フレドホルム行列式
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数学の分野におけるフレドホルム行列式(フレドホルムぎょうれつしき、英: Fredholm determinant)とは、行列の行列式の一般化であるような、ある複素数値関数のことを言う。トレースクラス作用素によって、ヒルベルト空間上の恒等作用素ではない有界作用素に対して定義される。数学者エリック・イヴァル・フレドホルムの名にちなむ。
フレドホルム行列式は、数理物理学の分野において多く応用されており、その最も有名な例には、イジング模型の自発磁化についてのラルス・オンサーガーと楊振寧の問題に対する解答として証明された、セゲー・ガーボルの極限公式が挙げられる。
H をヒルベルト空間とし、G を H 上の有界可逆作用素で I + T と書き表されるようなもの(ここで T はトレースクラス作用素とする)とする。G は、
が成立するために、群である。
トレースクラスノルムを || · ||1 と表すとき、G には d(X, Y) = ||X - Y||1 で定義される自然な計量が存在する。
H を、内積 を備えるヒルベルト空間としたとき、k次の外積冪 も、内積
によりヒルベルト空間となる。
特に、H の正規直交基底を (ei) としたとき、
は の正規直交基底となる。
A を H 上の有界作用素とするなら、A は 上の有界作用素 を
として functorially に定義する。
A がトレースクラスであるなら、
によって (A) もトレースクラスとなる。このことから、
として定義されるフレドホルム行列式には、意味があることが分かる。
性質
交換子のフレドホルム行列式
(a, b) から G への関数 F(t) は、F(t) -I がトレースクラス作用素への写像として微分可能であるとき、すなわち、極限
がトレースクラスノルムについて存在するとき、微分可能であると言われる。
g(t) を、トレースクラス作用素に値を取る微分可能関数とするとき、exp g(t) もそのような関数となり、
が成立する。ここで
である。イスラエル・ゴーベルグとマーク・クラインは、F が G への微分可能関数であるとき、f = det F は C* への微分可能写像で、
が成立することを証明した。この結果は、ジョエル・ピンカスとウィリアム・ヘルトンおよびロジャー・ハウによって、A と B が有界作用素で、その交換子 AB -BA がトレースクラスであるなら、
が成立することの証明に用いられた。
セゲーの極限公式
H = L2 (S1) とし、P をハーディ空間 H2 (S1) の上への直交射影とする。
f がその円板上の滑らかな関数であるとき、対応する H 上の乗算作用素を m(f) と表すことにする。
交換子
- Pm(f) - m(f)P
はトレースクラスである。
T(f) を、
のように定義される H2 (S1) 上のテープリッツ作用素とする。このとき、加法的な交換子
がトレースクラスであるための十分条件は、f と g が滑らかであることである。
ベルガーとショウは、次の等式を示した:
f と g が滑らかであるなら、
は G に含まれる。
ハロルド・ウィドムは、ピンカス=ヘルトン=ハウの結果を使って、次の等式を示した:
但し
とする。彼はこの等式を使って、セゲー・ガーボルの有名な極限公式
の新たな証明方法を考案した。ここで、PN は 1, z, ..., zN によって張られる H の部分空間の上への射影とし、a0 = 0 とする。
セゲーの極限公式は、1951年、イジング模型の自発磁化の計算に関するラルス・オンサーガーと楊振寧の研究で生じた問題に対する答えとして、証明された。ウィドムの公式は、セゲーの極限公式をより早く導くものであり、共形場理論におけるボース粒子とフェルミ粒子の間の双対性と恒等的なものである。円板の弧の上でサポートされる関数に対する、セゲーの極限公式の特殊な場合の証明も、ウィドウによるものである;この結果は、ランダム行列の固有値分布に関する確率論的結果を得るために応用されている。