ドッグフード

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ドッグフード

ドッグフード(英: dog food)は、イヌを対象としたペットフードであり、加工食品である。総合栄養食、間食(おやつ)、療法食などに分類され、総合栄養食はそれ単体で健康を維持できるように設計されている[1]

歴史

ドッグフードは、犬の年齢、体重、活動量、健康状態に応じて設計されており、AAFCO(米国飼料検査官協会)やFEDIAF(欧州ペットフード工業連合会)などの基準に基づき、総合栄養食においては、必要な栄養素が含まれている。日本では農林水産省の「ペットフードの表示に関する公正競争規約」や「ペットフード安全法」によって安全性や表示が規制されている。日本で市販されているドッグフードの多くは海外メーカーの製品である[2]

19世紀後半、航海の保存食だった乾パンの残りを犬が食べていたことから、在アメリカ人のジェームス・スプラット(James Spratt)が1860年頃に最初の商業的ドッグフードを考案した[3]第一次世界大戦後のアメリカ合衆国では軍用犬向けだった馬肉缶詰がペットフードとして使われた[3]第二次世界大戦後、連合国軍占領下の日本にペットフードが持ち込まれ、ビタミンなど栄養を補ったビタワン(1960年発売)が国産化第一号となった[3]

主な種類

全年齢向けの他、パピー犬、成犬、高齢犬、超高齢犬などのライフステージ別に栄養価が設計されている。ベビー犬向けのミルクパウダーや離乳食、高齢犬向けの介護食などもある[3]。また、機能別フードや犬種別に特化したフードもある。医療用・療法食では、低脂肪・低分子プロテイン・pHコントロール・食物繊維強化など、疾患ごとに目的が細分化されている[4]

フードの水分含有量や製法別に分類されている。

  • ドライフード - 含水率10%以下[1]。保存性が高く、日本では一般的。
  • ウェットフード - 含水率75%前後[1]。嗜好性が高く、水分摂取を助ける。真空パック入りが多い。グルテンや蛋白ゲルが含まれることがある。これは、まるで本物の肉片であるかのように見せかけることを目的として人工的に添加される[5]
  • セミモイストフード - 含水率25〜35%[1]。やわらかく食べやすい。嗜好性は高いが多量の添加物が含まれる[6]
  • 手作り食・生食 - 調理済みまたは生の肉・野菜を主体とした非加工食。栄養バランスの確保が課題となる。
  • 冷凍タイプフリーズドライタイプ:伝統的なドッグフードで行われる加工処理や保存料・酸化防止剤などの添加を避けるのが目的である。このタイプでは、加工処理による組成栄養分の破壊を抑えられる。加工処理や添加物を使用しないと保存期間が短くなってしまうため、冷凍したり、フリーズドライにしたりするわけである。
  • 脱水タイプ:空気乾燥により、細菌が増殖できないレベルまで水分活性を下げるのが目的である。見た目はドライタイプと非常に似ているが、湯をかけることで本来の形に戻せる点が異なる。
  • 冷蔵タイプ低温殺菌により新鮮な材料の鮮度を保つのが目的である。軽く調理してから真空パックに入れたのち冷蔵保存する。このタイプは低温で保存しないと腐敗しやすい。保存期間も開封前で2ヶ月から4ヶ月といったところである[7]

原材料

主な原材料は、動物性たんぱく質(鶏肉、魚、牛肉など)、穀類(トウモロコシ、米、小麦)、油脂類、食物繊維、ビタミン、ミネラルなどである。 アレルギーや消化吸収を考慮し、近年では「グレインフリー(穀物不使用)」や「単一たんぱく源」などの配慮型フードも登場している。

製品の価格帯やブランドによって多岐にわたり、低価格帯では、畜産副産物穀物トウモロコシ小麦など)を主な原材料として使用する傾向があるが、これらは犬の栄養バランスを考慮して配合されており、必ずしも有害とは限らない。ただし、一部の犬では穀物がアレルギーの原因となる場合がある[8]が、最も多いアレルゲンは動物性タンパク質であり、国際的なレビュー論文によれば、牛肉(34%)、乳製品(17%)、鶏肉(15%)などが上位を占める傾向にある[9]

