ニューカレドニアの生物多様性
From Wikipedia, the free encyclopedia

ニューカレドニアの生物多様性(ニューカレドニアのせいぶつたようせい)では、ニューカレドニア島とその周辺における生物多様性について述べる。
太平洋に浮かぶ大きな島であるニューカレドニア島(グランドテール島)とその周辺の生物多様性は、世界的に見ても最も重要なものの一つと認識されている。この島々は、多くの独自の植物、昆虫、爬虫類、鳥類などと一体になり、高レベルの固有性を備えている。そこには在来の両生類は存在しておらず、コウモリを除けば在来の哺乳類もいない。 ニューカレドニアの生物種には人類の到来によって失われたものもあるが、1500年以降に絶滅した種はないと考えられている。しかし現在、こうした独特の生物多様性は、外来種、森林伐採、火事、農業、都市開発、ニッケル採掘などによって脅かされている。
南太平洋上の多くの島々と異なり、ニューカレドニア島はゴンドワナ大陸の名残(ジーランディアの一部)であって、火山活動に由来する島ではない。超大陸が分裂した時にオーストラリアやニュージーランドと分かれたが、前者と分かれたのは白亜紀末期、後者とは中新世中期と推測されている。このことがほぼ孤立した環境での長期にわたる進化に繋がった。
ニューカレドニアの動物相や植物相には、オーストラリアや他の島嶼から海岸に辿り付いた種もないわけではないが、貴重な生物種についてはゴンドワナ大陸から分かれた際に島々にいた生物種を先祖としている。原始的な植物相の長い孤立は、種だけでなく属や科についても、ここ以外には見られないような独自な進化を遂げさせた。恐竜たちのいた時代以降、大陸移動の影響でニューカレドニアは北に移動している。地理学者たちの中には、何度か一定期間、水中に没していた時期があると主張している者もいる(動物相から見ても両生類がいない)が、植物学者は、その場合でも海面上にあった地域が存在していたに違いなく、そういう場所がゴンドワナ以来の植物種にとっての避難所として機能していたと主張している。
そうした理由によって、今日でもなお、ニューカレドニアはゴンドワナの植物相と深く結び付いている植生が保存されているのであり、古代超大陸の自然誌を覗き見ることのできる素晴らしい窓として機能している。
しかし、ニューカレドニアの孤立は絶対的なものではなかった。氷期の海面の下降によって、近隣の陸地、つまりソロモン諸島、バヌアツ、オーストラリアなどと地続きになることもあったため、生物種の出入りが容易だった時期もあったのである。そうして、ニューカレドニアに新たな種が入り込んだり、逆にゴンドワナ起源の生物種が東方の島々に進出する機会を得たりしていたのである。
ニューカレドニアの生物多様性の諸要素
植物相の多様性
ニューカレドニアには約3400種の維管束植物(種子植物とシダ類)が知られ、種の固有率は、75%に達する。これは世界各地の植生と比較するとハワイの89%、ニュージ-ランド82-89%についで3番目に高い値である。さらに種だけでなく、3つの科、62から91属が固有である[1][2]。
ニューカレドニアの海べりには高さ50mにもなるナンヨウスギ科の1種Araucaria columnarisが林立する独特の景観が発達する[2]。現生のナンヨウスギ属20種のうち14種がニューカレドニアに分布し、そのすべてが固有種である。またマキ科の固有種Parasitaxus ustaは針葉樹の中で唯一の寄生植物として知られる[2]。
動物相の多様性
ニューカレドニアの動物相の多様性が持つ特色は、多くの島々、とくにニュージーランドのそれに類似している。もともと、コウモリを除く哺乳類と両生類は棲息しておらず、脊椎動物の動物相で支配的なのは、爬虫類と鳥類である。人類の到達以前に大型の鳥や爬虫類がこの島々で進化し、絶滅したことが、洞窟で発見された化石から明らかになっている。かつてはメンフクロウの仲間(New Caledonian barn owl)や、二種のタカ科の鳥、ツカツクリの仲間(pile-builder megapode)、Sylviornis neocaledoniaeとして知られる高さ1.6mほどもある大きな飛べない鳥などが生息していたのである[3]。島には陸棲の巨大なカメであるメイオラニアも棲息していたが、このカメは今日見られる他のカメと異なり、棍棒状の尻尾と頭から突き出た突起で身を守っていた。ほかにも陸棲のワニ(mekosuchine crocodile)である Mekosuchus inexpectatus もゴンドワナ時代の動物相の名残として棲息していたが、人類の到達以後に絶滅に向った。
今日、ニューカレドニアには、鳥類の固有種が21種棲息しており、その中には森の林床でくらす飛べない鳥としても有名なカグーのみが属する固有の科であるカグー科(Rhynochetidae)も含まれている[4]。道具を使う珍しい鳥カレドニアガラス(New Caledonian Crow)も棲息している。島の固有種の鳥類については Endemic birds of New Caledoniaも参照のこと。
ニューカレドニアの爬虫類の動物相の特色は、大半がオーストラリアと強い親和性を持っている。島に棲息する69種の爬虫類のうち、62種が固有種である。ヘビは2種棲息しており、ヤモリ科の最大種であるツギオミカドヤモリ(ツギオミカドヤモリが属するミカドヤモリ属はヤモリ科の中でも大型種で構成される)や、多くのトカゲ(スキンクの仲間)も棲息している。既に触れたようにワニや陸棲のカメは現存していない。
ニューカレドニアの昆虫は約 4,000 種記録されており、中でもハエ目、ハチ目、チョウ目、チャタテムシ目、トンボ目、カゲロウ目、トビケラ目、ハサミムシ目の解明が比較的進んでいる。昆虫でも種および属レベルで高い固有性が示されている。トンボ目は8科31属(うち4固有属)56種及び亜種(うち23固有種)が記録されており、オーストラリアに近縁種を持つものが多い[5]。Caledopteryx maculataなど約30%が絶滅危惧ないし準絶滅危惧種とされる[5] 。チョウ目には 521 種の記録があり、そのうち 197 種(38%)が固有種である。アゲハチョウ科のヒメオオルリアゲハ (Papilio montrouzieri)、ゲロンタイマイ(Graphium gelon )、タテハチョウ科フタオチョウ亜科のガンマフタオ( Polyura gamma)、クリタルクスフタオ( Polyura clitarchus)といった固有種は近縁種がオーストラリアに分布している。ジャノメチョウ亜科の2種、Paratisiphone lyrnessa と Austroypthima petersi 、およびスズメガの1種 Compsulyx cochereaui は、いずれも1属1種の固有種である。そのほか注目に値する昆虫として、ヤシバッタCoconut grasshopperと呼ばれる巨大なキリギリス科の1種 Pseudophyllanax Imperialis 、アリの1種 (Cerapachys cohici )、セミの1種 (Kanakia typica)、カミキリムシの1種( Buprestomorpha montrouzieri)、ナナフシの1種 Gigantophasma bicolor、ハキリバチ科のハナバチの1種 Eutricharaea australis などがいる。