ナカジマカツ
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1954年、大阪府堺市に生まれる。1973年、同志社大学工学部に入学し、在学中は実験のかたわら山岳同好会に所属して京都北山での歩荷や北アルプスでの登山などを行っていた[4]。1977年に同大学を卒業後、上京し、広告・デザイン分野に進む。1981年、日本デザインセンターに入社。1988年、広告制作プロダクションである株式会社アイザックを設立。国際的なグラフィックデザイン賞を受賞するなど、広告業界で約30年間アートディレクターとして活動した[4][5]。
2004年9月1日、長野県軽井沢滞在中に浅間山が噴火した。大自然の雄大な力を目の当たりにして思わずボールペンで落書きしたことをきっかけに、絵画制作を開始した[4]。
2008年以降、国内外の公募展で受賞を重ね、白日会および日展を中心に作品を発表する。2010年代には国際ARCサロンコンペティションで複数回入賞。2018年には同展でウィリアム・ブーグロー賞を受賞した[6]。この賞は19世紀フランスアカデミズムを代表する画家ウィリアム・アドルフ・ブーグローの名を冠した賞であり、ARC会長フレッド・ロスは、ナカジマの作品「森の女(Woman in the Forest)」を高く評価した[7]。同年は3700点以上の応募作の中から選出されたとされる[8]。2019年には日本人として初めてARCリビングマスターに登録された[2][3]。2020年代には美術館を含む個展を開催するなど[9]、写実絵画を軸に活動を続けている[4]。
人物
子どものころは、仁徳天皇陵(現・大山古墳)周辺の野山を日常的な遊び場としていた。ファーブルの『昆虫記』を愛読し、昆虫への強い関心を示すなど、自然と密接に関わりながら観察眼を培った。大学時代には山岳活動に取り組み、アートディレクターとして活動していた時期にはフライフィッシングに傾倒した[4]。北米への釣行も経験し、昆虫学への関心と知識を深めたほか、フライフィッシング専門誌にエッセイを寄稿している[10]。
こうした自然との継続的な関わりや観察を通じて、人知では計り知れない「別の世界」の存在を感じてきたと述べており、その感覚は絵画制作にも影響を与えていると語っている[4]。
デザインの仕事から身を引き画家を志すと、水彩による個展を1度開催した後[11]、油彩制作に取り組み始めた。油彩への移行については、絵具の扱いに違和感がなく、ずっと昔から描いていたような不思議な感覚に襲われたと語っている[5]。都内のアートスクールに約1年間通いながら、集中的に制作を行い、その期間に10メートル巻きのキャンバスを2本使い切ったとされる[4]。
作風

背景に金箔を用いた写実的な絵画を特徴とする。人物画では女性像を主なモチーフとし、異世界との境界のような空間を歪な金箔の扱いで造形するとされる[12]。油彩による精緻な写実表現と金箔という異質な素材を併用することで、抽象的な背景と具象的な人物の境界を意図的に調整し、独自の空間性を生み出している[13]。
こうした表現については、海外の美術批評家からも、日本の伝統的な絵画技法と西洋絵画の影響を併せ持ち、伝統と現代性の均衡を保っていると指摘されている。精緻な技術性と抑制された詩的感性が共存する独自の視覚言語を形成しており、人物画においては、繊細な色彩感覚、光の扱い、静謐で内省的な雰囲気が特徴とされる[14]。
風景画では名所性を避け、人気のない自然そのものを克明に描写する点に特色がある[4]。
主な受賞・選出
広告デザイン
- 1986年:第11回ブルノ国際グラフィック・デザイン・ビエンナーレ〈チェコスロバキア〉銀賞[15]
絵画
- 2008年:第2回 芸術センター記念絵画公募展 銀賞
- 2008年:第4回 世界絵画大賞展 松田賞
- 2008年:第84回 白日会展 初出品入選
- 2011年:第43回 日展 初出品入選
- 2013年:損保ジャパン美術賞FACE展 セレクション
- 2014年:改組 新 第1回日展 特選[16][17]
- 2015年:第11回 国際ARCサロンコンペティション〈USA〉人物画部門 第3位、 人物画部門 佳作賞、風景画部門 佳作賞[18][19]。
- 2016年:第92回 白日会展 内閣総理大臣賞[20]
- 2017年:第93回 白日会展 損保ジャパン日本興亜美術財団賞[21]
- 2017年:改組 新 第4回日展 特選[22]
- 2017年:第12回 国際ARCサロンコンペティション〈USA〉人物画部門 佳作賞、風景画部門 佳作賞[23]
- 2017年:第4回 国際モッドポートレイトコンペ〈スペイン〉 世界50選抜展出品
