奏会を開催して演奏した[38]。プロジェクトの一環として、ビスはKindleの電子書籍『A Pianist Under the Influence』(その影響を受けたあるピアニスト)を上梓している。同書籍においてビスはシューマンの音楽との生涯にわたる、強力な、重層的な関係性を説明しており、その抜粋は『スレート』誌にも掲載された[39][40]。また、ビスはエリアス弦楽四重奏団とシューマンとドヴォルザークのアルバムを発表している[41]。
ビスは新しい音楽を支持している。彼がこれまでに委嘱した作品にはデイヴィッド・ラドウィグの『Lunaire Variations』、レオン・カーシュナーの『Interlude II』、ルイス・スプラットランの『Wonderer』、バーナード・ランズの『ピアノのための3つの小品』と協奏曲などがあり、協奏曲はボストン交響楽団と初演を行った[42]。またウィリアム・ボルコムのピアノ五重奏曲の初演も手掛けている。2016年には『Beethoven/5』というプロジェクトを開始し、セントポール室内管弦楽団が5人の作曲家に対し、ベートーヴェンの5曲の各ピアノ協奏曲に着想を得た5作品の新作ピアノ協奏曲の作曲を委嘱している[43]。ほかに、ビスはピューリッツァー賞 音楽部門の最終選考に残ったティモ・アンドレスの『The Blind Banister』、サリー・ビーミッシュの『City Stanzas』、サルヴァトーレ・シャリーノの『Il sogno di Stradella』、キャロライン・ショウの『Watermark』、ブレット・ディーンの『Gneixendorf Music – A Winter Journey』の初演も手掛けている。
ビスはコンサートと学術の場の両方において、人生の終盤に至って驚くべき方向性に至った音楽家に焦点を当てることで作曲家の「後期の作風」に関する研究を開始している。彼はバッハ、ベートーヴェン、ブラームス、ブリテン、エルガー、カルロ・ジェズアルド、クルターグ・ジェルジュ、モーツァルト、シューベルト、シューマンの後期作品を集め、ブレンターノ四重奏団やマーク・パドモアと共にイギリス、イタリア、オランダ、さらに米国各地で演奏している。また、カーネギー・ホールでは後期の作風という考え方、及び2017年にKindleで発表した著作『Coda』に関連するマスタークラスを実施した[44]。
2018年、マールボロ・ミュージックはビスがバーモント州で開催されるマールボロ音楽祭の共同芸術監督(内田光子と共同)を引き受けることを発表した[45]。ビスはマールボロ音楽祭と長きにわたる関係性で結ばれており、ジュニア、シニアの参加者として12シーズンに参加している。
2019年9月から開始して2020年12月のベートーヴェン生誕250周年へ向け、シーズン全体をかけてベートーヴェンのピアノソナタに集中し、世界中で50を超えるリサイタルを開催した。この企画の中ではウィグモア・ホールとバークレーでのソナタ全曲演奏に加え、ワシントン、フィラデルフィア、シアトルでの複数コンサートのシリーズを開催、そしてローマ、ニューヨーク、シドニーでリサイタルを実施した。
2020年、ビスは米国公共ラジオ放送のタイニー・デスク・コンサーツで演奏を行った[46]。同年には『Unquiet: My Life with Beethoven』を発表[47]、これはAudibleの言葉と音楽シリーズの作品である。同作品は発売初週にAudibleの週間ランキングのトップ10入りを果たした[48] 。
2021年9月からは客員講師としてニューイングランド音楽院の教壇に立っている[49][50]。
『ニューヨーク・タイムズ』紙へはときおり「ゲスト・エッセイ」を寄稿している[51]。
私生活
ビスはフィラデルフィア自由図書館にある児童文学研究コレクションのキュレーターを務めるクリストファー・ビス=ブラウンと結婚した[52]。
受賞歴
- 1997年: ウルフ・トラップ、シャウス・デビュー・アーティスト賞
- 1999年: エイヴェリー・フィッシャー・キャリア助成金
- 2002年: リンカーン・センター、マーティン・E・シーガル賞
- 2002年: ギルモア・ヤング・アーティスト賞
- 2003年: ボルレッティ=ブイトーニ財団賞
- 2002年–2004年: BBCラジオ3、ニュージェネレーション・アーティスト・メンバー
- 2005年: レナード・バーンスタイン賞
ディスコグラフィ
- Beethoven/5 Vol. 5: Beethoven ‘Piano Concerto No. 3 in C Minor' | Caroline Shaw ‘Watermark’, Jonathan Biss, 2026
- Beethoven/5 Vol. 4: Beethoven ‘Piano Concerto No. 4 in G Major' | Salvatore Sciarrino ‘Il Sogno di Stradella’, Jonathan Biss, 2025
- Beethoven/5 Vol. 3: Beethoven ‘Piano Concerto No. 2 in B-flat Major, Op. 19' | Timo Andres ‘The Blind Banister’, Jonathan Biss, 2025
- Beethoven/5 Vol. 2: Beethoven ‘Piano Concerto No. 1 in C Major' | Sally Beamish ‘City Stanzas’, Jonathan Biss, 2024
- Beethoven/5 Vol. 1: Beethoven ‘Emperor’ Concerto | Brett Dean ‘A Winter’s Journey’, Jonathan Biss, 2024
- Complete Piano Sonatas, Jonathan Biss, 2020
- Beethoven: Piano Sonatas Vol. 9 - Nos. 7, 18, 32, Jonathan Biss, 2019
- Beethoven: Piano Sonatas Vol. 8 - Nos. 8 (Pathétique), 10, 22, 31, Jonathan Biss, 2019
- Beethoven: Piano Sonatas Vol. 7 - Nos. 2, 20, 17 (The Tempest), 30, Jonathan Biss, 2018
- Beethoven: Piano Sonatas Vol. 6 – Nos. 9, 13 & 29 (Hammerklavier), Jonathan Biss, 2017
- Beethoven: Piano Sonatas Vol. 5 – Nos. 3, 25, 27 and 28, Jonathan Biss, 2016
- Beethoven: Piano Sonatas Vol. 4 – Nos. 1, 6, 19 and 23 (Appassionata), Jonathan Biss, 2015
- Beethoven: Piano Sonatas Vol. 3 – Nos. 15 (Pastoral), 16 & 21 (Waldstein), Jonathan Biss, Onyx Classics, 2014[55]
- Beethoven: Piano Sonatas Vol. 2 – Nos. 4, 14 (Moonlight) & 24, (A Thérèse), Jonathan Biss, Onyx Classics, 2013[36]
- Schumann: Piano Quintet; Dvorak: Piano Quintet No.2, Jonathan Biss and Elias Quartet, Onyx Classics, 2012[41]
- Beethoven Sonatas Vol. 1 – Nos. 5, 11, 12 (Funeral March) & 26 (Les Adieux), Jonathan Biss, Onyx Classics, 2012 [56]
- Schubert: Piano Sonata in A Major D959; Piano Sonata in C Major 'Reliquie' D840; and two Kurtág Piano Miniatures, Jonathan Biss, Live From Wigmore Hall, WHLive0030, 2009[57]
- Mozart: Piano Concertos Nos. 21 & 22, Jonathan Biss and Orpheus Chamber Orchestra, EMI Classics, 2008[58]
- Beethoven: Piano Sonatas, Jonathan Biss, EMI Classics, 2007[59]
- Schumann Recital – Fantasie, Kreisleriana & Arabeske, Jonathan Biss, EMI Classics, 2007
- Beethoven, Schumann: Piano Works, Jonathan Biss, EMI Classics, 2004[60]
