ヌルモデム
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ヌルモデム (null modem) は、RS-232シリアルケーブルを用いて2つのDTE (コンピュータ、端末、プリンター等) を直結するための通信手段である。ヌルモデムという名前は、RS-232ケーブルを用いた歴史的な利用方法に由来している。2台のテレタイプ端末機器は2台のモデムに接続すれば相互通信できるが、「ヌルモデム通信」は、モデムを使用せずにテレタイプ端末を相互に直結するためにクロスオーバーしたRS-232ケーブルを用いることを指す。
RS-232標準では通信リンクの両端点の定義が非対称であり、一方の端点はDTE、もう一方はモデム等のDCEが想定されている。ヌルモデム接続では、送信線と受信線がクロス結線される。目的によっては、1本以上のハンドシェイク線がクロス結線される場合がある。ヌルモデム接続はRS-232標準の範囲外であるため、数種類の結線レイアウトが使用されている。
ケーブルとアダプター

ヌルモデムケーブルは、送信線と受信線がクロス結線されたRS-232シリアルケーブルである。ケーブルの中には、ハンドシェイク線がクロス結線されたものもある。多くの場合、ストレート結線のシリアルケーブルとヌルモデムアダプターが一緒に使われる。アダプターには必要なクロス結線が信号間に含まれている。[2][3]
配線図


下表は完全なハンドシェイクを提供する2つのDTE (2台のPC等) を相互接続する、ヌルモデムケーブル用の非常に一般的な結線表であり、DCD (データキャリア検出) 信号の適切なアサーションに依存したソフトウェアでも機能する。
| 自分側 |
信号 方向 |
相手側 | |||||
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 信号および略語 | DB-25 ピン | DE-9 ピン | DE-9ピン | DB-25ピン | 信号 | ||
| フレーム接地 | FG | 1 | N/A | コモン | N/A | 1 | FG |
| 送信データ | TxD、TD | 2 | 3 | → | 2 | 3 | RxD |
| 受信データ | RxD、RD | 3 | 2 | ← | 3 | 2 | TxD |
| 送信リクエスト | RTS | 4 | 7 | → | 8 | 5 | CTS |
| 送信可 | CTS | 5 | 8 | ← | 7 | 4 | RTS |
| 信号接地 | SG | 7 | 5 | コモン | 5 | 7 | SG |
| データセットレディ | DSR | 6 | 6 | ← | 4 | 20 | DTR |
| キャリア検出 | DCD、CD | 8 | 1 | ||||
| データ端末レディ | DTR | 20 | 4 | → | 1 | 8 | DCD |
| 6 | 6 | DSR | |||||
用途
ヌルモデムの本来の用途は、2台のテレタイプ端末をモデムを使わずに直結することであった。RS-232標準が別種の装置に取り入れられるにつれ、設計者はデバイスにDTEのようなインターフェースを備えるべきか、それともDCEのようなインターフェースを備えるべきか決定する必要が出てきた。2つのDTE (または2つのDCE) が相互に通信する必要があるような用途では、ヌルモデムが必須であった。[4]
ヌルモデムは一般にコンピューター同士でのファイル転送または遠隔操作に使用された。マイクロソフトの基本ソフトであるWindowsでは、ヌルモデム接続で直接ケーブル接続を使用することができる。MS-DOSの後期のバージョンには、InterLnkプログラムが同梱されていた。どちらのソフトウェアでも、使用することで一方のコンピューターのハードディスクをもう一方のコンピューターのネットワークドライブとしてマッピングすることができる。この場合、イーサネットハードウェア (ネットワークインターフェースカードやモデム等) は必要ない。コモドールのAmigaシステムでは、ヌルモデム接続は2台のマシンでマルチプレイヤーゲームをプレイするための一般的な方法であった。
イーサネット等のより高速な情報交換システムが普及して利用できるようになったことで、ヌルモデムケーブルの利用は一般的ではなくなった。モダンなシステムでも、そのようなケーブルはカーネルモード開発の際にまだ役立つ場合があるが、これは最小限のデバイスドライバとコード (シリアルドライバーは主に2つのFIFOバッファーと1つの割り込みサービスルーチンで構成される) があればカーネルのリモートデバッグが可能になるためである。たとえば、LinuxではKGDB、BSDではddb、WindowsではWinDbgまたはKDがシステムのリモートデバッグに使用できる。これによって、ローカルのモニターとキーボードが使用不可能となるカーネルパニック発生時 (これらのリソースはGUIが占有しており、パニック時にデバッガーに入っても解放されない) にカーネル内蔵のデバッガに入れるシリアルコンソールを提供することもできる。
こうしたケーブルが有用となり得るもう1つの場面は、シリアル管理コンソールを備えた「ヘッドレス」デバイス (つまりマネージドスイッチ、ラックマウントサーバー、そして様々な組み込みシステム) の管理である。遠隔監視にヌルモデムを広く使用する組み込みシステムには、たとえばRTU、デバイスコントローラー、スマートセンシングデバイス等がある。こうしたデバイスは近距離に設置される傾向があるため、DNP3、Modbus、そして他のIEC亜種といったプロトコルを通じた短距離のシリアル通信に適している。電気、オイル、ガス、水道といった公共サービスは新しいネットワークテクノロジーへの対応が遅いが、これは数十年単位になる耐用年数を持つ資本設備への多額の投資が原因かも知れない。シリアルポートとヌルモデムケーブルは、こうした産業ではいまだに広く使われており、イーサネットは広く利用可能な選択肢になり始めたばかりである。