- 2018年:第13回 国際ARCサロンコンペティション〈USA〉 ウィリアム・ブーグロー賞[6][7][19]
- 2018年:Artelibre Arte y Libertad XIII 年鑑表紙セレクション〈スペイン〉[24]
- 2019年:ARCリビングマスター登録[2]
- 2020年:第14回 国際ARCサロンコンペティション〈USA〉人物画部門 佳作賞[25]
- 2023年:Mimesis展〈スペイン・サラゴザ IAACC Pablo Serrano美術館、バルセロナ MEAM美術館〉世界62選抜展出品[26]
- 2025年:国際モッドポートレイトコンペ〈スペイン〉審査員[14]
- 2025年:第17回 国際ARCサロンコンペティション〈USA〉 Sheng Xinyu Art Award[27]
- 2026年:国際モッドポートレイトコンペ〈スペイン〉審査員
主要な個展・国際展
代表作
以下は、制作年代や発表歴を踏まえ、作風の変遷を示す代表作品の一部である。
I 人物画(Figurative)―写実と金箔背景
烏瓜の日(The Red Gourd of the Day, 2013)
金箔を用いた作風への転換点になった作品。国際ARCサロンコンペティションに出品された[18]。ARC買上所蔵。
化身(Incarnation, 2013)
金箔を背景に和服姿の人物とカラスを描いた作品。国際ARCサロンコンペティション人物画部門3席[18]。ARC買上所蔵。
真贋の扉(Forest of Authenticity, 2014)
金箔を背景に水晶の玉を持つ女性像を描いた作品。改組 新 第1回日展において特選を受賞[16] [17]。
惑う森(Forest of Hesitation, 2016)
金箔を背景に苔むす巨木と女性像を描いた作品。第92回白日会展で内閣総理大臣賞を受賞[20]。
樹海(Jukai, 2017)
金箔を背景に樹海の大木と着物姿の女性を描いた作品。改組 新 第4回日展において特選を受賞[22]。
明日への花束(Bouquet to Tomorrow, 2016)
花束を胸に抱く人物像を描いた油彩作品。国際ARCサロンコンペティションで高評価。国内企業本社ホールに常設展示[25][24]。
森の女(Woman in the Forest, 2017)
森に佇む色打掛姿の女性像。第93回 白日会展において損保ジャパン日本興亜美術財団賞[21]。国際ARCサロンコンペティションでウィリアム・ブーグロー賞を受賞[6][7]。ARC買上所蔵。
ストイック(Stoic, 2019)
金箔を背景に現代女性像を描いた縦長キャンバスの作品。
II 風景画(Landscape)―自然の描写
潮騒(Sea Roar, 2013)
幕張の浜を描いた風景画連作の1点。国際ARCサロンコンペティション風景画部門で佳作を受賞[18]。
影の流れ―軽井沢・湯川(Stream of the Shadow, 2016)
繰り返し主題とされる軽井沢周辺の水辺風景の一作で、流れゆく水の変化を克明に描写している。国際ARCサロンコンペティション風景画部門で高い評価を受けた[23]。
もののけの森―白駒池(MONONOKE Forest, 2020)
白駒池周辺の森を描いた風景画で、名所性を排し、自然そのものへの視線を前面に出した作品。
III 近作―表現の深化
鏡の国―パンデミック(Looking Glass World – Pandemic, 2020)
新型コロナウイルス感染症流行期に制作された人物画。国際ARCサロンコンペティション人物画部門で佳作を受賞。
羽化(Emerger, 2022)
金箔を背景に俯瞰的な視点から女性像を描いた作品。Mimesis展(スペイン)で展示された[26]。
赤い櫛(Red Comb, 2022)
金箔を背景に樹木に包まれる朱色の着物姿の女性像を描いた作品。菱形キャンバスを用いている[28]。
赤い糸(Red String, 2023)
二人の女性が赤い糸を媒介にして交錯する非現実的な空間を描いた。国際ARCサロンコンペティション受賞作[27]。
鵜匠の恋(Cormorant Fisher’s Love, 2024)
足元に集まる表情の違う鵜たちを操る鵜匠のような着物姿の女性像を描いた作品。日展で発表された[29]。
Moths―蛾(Moths, 2025)
金箔と写実表現を用いた人物画。近年の主題を象徴する作品。ギャラリー日比谷での個展で発表された。
月の女神―オオミズアオ(Moon Goddess, 2025)
着物姿の女性を主題とし、モチーフの深化を示す近作。2025年の個展で発表された。