持続可能な開発
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概要
概念の成立と発展
「持続可能な開発(Sustainable development)」という考え方は、環境問題と経済・社会の発展との関係をめぐる国際的な議論の中で形成されてきた。[2]
1972年6月、スウェーデンのストックホルムで国際連合人間環境会議が開催され、「人間環境宣言」が採択された。同会議は、環境問題を国際社会が共通して取り組むべき課題として位置付ける契機となり、その後の環境と開発をめぐる国際的な議論に大きな影響を与えた。[3]
1980年には、国際自然保護連合(IUCN)、国連環境計画(UNEP)および世界自然保護基金(WWF)が『世界自然保全戦略(World Conservation Strategy)』を共同で発表し、その中で「持続可能な開発(Sustainable development)」という概念が明確に提起された。同戦略では、自然資源の保全と人間社会の発展を両立させることの重要性が示された。[4]
1987年には、グロ・ハーレム・ブルントラントを委員長とする環境と開発に関する世界委員会(WCED)が報告書『我らの共通の未来(Our Common Future)』を発表した。同報告書では持続可能な開発について体系的な説明が行われ、現在世代のニーズを満たしつつ、将来世代が自らのニーズを満たす能力を損なわない開発という考え方が示された。これにより、持続可能な開発の概念は国際社会に広く普及した。[5]
1992年6月、ブラジルのリオデジャネイロで国連環境開発会議(地球サミット)が開催され、「リオ宣言」および「アジェンダ21」が採択された。アジェンダ21では、環境保全と経済・社会の発展を統合した持続可能な開発を実現するための国際的な行動計画が示された。[6]
2000年には国連ミレニアム・サミットにおいてミレニアム開発目標(MDGs)が採択され、貧困、教育、保健、環境などを対象とする国際的な開発目標が設定された。[7]
2015年9月、国連総会において「持続可能な開発のための2030アジェンダ」が採択され、その中核として17の持続可能な開発目標(SDGs)と169のターゲットが定められた。これにより、持続可能な開発は、経済、社会および環境の三側面を統合した国際社会共通の目標として具体化された。[8]
ブルントラント委員会
国際連合の環境と開発に関する世界委員会(World Commission on Environment and Development (WCED)、委員長のブルントラント・ノルウェー首相(当時)の名前から「ブルントラント委員会」と通称される)が1987年に発行した最終報告書“Our Common Future”(邦題『我ら共有の未来』、通称「ブルントラント報告」)[9][10]では、「持続可能な開発」がその中心的な理念とされ、このときさらに広く認知されるようになった。
ブルントラント報告では、この理念は「将来の世代のニーズを満たす能力を損なうことなく、今日の世代のニーズを満たすような開発」と説明されている[11]。
1992年の地球サミットを受けて2002年に開かれた地球環境問題に関する国際会議は、「持続可能な開発に関する世界首脳会議」と銘打たれた。
持続可能な開発の課題
持続可能な社会の創り手とESD(持続可能な開発のための教育)
「持続可能な開発のための2030アジェンダ」と「持続可能な開発目標 (SDGs)」
世界遺産における持続可能な開発
ユネスコ世界遺産は知名度が高いため、そこでの持続可能な開発の実践は関心を集めやすい[15]。
もともと世界遺産条約の条文に持続可能な開発・発展に関する文言の記載はないが、「遺産の保護と継承」という理念は乱開発から文化・自然を守る、持続可能な開発を呼び掛けるものと解釈できる。そこで2005年に「世界遺産条約履行のための作業指針」に、「自然遺産及び文化遺産を保護、保全することは、持続可能な開発に大いに資するものである。 」との一文が加筆された[16]。
また、1994年に世界遺産へ導入された文化的景観は、「人間と自然の共同作業」をキーワードに、自然の恵み(環境財)を享受し人間の営みを継続してきた「持続可能な利用」の具象例(主として景観)を採り入れたものである。この考え方は日本でも文化財保護法への重要文化的景観採用に影響したが、里山として古来より活用してきたものに近く、農業遺産での顕彰などへも波及している。
2010年の「世界遺産条約:保全と持続可能な開発に関するパラチ会議」と2012年の「世界遺産と持続可能な開発に関するオウロ・プレット会議」で世界遺産における持続可能な開発の方向性を確認し[15]、2012年(平成24年)に京都市で開催した「世界遺産条約採択40周年記念会合」[17]および直前に富山県で開催した「遺産と持続可能な発展-理念から実践へ-」[18]を通し、世界遺産における持続可能な開発への取り組みとして、地域社会や先住民居住区といったコミュニティが参加する開発計画や監視の重要性を説き、前項での持続可能な開発の担い手への期待を寄せている[19]。
この他、エコミュージアムやリビングヘリテージなどが、サステナブルツーリズムとして持続可能な利用の好例として、世界遺産観光において奨励されている[20]。
環境、社会、ガバナンス
環境・社会・ガバナンス (ESG) とは、環境問題、社会問題、コーポレート・ガバナンスを優先する投資原則の略称である[21][22][23]。ESG投資は、責任投資や、より積極的なケースではインパクト投資と呼ばれることもある。
社会、環境、コーポレート・ガバナンスの3つの分野は、責任投資 (RI) の概念と密接に関連している[24]。RIは、ニッチな投資分野としてスタートし、投資をしたいが倫理的に定義されたパラメータの範囲内で行いたいという人々のニーズに応えてきた[25]。近年では、投資市場でより大きなシェアを占めるようになっている。
ESG企業報告は、ステークホルダーが、組織に関連する重要な持続可能性リスクと機会を評価するために利用できる[26][27]。投資家は、企業価値を評価する際に、組織にとっての重要なリスクを評価するだけでなく、ESGデータを活用することができます。特に、組織のすべてのステークホルダーにわたって持続可能性に関連するリスクと機会を特定、評価、管理することが、より高い長期的なリスク調整後リターンにつながるという仮定に基づくモデルを開発することによって、ESGデータを活用することができます。
明確な基準や透明性のあるモニタリングが欠如しているため、ESG評価は主に緑化やその他の企業の広報目標に役立ち、環境や社会を改善するためのより本質的な取り組みから目をそらすという懸念がある[28][29][30]。
最近、持続可能性を主張する企業や金融構造には疑問がある。「グリーンウォッシング」とは、金融市場参加者が持続可能性を偽って主張する不公正な行為であり、評判を落とし、法的な影響を受ける可能性がある[31][32]。