スペクトロヘリオスコープ
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スペクトロヘリオスコープは、1868年の皆既日食の際にヘリウムの吸収線を発見したジャンサンがその原理を発想したもので、20世紀初めにムードン天文台でジャンサンの装置を改良して限定的にそれが実現され、「スペクトロヘリオスコープ」と呼ばれた[2][5][6]。実用的なスペクトロヘリオスコープの完成は、1924年頃にウィルソン山天文台のジョージ・ヘールが考案したものが登場したことによる[2][6]。ヘールが先に実用化していたスペクトロヘリオグラフは、写真乾板に太陽光を感光させ、太陽面の像を撮影する装置であったが、スペクトロヘリオスコープは乾板のかわりに接眼部を設け、太陽面の一部を眼視観測することで、太陽面の爆発現象やプロミネンス、プラージュの動きを観測できるようにしたものである[7][8][9]。
原理

スペクトロヘリオスコープの原理そのものは、スペクトロヘリオグラフと共通で、単純なものである[2]。天文観測用の分光器は天体望遠鏡の焦点面にスリットを置き、その細長いスリットの像を分光素子を用いて波長方向に分散させ、連続的な多色のスリット像の結合によってスペクトルを形成するが、スペクトルをそのまま観測するのではなく、結像位置にもう1つのスリットを置くことで、特定の波長での単色光による、天体のごく細いスリットで切り出した像があらわれる[2][6][10]。そこで、その2つのスリットを同調させて動かし、天体の面を走査することで、天体の2次元単色像が得られ、それを接眼レンズを通してみることで、眼視観測を行うものである[2][6]。
スペクトロヘリオスコープの観測では、主に水素のHα線が用いられる[7][10]。スペクトル強度と色の兼ね合い、プロミネンスやプラージュがよくみえる波長であることがその理由である[7]。
構造
スペクトロヘリオスコープはシーロスタットと対物レンズなどで構成される太陽望遠鏡の焦点面に、まず第1スリットを設置する[7][6][10]。第1スリットを通過したごく細い太陽光を、コリメータで平行光束にし、回折格子で分光し、生じたスペクトルをもう1つのコリメータで結像させる[7][6][10]。結像位置に第2スリットを設置し、第2スリットで特定の波長の光を選択して通過させ、それを接眼レンズでのぞくと、選択した波長の細い光(スリット像)がみえる[7][6][10]。第1スリットと第2スリットを連結し、完全に同期して高速で振動させ、第1スリット上の太陽像を走査することで、フィルム映画と同じ原理によって第1スリットの振動範囲にある太陽面の2次元像が接眼部に再現される[2][7][6][9]。
スリットを振動させるかわりに、第1スリットの前と第2スリットの後ろに角柱プリズム(アンダーソンプリズム)を設置し、2つのプリズムを同じ速さで回転させることで、プリズムで補える幅の太陽面像を観測できるようにしたスペクトロヘリオスコープもある[2][7]。プリズムが回転することで、透過光の屈折角が変化し、それに伴って第1スリットを通過する太陽面の部分が変化する。それを第2スリット後のプリズムによって補償し、2次元の像として視認できる[7][10][9]。
プリズムを回転させる方が、スリットを振動させるよりも構造的に安定で、ムラのない像を観測できるが、振動スリットにも振動を変化させることで、みえる太陽の範囲や明るさを容易に調節できる利点がある[7]。
眼視観測装置であるスペクトロヘリオスコープも、接眼レンズの代わりに写真乾板へ光を導入することで、太陽面の一部ではあるがスペクトロヘリオグラフとして使用することもできる[7][9]。
変形
スペクトロヘリオスコープは原理上、あまり構造を単純化できず、太陽像の導入に長い焦点距離が求められることから、他の観測装置と比べて時代とともに進歩できていない[11]。そのため、基本的な設計思想や実装は、20世紀前半の頃から大きく変わってはいない[11]。しかし、開発者によっては独自の工夫を凝らしたスペクトロヘリオスコープを製作している[11]。
例えば、アマチュア装置開発者で、1970年頃から多くのアマチュア天文家のスペクトロヘリオスコープ製作を支援してきた先駆者フレドリック・ヴェイオ(Fredrick N. Veio)は、ヘールの振動スリットのかわりに、等間隔に多数のスリットを刻んだ円盤を回転させる方式を開発した[11]。また、ヴェイオの設計を学んだレナード・ヒギンズ(Leonard Higgins)は、アンダーソンプリズムではなく、同期する首振り式平面鏡を第1スリットの前と第2スリットの後に設置するスペクトロヘリオスコープを製作した[11]。