高級高価格帯では、放し飼いの地鶏抗生物質やホルモン剤不使用の家畜、オーガニックの果物・野菜、各種必須ビタミン・ミネラル、DHAなどの必須脂肪酸を配合し、穀物を最小限または不使用とした商品が増えている[10]

原材料表は、規制により調理前の重量順に列挙されなければならないため、消費者はこれを参考に製品を選択できる[11]

アメリカ飼料検査官協会(AAFCO)のガイドラインによると、ペットフードに含まれる畜産副産物は、適切に処理されたものであれば使用可能だが、病気で死亡した動物の使用は制限されており、安楽死させた動物の使用は米国食品医薬品局(FDA)のガイドラインで明確に禁止されている[12]。牛海綿状脳症(BSE)のリスク部位(脳や脊髄)は、2008年以降すべての動物飼料で禁止されている[13]。ただし、過去に安楽死(ペンタバルビタール)が検出された事例があり、業界では監視が強化されている[14]

2023年にAAFCOは消費者に分かりやすいペットフードのラベル表示ガイドラインを承認し、栄養情報の標準化と成分リストの体系化を推進している[15]。これにより、重金属(アルミニウム、鉛)やカビ毒(アフラトキシン)などの汚染リスクに対する監視が強化され、2018年以降のリコール事例(例:サルモネラ菌や重金属検出)に対応している[16]

日本国内では、高品質な国産ドッグフードが増加しているが、海外産原材料を使用し国内で最終加工した場合でも「国産」と表記可能であるため、100%国産食材を使用した製品は限定的である。一方、農林業被害軽減のため駆除された野生動物(エゾシカなど)のうち、人間向けジビエ以外をドッグフードとして加工・販売する取り組みが進み、持続可能性の観点から注目されている[17]

また、日本においてはペットフード公正取引協議会の定める分析試験および栄養基準は、AAFCOの基準を反映したものとなっており、総合栄養食の表示や品質管理に活用されている[18][19]

消費者の意識向上により、ヒューマングレード(人間食レベルの品質)の原材料を使用したフードや、人工香料や着色料の未使用、人工保存料・合成酸化防止剤(BHA、BHT、エトキシキン等)の使用を避け、天然代替品(ビタミンC/E)を採用するブランドが増加している。ただし、豆類多用のグレインフリー製品は2018年以降のFDA調査で心臓病(拡張型心筋症、DCM)との関連が指摘されている[20]

製造方法

多くのドッグフードは、原材料を粉砕・混合し、押し出し成形(エクストルージョン)で高温短時間で加熱処理し、デンプンの糊化や殺菌後、冷却乾燥させて作られる。脂質や風味成分を付与する場合、成形後にコーティング(スプレー)される。

ウェットタイプは加圧殺菌や缶詰・パウチ包装が一般的である。

生食ドッグフード

生食 (ペットフード)(Raw feeding)は、野生のイヌ科動物の食事に近い形を目指す食事法で、加熱を行わずに生肉や内臓、骨などを与えるものである。 この考え方は、1993年にオーストラリアの獣医師イアン・ビリングハーストが著書『Give Your Dog a Bone』で提唱したBARF理論(Biologically Appropriate Raw Food)により広まった[21]

支持者は加工による栄養損失を防ぎ、自然本来の食事が健康維持に有利と主張する一方、科学的根拠は限定的である。アメリカ食品医薬品局(FDA)は、生食に関して「食中毒リスクを伴う」として加熱処理を推奨しており、与える場合は衛生管理の徹底を求めている[22]

近年では、生肉を低温殺菌または急速冷凍した「フリーズドライ生食」など、安全性を高めた製品も登場している。

法規制

日本では2009年に「ペットフード安全法」が施行され、輸入・製造・販売業者に対し安全基準や表示義務が課されている。 また、業界団体による自主基準として「ペットフード公正取引協議会」により、成分表示や原産国表示のルールが定められている。

健康と安全性

関連項目

脚注

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