チロリ科は、多毛類の中でも独特の体構造をもつグループで、体は細長い円筒形をしており、多くの環節に分かれている。体色は一般的に赤みを帯び、体内の血液や体液が透けて見えることによって鮮やかな紅色を呈するが、種によっては淡黄色や白色を示すこともある。血管を欠き、代わりに血球を含む体腔液によって酸素を運ぶ点も特徴的である[4]。
最大の特徴は吻(口吻)と呼ばれる器官で、必要に応じて長く反転させることができる。吻の先端には4本の毒牙が備わっており、小型の無脊椎動物を捕食するときに用いられる。この吻は、砂泥中を掘り進む際にも役立ち、頭部を固定して体を前方へと引き込むことで効率的に移動する。こうした行動から、英語では「bloodworm」や「beak-thrower worm」とも呼ばれている[5]。
生態的には、潮間帯から水深数百メートルの砂泥底にかけて広く分布し、砂の中に潜って生活する。チロリ科の一部は互いに連結した小さな管状のトンネルを掘り、その内部を移動しながら獲物を待ち受けるとされる。
日本では、古くから釣り餌として利用されてきた。市販される「チロリ」は一般に体が赤く、夜間には発光する性質があるため、特に夜釣りでの集魚効果が高いとされる。青イソメやイシゴカイに比べると価格はやや高いが、匂いが強く魚を寄せやすい点や、柔らかく魚が食いつきやすい点から重宝されている。キス、チヌ、タイなど幅広い魚種に有効であり、春から秋にかけて流通することが多い[6]。
このようにチロリ科は、学術的には独特の構造と捕食行動をもつ多毛類として注目されると同時に、釣り文化の中でも実用的に利用される存在となっている。