ダイアログ (組織)
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ダイアログ(英語: Dialog)は、私的かつ招待制の会員組織であり、しばしばビルダーバーグ会議や世界経済フォーラムと比較される[1]。同組織はピーター・ティールとオーレン・ホフマンによって設立された[1]。共同設立者のティールはペイパルおよびパランティア・テクノロジーズの共同創業者であり、リバタリアンを自認する著名な政治献金者として知られる[2]。もう一人の共同設立者で会長を務めるホフマンは、携帯端末の位置情報を収集・販売するデータブローカーのセーフグラフ(SafeGraph)と、消費者データ経済における主要な供給企業の一つであるアイデンティティ解決企業ライブランプ(LiveRamp)の創業者である[3]。一般に公開されたウェブサイトや会員名簿を持たず、低い公的露出を保っており、経営者、選出公職者や学者を集める非公開の会合と評されている[1][4]。
| 設立 | 2006年 |
|---|---|
| 設立者 | ピーター・ティール、オーレン・ホフマン |
| 種類 | プライベート、招待制の会員組織 |
| 目的 | 経営者、選出公職者、学者のためのオフレコのフォーラム |
| 事務局長 | ラフィ・グリンバーグ |
2025年、ダイアログは将来のキャンパス建設のためワシントンD.C.近郊の土地を購入した[5]。
招待制の形式と公開情報の乏しさから、同組織はエリート主義であるとの批判や、陰謀論的な憶測を招いているとの指摘を受けている[4]。
活動
ダイアログは年に一度、原則として参加者を100名に限定したオフレコの合宿(リトリート)を開催している。過去の会合はカリフォルニア州のバカラのリゾート[6]、アリゾナ州のリッツ・カールトン・ダブマウンテン、イタリア・ヴェネツィアのサン・クレメンテ・パレスなどで行われた。これらの集まりはオフレコであり、政治的立場を超えた率直な議論を重視している[7]。話題はAI、医療、政治といったテーマから、介護、人間関係、メンタルヘルス、死後の世界といった個人的なテーマまで多岐にわたると報じられている[1]。
WIRED誌は、参加者を結びつけているのは肩書きや職業ではなく、「人工知能、長寿、そして近未来への共通の関心」であると報じている。同誌によれば、漏洩した内部のモデレーター向け手引きでは、上院議員や要人、富豪が居並ぶ場で簡潔な自己紹介を心がけ「ステータスの誇示」を避けるよう促されていた。参加者は登録記録上「アクティブ・メンバー」と「ゲスト」に区別されている[3]。
2026年のデータ漏洩
2026年6月、ダイアログの内部記録がオンライン上に露出していたことがWIRED (雑誌)によって報じられた。同組織のウェブサイト dialog.org のソースコード内に会員名簿が埋め込まれており、ページのソースを表示すれば誰でも閲覧できる状態だった[3]。この名簿はスイスのハクティビストであるマイア・アーソン・クライムー(maia arson crimew)によって最初に公表され、WIRED誌が内容を独自に検証した[3]。流出したコードからは、ダイアログに関係する著名人113名の氏名が判明したとされる[2][8]。
別途WIRED誌に提供された2026年のリトリート登録者リストには222名が記載され、各登録者の会員区分(「アクティブ・メンバー」「ゲスト」など)が記録されていた。同リトリートは8月12日から16日にかけてアイルランド・ダブリン近郊のパワーズコート・ホテルで開催予定とされる[3]。漏洩データには「核を取り戻せ」「第三次世界大戦をどう生き抜くか」「戦場の技術」といったオフレコのセッション計画も含まれていた[3]。登録フォームでは参加者の「政治的傾向」や「恋愛対象を探しているか」といった個人情報も収集されており、これらが流出した。ダイアログは dating.dialog.org という会員向けのマッチングアプリも運営している[3]。
『ハリウッド・リポーター』によれば、流出資料には今年のリトリートの議題一覧が含まれており、地政学とテクノロジーに重点が置かれていた。具体的には「核を取り戻せ」「偽情報とディープフェイク」「監視下の民主主義」「台湾とAI競争」といった政治的なテーマのほか、「幸福は金で買えるか」「あなたの性生活はどうか」といった個人的なテーマ、さらに「カルトを作る」「第三次世界大戦をどう乗り切るか」といったテーマも挙げられていた[9]。また、同組織には会員候補を審査しその影響力や資質に応じて評価(グレード)を付ける選考プロセスが存在することも判明した[9]。参加者向けの手引きでは、簡潔に話し、異論を述べ、「ステータスの誇示」を避けるよう促されていた[9]。
流出した記録には、2025年7月に就任した欧州連合軍最高司令官のアレクサス・グリンキェヴィチ(Alexus Grynkewich)が2021年以降ダイアログの会合に参加していたと記録されていたほか、トランプ政権の現職高官、2名の米上院議員、ペイパルマフィアの6名などが含まれていた[3]。なお、報道で名前を挙げられた人物はいずれもWIRED誌の取材に応じていない[3]。
