フライウェイ

全世界における渡り鳥の移動ルート、いくつかに分かれる From Wikipedia, the free encyclopedia

フライウェイ英語: Flyway)とは、渡り鳥が繁殖地と越冬地の間を移動する際に習慣的に利用する、大陸規模の広域的な渡りルートのことである[1]

英語名 Flyway
概念の提唱者 フレデリック・チャールズ・リンカーン(Frederick Charles Lincoln)
提唱年 1935年
関連条約 渡り鳥保護条約(ボン条約)、ラムサール条約
概要 Flyway, 基本情報 ...
フライウェイ
Flyway
渡り鳥が繁殖地と越冬地の間を移動する際に使用する広域的な渡りルート
基本情報
英語名 Flyway
概念の提唱者 フレデリック・チャールズ・リンカーン(Frederick Charles Lincoln)
提唱年 1935年
関連条約 渡り鳥保護条約(ボン条約)、ラムサール条約
国際機関 国連環境計画・渡り性野生動物の種の保全に関する条約(UNEP/CMS)
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単に個々の種が辿る移動経路(マイグレーション・ルート)を指すのではなく、多数の種が共有する大きな空域の帯として捉える概念である[2]。フライウェイは通常、大陸を縦断し、しばしば海洋を越えて広がる。

世界にはいくつかの主要なフライウェイが存在する[3]

フライウェイをまたぐ渡り鳥の保全には複数の国家・地域間の国際協力が不可欠であり、ラムサール条約ボン条約(CMS)をはじめとする国際的な枠組みのもとで保全活動が進められている[4]

概要

フライウェイという語は英語の "fly"(飛ぶ)と "way"(道・経路)の合成語であり、日本語では「渡り鳥の飛路」「渡り経路」などと訳されることもある[5]

フライウェイの定義には大きく2つのアプローチがある。

生物学的定義
渡り鳥が年間を通じて利用する地理的範囲全体を指す。繁殖地・越冬地・移動途中の中継地(休息地・採餌地)がすべて含まれる[6]
行政的・管理的定義
野生生物の管理や狩猟規制の目的で人為的に区切られた管理区域。北米では1940年代に4つのフライウェイ評議会が設置され、渡り鳥の狩猟規制に活用されてきた[7]

フライウェイを幹線道路の束に例えるならば、個々の種の移動経路はその幹線道路に流れ込む支流のようなものである[8]

背景・概念の成立

概念の起源

フライウェイという概念は、1920年代から1930年代にかけてアメリカの鳥類学者フレデリック・チャールズ・リンカーンFrederick Charles Lincoln、1892–1960年)によって提唱された。リンカーンはアメリカ合衆国農務省生物調査局(現:合衆国魚類野生生物局, FWS)の鳥類標識プログラムを主導し、水鳥の標識(バンディング)データを大規模に収集・分析した[9]

1918年に制定された米国渡り鳥条約法Migratory Bird Treaty Act of 1918)を契機に、渡り鳥の移動に関するより詳細な科学的知見が求められるようになった。リンカーンは膨大な標識データを解析した結果、北米の水鳥が4本の主要な経路に沿って移動していることを示し、これを「フライウェイ」と命名した[10]。合衆国FWSは行政的管理的フライウェイとしてこの4本の枠組みをしている。

  1. Atlantic
  2. Mississippi
  3. Central
  4. Pacific

この成果は1935年に農務省回報『北米の水鳥フライウェイ(The Waterfowl Flyways of North America)』として発表された[11]。リンカーンはこの中で「保護活動家たちは、鳥が祖先伝来のフライウェイに強い執着を持つことを認識している」("Conservationists now know that the birds have a strong attachment for their ancestral flyways...") と記した[12]。フライウェイ概念はその後、世界各地の渡り鳥保全に広く応用されるようになった[13]

世界への普及

北米で確立されたフライウェイ概念は、やがてユーラシア・アフリカ・オセアニアにも適用されるようになった。フライウェイが大陸を越えた国際協力の必要性を可視化する枠組みとして機能することが認識されたためである[14]

各地域のフライウェイ

※ 資料によって、本数や名称に異同がある。
以下は birdlife international のdatazoneの情報[15]を主にリスト作成し、一部他を加えた。
アジア・オセアニア
アフリカ・ユーラシアフライウェイ・システム
南北アメリカ大陸[18]
その他

