幼生は明瞭な寄生虫である。ヒルが体内に侵入して被害を与えることを内部蛭症というが、本種はこれを引き起こす日本における唯一の種である。成虫は不快害虫の範疇にとどまり実害はない。
上記のようにこのヒルはあまり人里には出ないものであり、山間渓流域で野生動物を宿主とするものである。したがって、そういう場所に入って渓流で顔を洗ったり、水を飲んだ際に幼生の寄生を受ける。幼生は上記のように細くて白っぽいため、見つけるのは困難である。寄生する部位は多くの場合に下・中鼻道である。
感染初期には自覚症状はほとんどない。しかし虫体が成長し大きくなるにつれ、その運動を異物感や痒痛感として感じるようになり、また蛭が吸血部位を変える度にそこからの出血が見られるようになる。ヒル類は吸血のための傷口から血液凝固阻止剤を注入するので、出血は止まりにくく、極端な例ではそのために貧血が起きる。また、下記参考文献の真喜屋他(1988)は福岡での症例を扱ったものであるが、その患者は出血の他に鼻汁の異常分泌に悩まされたという。
しかしこれら以外に身体症状を引き起こすことはほとんどなく、この患者の場合も鼻腔内に潰瘍等はなく、耳内、口腔内も問題なかった。血液検査等に於いてもほとんど異常を認められていない。しかし、鼻腔内に奇妙な「虫」が住み着いていることは大きな不安感を引き起こす。上記のような症状の他に、ハナビルの幼生が成長してくると、体を伸ばした際には外から見えるようになり、この患者も手鏡でこれを見てこれを取り去ることを画策、最後に洗面器に水を張って顔をつけ、虫体が伸びたところをぬれタオルで確保、引きずり出したと言うが、その際に虫が鼻腔内壁に吸い付いてなかなか外れず、「鼻がもぎ取られるように(同p.206)」痛んだという。
なお、鼻腔であれば幼生が成長すると脱落して、それで終わりであるが、それ以外の部位に寄生した例もある。水と共に入り込んだ虫が気管に達し、声帯や気管に吸着して呼吸困難になった例や、たまたま眼にこすり込んだために結膜に寄生された例、外耳道に入り込んで化膿を起こした例、尿道に入り込んで血尿を起こした例なども知られている。
治療としては、虫の麻酔と吸着部位の麻酔薬を効かせつつ、取り出すような方法がとられる。