アメリカ合衆国司法省が公開したジェフリー・エプスタイン関連文書にも、ダイアログへの言及が見られた。具体的には、2014年のリトリートへの招待状が2012年にエプスタインに転送されていたこと、および2016年のメールでティールが「秘密結社」の構想を気に入っていたと記されていたことである。ただし出典は、これらの文書がエプスタインの出席・会員・ティールとの関係を示すものではなく、また「秘密結社」への言及がダイアログを指すかどうかも明示されていないとしている[10][8]。別の文書では、エプスタインやその周辺人物がダイアログを冷ややかに評していたことがうかがえる。2012年のメールで投資家のイアン・オズボーンはエプスタインに対し、ティール自身がイベントに出席していないと不満を述べていたほか、エプスタインがリサ・ランドールに参加を勧めた際も、その理由はイベントの内容ではなく開催地(ユタ州サンダンス)の良さであったとされる[11]。
漏洩後、ダイアログに関係したとされるハリウッドやエンターテインメント界の人物も報じられた。『ハリウッド・リポーター』は、俳優のジョシュ・ブローリン、ソフィア・ブッシュ、音楽プロデューサーのスクーター・ブラウン、作曲家のベンジ・パセックらの名前を挙げた。ブローリンの代理人は同誌に対し、本人が「自分が何に巻き込まれたのか知りたがっている」と述べたと伝えられている[12]。
俳優のジョセフ・ゴードン=レヴィットは、報道を受けてInstagram上で声明を発表し、2回のダイアログの会合に参加したことを認めた一方、ティール本人と会ったことも、その関係者とやり取りしたこともないと強調した。彼は、自分の経験は「単一のイデオロギーの集まりではなかった」「多様な人々がいた」と述べ、テクノロジーやAIをめぐる未来に良い影響を与えるため、立場の異なる相手とも関係を築き、互いの視点を理解しようとしてきたと説明した[12]。
会員
報じられているダイアログの会員には、リーマ・ビント・バンダル・アール・サウード、スコット・ベッセント、コーリー・ブッカー、ソフィア・ブッシュ、テッド・クルーズ、トゥルシー・ギャバード、ロリ・ゴットリーブ、リチャード・ハース、ジョナサン・ハイト、オーレン・ホフマン、リード・ホフマン、ロバート・ハー、カヤ・カッラス、ガルリ・カスパロフ、ヘンリー・クラビス、ジャレッド・クシュナー、ウェス・ムーア、イーロン・マスク、グローバー・ノーキスト、チャマス・パリハピティヤ、ジャレッド・ポリス、エリック・シュミット、アン=マリー・スローター、ローレンス・サマーズ、ピーター・ティール、リック・ウォレンらがいる[1]。
2026年6月のデータ漏洩を受けて報じられた関係者には、上記に加えて、スタンフォード大学学長のジョナサン・レヴィン、ジャーナリストのエズラ・クライン、作家・ポッドキャストホストのサム・ハリス、ジョー・ロンズデール、元アメリカ合衆国住宅都市開発長官のフリアン・カストロ、元パデュー大学学長で元インディアナ州知事のミッチ・ダニエルズ、雑誌『ジ・アトランティック』CEOのニコラス・トンプソン、YouTube CEOのニール・モーハンらが含まれるとされる[8][3]。『ハリウッド・リポーター』はこのほか、OpenAI社長のグレッグ・ブロックマン、Xbox部門社長のサラ・ボンド、Anthropicの渉外責任者マイケル・セリット、長寿研究で知られる起業家のブライアン・ジョンソン (起業家)らの名も挙げている[9]。このほか、流出した登録者リストには元アメリカ陸軍大将のスタンリー・マクリスタルや、駐米サウジアラビア大使のリーマ・ビント・バンダル・アール・サウードらの名もあったと報じられている[13]。
一方、コロラド州知事のジャレッド・ポリスの広報担当者は、ポリスがこの組織の会員であることを否定した。担当者は、ポリスがなぜ自分の名前が同組織に結び付けられたりウェブサイトに掲載されたりしたのか分からず、同組織が主催する催しに出席した記憶もなく、これまで同組織について聞いたこともないと述べたとされる[9]。同様に、流出した登録者リストに名前があったとされるEU外務・安全保障政策上級代表のカヤ・カッラスについても、欧州委員会は彼女が同組織の会員ではなく、8月のリトリートに参加する予定もないと否定した。彼女がそのリトリートに招待されていたかどうかは不明である[13]。
WIRED誌はまた、公開されていたディレクトリの113名には含まれていなかったが、流出した登録リストに名前があった人物として、連邦準備制度元理事で現在イングランド銀行金融政策委員会に在籍するランディ・クロズナー、麻薬取締局の元法務顧問兼首席補佐官代行のハリー・ホフマン、名誉毀損防止同盟CEOのジョナサン・グリーンブラット、ケイトー研究所所長のピーター・ゲトラー、チャールズ・コーク財団事務局長のライアン・スタワーズ、シカゴ大学のノーベル経済学賞受賞者ロジャー・マイヤーソンらを挙げた[3]。さらに、GoogleおよびGoogle DeepMindの幹部が複数名(フロンティアAI部門の渉外責任者トム・ルーら)含まれていたほか、唯一の現役ジャーナリストとして『ワシントン・ポスト』の国家安全保障担当記者スアド・メケネットの名もあったとされる[3]。
『サンアントニオ・カレント』誌は、WIRED誌が名前を伏せた「2人目の上院議員」をテキサス州選出のテッド・クルーズであると特定したと報じた。同紙は、商務・科学・運輸委員会の委員長として連邦取引委員会とそのデータプライバシー権限を監督する立場にあるクルーズが、自らが規制を担う業界の幹部らと並んでリストに掲載されていたことを指摘した。同様に、財務省が金融データのプライバシー規則を所管する立場にあるアメリカ合衆国財務長官のスコット・ベッセント、製品ソフトウェアが移民/関税執行局や国防総省と統合されているパランティアの共同創業者ジョー・ロンズデール、陸軍長官のダン・ドリスコル、パランティアが契約する諸機関を監督する下院情報委員会の野党側筆頭委員ジム・ハイムズらの名もリストにあったとして、規制する側と規制される側が同席している構図に言及している[14]。