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ソーシャル・イノベーション

社会問題に対する革新的な解決法 From Wikipedia, the free encyclopedia

ソーシャル・イノベーションとは、社会問題に対する革新的な解決法。既存の解決法より効果的・効率的かつ持続可能であり、創出される価値が社会全体にもたらされるもののことである[1]。ソーシャルイノベーションを事業として起業すると社会起業家とよばれる[2]

概要

ソーシャル・イノベーションは日本語にすると社会変革となる。定義づけについては多々解釈があるが、「新しい社会的価値を創造するために必要とされる新しい社会的商品やサービスやその仕組みの開発、あるいは一般的な事業を活用して社会的課題に取り組む仕組みの開発である。 」[3]という定義がある一方、「定義付けることは困難である」[4]、「社会的ニーズ・課題への新規の解決策を創造し,実行するプロセス」[5]、「持続可能な経済,環境,社会の反映をもたらす 新しいビジネスモデル,市場ベースのメカニズムの導入」[6]など、定義はまちまちである。また、ソーシャル・イノベーションは社会起業家よりも広い範囲で定義されており、起業は定義に含まれていない。いずれの場合でも、社会を良い方向に変えることという定義は共通している。また、ソーシャルイノベーションの手段としてフューチャーセンターハッカソンも注目されている。[7][8] また、ソーシャルイノベーションに近い概念として交流型イノベータが内閣府経済社会総合研究所が提言している。

ソーシャル・イノベーションの教育と取り組み

教育においては、同志社大学がソーシャルイノベーションコース[9]慶應義塾大学が社会イノベータコースを設けたり[10]金沢工業大学 虎ノ門大学院がソーシャルイノベーションプログラムを設けたほか[11]長野県立大学がソーシャル・イノベーション創出センターを設けたほか[12], 摂南大学が2016年からソーシャルイノベーション副専攻課程をスタートさせている[13]。また、龍谷大学大学院(政策学研究科)、京都文教大学大学院(臨床心理学研究科)、琉球大学大学院(地域共創研究科)の3大学院は「大学連携型ソーシャル・イノベーション人材養成プログラム」を提供している[14]。その他に社会起業家育成とソーシャル・イノベーションを目的としたビジネススクール社会起業大学の設立[15]など教育環境は増えている。 また、東京都文京区ではソーシャル・イノベーションのプラットホームを設立している[16]

ソーシャルイノベーションの概念の広がり

ソーシャルイノベーションの概念は従来、NPOなどの社会起業家の間で使われてきたが、最近はフューチャーセンターハッカソンなどソーシャルビジネスからはじまった企業でない企業の間からも使われてきている。 2016年3月24日開催のICCカンファレンス TOKYO 2016での「ソーシャル・イノベーションのインパクト創出」では、NPOに限らずIT企業やマーケティング会社など多様な企業が集まり、ソーシャルイノベーションへの関心の高さが注目された。[17]

デザイン・芸術・音楽によるソーシャル・イノベーション

ソーシャル・イノベーションは、社会起業ビジネスモデルの革新に限らず、デザイン芸術音楽などの創造活動を通じて社会的課題の解決や新たな社会的価値の創出を目指す活動にも広がっている。こうした活動では、経済的価値だけでなく、人々の意識や価値観、社会のつながり、平和や環境などに変化をもたらすことが重視される。

世界的なCIデザイナー・総合芸術家の稲吉紘実は、デザインを企業や組織の視覚的な統合にとどまらず、社会そのものをより良い方向へ導くための手段として捉え、社会平和への貢献を目的とした活動を行っている。その活動は「ソーシャルデザイン」や「ソーシャルアート」といった領域にも及び、デザイン、芸術、音楽を横断して社会的課題に取り組むものである。

その活動の一つとして、ノーベル平和賞受賞者でグラミン銀行創立者のムハマド・ユヌス博士との協働が挙げられる。稲吉は、ユヌスが提唱するソーシャル・ビジネスの理念を象徴する「ユヌス・ソーシャル・ビジネス・マーク」をデザインした。[18] 2010年のSocial Business Dayでは、稲吉によってソーシャル・ビジネスのための「Social Mark」が発表され、このマークはソーシャル・ビジネスを象徴するとともに、新たなピースマークとしての意味も込められた。

これは、社会的理念を単に言葉で伝えるのではなく、デザインによって普遍的な象徴へと変換し、社会に共有可能な形にする試みである。ユヌスが社会問題を解決するための新しい経済の仕組みとしてソーシャル・ビジネスを提唱したのに対し、稲吉はその理念をデザインによって可視化し、社会に広げる役割を担った。ソーシャル・ビジネスは、社会的課題の解決と持続可能性を結びつける考え方として展開されている。

また、稲吉はデザインだけでなく、芸術と音楽を社会貢献の手段として位置づけている。その代表的な活動の一つが、1996年から構想された「LOVE EARTH LOVE CHILDREN WORLD ART & MUSIC AID [19]である。地球生命平和をテーマに、世界の人々を芸術と音楽によってつなぎ、支援へと結びつけることを目指した世界規模のプロジェクトであり、デザイン、芸術、音楽を社会・平和貢献と結びつける活動としてグローバルに展開されている。

稲吉の活動では、デザインを単なる問題解決の技術としてではなく、人間の意識や社会のあり方そのものに働きかける創造行為として位置づけている。また、芸術や音楽についても鑑賞を目的とするだけではなく、国境文化の違いを越えて人々を結びつけ、平和や社会貢献につなげる媒体として捉えている。

このように、ユヌスによるソーシャル・ビジネスの思想と、稲吉によるソーシャルデザイン、ソーシャルアート、さらに芸術と音楽による社会貢献・平和活動は、それぞれ異なる領域から社会的課題にアプローチするものである。これらは、ソーシャル・イノベーションを社会起業やビジネスモデルの革新だけに限定せず、デザイン、芸術、音楽によって人々の意識や価値観を変え、社会そのものに変化をもたらす創造活動へと拡張する実践の一例と考えることができる。


関連項目

脚注

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