中継地の役割

渡り鳥はフライウェイ上に点在する湿地干潟・河川・沿岸域などの中継地(ストップオーバーサイト)に立ち寄り、体を休め、採餌してエネルギーを蓄えながら渡りを完了する[19]。これらの中継地は、フライウェイ全体の連続性を保つ「鎖の輪」として機能しており、一か所でも失われると渡りの完了が困難になり、種全体の個体数減少につながる可能性がある[20]

国際的な保全枠組み

フライウェイは国境を越えて広がるため、一国だけの努力では渡り鳥を保全することができない。このため、以下のような国際的な条約・枠組みのもとで協調した保全活動が行われている[21]

移動性野生動物種の保全に関する条約(CMS、ボン条約)
1979年採択、1983年発効。UNEP(国連環境計画)の下に置かれる国際条約。9つのフライウェイを認定し、各フライウェイの保全に関する行動計画を策定している。
ラムサール条約
1971年採択。「特に水鳥の生息地として国際的に重要な湿地に関する条約」が正式名称。フライウェイ上の重要湿地を国際登録し保護する枠組みを提供する[22]
東アジア・オーストラリア地域フライウェイ・パートナーシップ(EAAFP)
2006年発足。東アジア・オーストラリア地域フライウェイに属する政府機関・国際機関・NGOが参画し、渡り性水鳥とその重要生息地の保全を推進する[23]
アフリカ・ユーラシア渡り性水鳥保全協定(AEWA)
アフリカ・ユーラシアのフライウェイをカバーする渡り性水鳥の保全協定。

[24], Initiative of Central Asian Flyway )

影響

生態系サービスにおける役割

渡り鳥は害虫駆除・種子散布・栄養塩の循環など多様な生態系サービスを担っており、フライウェイの健全な機能は人間社会にとっても重要である[25]。フライウェイ上の湿地・沿岸域は、地域住民の生計・食料高潮防護においても不可欠な資源となっている[26]

現在の脅威

フライウェイ上の渡り鳥は複合的な脅威にさらされており、世界的な個体数減少が報告されている[27]

生息地の喪失・劣化
開発・農業転換・干拓などによる湿地干潟の消失が最大の脅威とされる。東アジア・オーストラリア地域フライウェイの主要中継地である黄海地域では、潮間帯干潟の50%以上が過去数十年で失われたと推計されている[28]
気候変動
気温上昇と海面上昇は、渡り鳥が利用する沿岸湿地の消失を引き起こすとともに、渡りのタイミングと食物資源の発生時期のずれ(フェノロジカル・ミスマッチ)をもたらしている。北アメリカでは50%以上の鳥類種が気候変動によって深刻な脅威にさらされていると評価されている[29]
違法・持続不可能な狩猟
渡り経路上での過剰な捕獲や毒餌による被害が、特にアフリカ・ユーラシアフライウェイで報告されている[30]
高病原性鳥インフルエンザ(HPAI)
渡り鳥は高病原性鳥インフルエンザの主要な担体・伝播者であり、近年の流行によって一部の個体群が壊滅的な被害を受けている。2026年に公表されたCMSの中間報告によれば、26種のCMS登録渡り鳥種がより高い絶滅リスク区分に移行しており、そのうち18種はシギ・チドリ類であった[31]
インフラとの衝突
送電線・建築物への衝突や、道路・鉄道・柵などがフライウェイを遮断する障害物となることも問題視されている[32]

保全への取り組み

バードライフ・インターナショナルは「グローバル・フライウェイズ・プログラム」を通じて、各フライウェイにわたる加盟団体のネットワークを結び付け、違法狩猟対策・エネルギーインフラの鳥類への影響軽減・湿地ネットワークの保全・復元に取り組んでいる[33]

日本とフライウェイ

日本は東アジア・オーストラリア地域フライウェイの重要な中継地・越冬地として位置づけられており、ロシア東部・アラスカから東南アジア・オセアニアまで22か国にわたる渡り性水鳥の移動に組み込まれている[34]

環境省を含む日本の政府機関はEAAFPに参加しており、渡り性水鳥重要生息地ネットワークとして34か所(2023年現在)が登録されている。代表的な参加地としてウトナイ湖風蓮湖春国岱サロベツ湿原東京港野鳥公園などが挙げられる[35]

関連項目

脚注

外部リンク

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