ドループ速度制御

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ドループ速度制御(ドループそくどせいぎょ、: Droop speed control)は、交流発電機で用いられる制御方式であり、系統周波数が上昇するにつれて発電機の出力を減少させるものである。系統連系において、電力網に接続された同期発電機を駆動する原動機ガバナの速度制御方法として一般的に用いられる。これは、系統周波数に応じて原動機が生産する電力の割合を制御することで機能する。ドループ速度制御では、系統が最大動作周波数で運転されているときに原動機の出力はゼロに絞られ、最小動作周波数のときには出力が100%に設定され、その他の周波数ではその中間の値をとる。

この制御方式により、複数の同期発電機による並列運転が可能となる。同じドループ特性を持つ発電機間では、それぞれの定格出力に比例して負荷が自動的に配分される。

実際の運用では、大規模電力網におけるドループ曲線は必ずしも線形や同一ではなく、運用者によって調整される。これにより、負荷に応じた発電比率の変更が可能となる。例えば、ベースロード発電機は、需要が低い時間帯でも高い出力割合を維持するよう設定される。電力系統の安定性を維持するためには、動作周波数の範囲内において、電力出力が周波数の単調減少関数(周波数が下がれば出力が上がる関係)である必要がある。

また、ドループ速度制御は系統蓄電システムにも応用可能である。この場合、周波数が平均より高いときは系統からエネルギーを取り込み(充電)、低いときはエネルギーを供給(放電)することで系統を安定化させる。

ドループ率の計算例

同期発電機の周波数は、以下の式で表される。

ここで、

  • :周波数 (Hz)
  • :極数
  • :発電機の回転速度 (rpm)

同期発電機の周波数 は、回転速度 に正比例する。大規模な電力網に複数の同期発電機が並列接続されている場合、系統全体の慣性が極めて大きいため、個々の発電機の出力変動にかかわらず、周波数は系統によって一義的に決定される。系統に接続された全ての発電機は電気的に同期しており、極数 に応じたそれぞれの回転速度で運転される。

ドループ制御では、実際の回転速度に対する比率として「速度基準値(セットポイント)」を設定する。通常、発電機が無負荷から全負荷へと移行するにつれ、原動機の実際の速度は低下(ドループ)する傾向にある。この方式で出力を増加させるには、原動機の速度基準値を引き上げる。実際の速度は系統周波数によって固定されているため、基準値と実速度の「差(偏差)」が生じる。制御装置はこの偏差を利用して、原動機への作動流体(燃料、蒸気など)の流量を増やし、出力を増大させる。出力を減少させる場合はその逆の操作を行う。 このように、原動機の実際の速度が基準値に対して「垂下(ドループ)」することを許容し、その差分を制御量とするため、この名称がついている。

例えば、定格 3000 rpm のタービンにおいて、無負荷からベースロード(全負荷)まで負荷が増大した際に、機械速度が 3000 rpm から 2880 rpm まで低下するように設定されている場合、ドループ率は以下の通りとなる。

この条件下では、速度基準値が104%であれば、実際の速度(100%)との間に4%の偏差が生じ、定格出力(100%)が得られる。ドループ設定が4%のユニットでは、速度基準値を1%変化させるごとに、出力は定格の25%変化する計算になる。

系統周波数が固定されている以上、速度基準値を上げれば偏差が増大し、燃料流量が増えて出力が上がる。これは「純比例制御」の一種である。系統全体が過負荷になり周波数が低下すると、全てのユニットで速度偏差が増大するため、各原動機が自動的に出力を増加させて周波数の維持に寄与する。生産される電力の量は、実際のタービン速度と速度基準値の間の誤差に厳密に比例する。

同じドループ特性を持つ複数の機械が同期している場合、各機械はその定格容量に比例して負荷を分担することが数学的に証明されている。[1]

制御式(GE製ガスタービンの例)

GE設計の重構造形ガスタービンにおける燃料指令値(FSRN)の算出は、以下の直線の方程式($y = mx + b$)に基づいている。

ここで、

  • :燃料ストローク基準(ガスタービンへの供給燃料)(Fuel Stroke Reference)
  • :タービン速度基準(Turbine Speed Reference)
  • :実際のタービン速度(Actual Turbine Speed)
  • :制御定数

系統に接続された、等しいドループ設定(%)を持つ複数の同期発電機は、系統負荷の変化をそれぞれのベースロードの比率に応じて分担する。

北米の電力網では、安定運用のために通常4%または5%の速度ドループが採用されている[2] [要出典] 。5%ドループの設定では、実速度が100%のとき、速度基準値を105%に設定することで全負荷運転となる。


通常、系統に接続された回転体の巨大な慣性により、急激な速度変化は抑制される[3]。出力の微調整は、遠心ガバナ英語版のバネ圧調整やエンジンコントロールユニット(ECU)や電子ガバナの設定変更により、ドループ曲線を上下にシフトさせることで行われる。系統に接続される全てのユニットが、外部通信を介さずとも瞬時の周波数変化に協調して反応するためには、各ユニットが適切なドループ設定を有している必要がある[4]

米国の電力網。500以上の事業者が運営する約30万kmの送電線で構成される。

同期発電機の並列運転によって生じる慣性に次いで、[5] 周波数速度ドループは、個々の発電所の出力 (kW) 制御における主要な瞬時パラメータである。[6]

アイソクロナス制御との比較

ガバナの制御方式には、ドループ速度制御の他にアイソクロナス制御: Isochronous control)がある。

  • アイソクロナス制御:負荷変動に関わらず、周波数を常に一定に維持する方式。単独運転(離島や非常用電源など)に適している。
  • ドループ制御:負荷に応じて回転速度を変化させる方式である。並列運転を行う場合には、ドループ特性の使用が不可欠である。

並列運転において速度変動率が極めて小さい(アイソクロナスに近い)発電機が混在すると、わずかな負荷変動に対してその発電機の負荷分担が大きく変動し、適正な配分ができず不安定な状態になるためである。

関連項目

脚注

参考文献

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