7-デヒドロコレステロール

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7-デヒドロコレステロール (7-dehydrocholesterol、7-DHC) は、ズーステロール(動物ステロール)の一種で、プロビタミンD3 と呼ばれる有機化合物。人の体内の皮膚の近くにこの化合物が存在することで、紫外光の作用により人はビタミンD3(コレカルシフェロール)を製造することができる。

概要 物質名, 識別情報 ...
7-デヒドロコレステロール
物質名
識別情報
ECHA InfoCard 100.006.456 ウィキデータを編集
KEGG
MeSH 7-dehydrocholesterol
日化辞番号
  • J60.101B
CompTox Dashboard (EPA)
性質
C27H44O
モル質量 384.638
特記無き場合、データは標準状態 (25 °C [77 °F], 100 kPa) におけるものである。
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生合成

7-DHCはラトステロールオキシダーゼ(ラトステロール5-デサチュラーゼ)という酵素によってラトステロールから合成される。これはコレステロール生合成の最後から2番目の段階である[1]。合成の欠陥は、スミス・レムリ・オピッツ症候群英語版に似たヒトの遺伝性疾患であるラトステロール症をもたらす[1]。 この遺伝子が欠失したマウスは、皮膚の紫外線暴露による血中のビタミンD3増加能力を失う[2]

コレステロール合成の前駆体であるプロビタミンD37-デヒドロコレステロール)が、皮膚上で紫外線を受けると、電子環状反応によりステロイド核のB環が開き、コレステロールから、7、8位の水素が失われて二重結合となった構造となり、プレビタミンD3((6Z)-タカルシオール)となる。

プレビタミンD3はさらにシグマトロピー転位によって、自然発生的にビタミンD3(コレカルシフェロール)へ異性化する。プレビタミンD3からビタミンD3(コレカルシフェロール)への転移は、室温では12日間で完了する[3]

皮膚での分布

皮膚の表皮の層。基底層(図の赤色部分)及び有棘層(オレンジ色部分)での7-DHCからプレビタミンD3の生成が最大となる。

皮膚は、主要な2層で形成されている。内側の層は真皮で、結合組織の大部分を占めており、外側の層は薄い表皮である。表皮の厚さは0.04mmから0.6mm以上である[4]。表皮は、5層で構成されており、外側から内側に順に、角質層、透明層顆粒層有棘層基底層英語版である。

7-DHCの濃度が最も高いのは、皮膚の表皮英語版、特に基底層と有棘層である[5]。したがって、プレビタミンD3の産生は、この2つの層で最も高くなる。

光化学反応

皮膚におけるプレビタミンD3の合成には、皮膚の表皮層のみを効果的に透過する紫外線放射が関与している。

皮膚で295~300nmの波長の紫外線を受けて7-DHCからプレビタミンD3(転移してビタミンDに変化するもの)が最も効果的に光化学的に生成される[6]。7-DHCは、ヒトを含むほとんどの脊椎動物の皮膚中(基底層及び有棘層)で大量(25–50 μg/cm2)に生成される[7][8]。プレビタミンD3の生成を支配する2つの最も重要な因子は、基底層と有棘層の奥深くにある7-DHCに到達するUVB照射の量(強度)と質(適切な波長)である[9]発光ダイオード(LED)は、紫外線照射に使用することができる[10]

もう一つの重要な考慮点は、皮膚に存在する7-DHCの量である。通常、ヒトの皮膚の有棘層と基底層には、体内のビタミンD必要量を満たすのに十分な量の7-DHC(皮膚の約25~50μg/cm2)が存在する。7-DHCの不足は、ビタミンD欠乏症の代替原因として提唱されている[11]

動植物の7-DHC産生

7-DHCは動物や植物が異なる経路で産生する。7-DHCは真菌類ではあまり生産されない。一部の藻類によって作られるが、その経路はよく分かっていない[12]

7-DHCは、陸上動物ではラノステロールを経由して、植物ではシクロアルテノールを経由して、藻類ではもう一つのプロビタミンDであるエルゴステロールとともにD2のビタミンD3合成に用いられる。菌類では、エルゴステロールのみがラノステロールを介したD2の合成に用いられる[13]

7-DHCは、哺乳類の乳にも見つかっている[14][15]羊毛を持つ哺乳類が自然に分泌する蝋状の物質であるラノリンには7-DHCが含まれており、日光によってビタミンDに変換された後、毛づくろいの際に栄養素として摂取される。昆虫では、7-DHCは、成虫になるために必要なホルモンであるエクダイソン前駆体である[16]

ある種の動物では、毛皮や羽根が紫外線の皮膚への到達を妨げている。鳥類や毛皮を持つ哺乳類においては、皮膚から毛皮や羽根に7-DHCを含む皮脂を分泌し毛繕いすることによって口からビタミンDを摂取している[17]

工業的生産

工業的には、7-DHCは一般的にラノリンに由来し、紫外線照射によってビタミンD3を生成するために使用される[18]地衣類ハナゴケ)はビーガンD3を生成するために使用される[19][20]

発見の歴史的経緯

1923年に7-DHCに紫外線を照射することによって脂溶性ビタミンを生成できた。アルフレッド・ファビアン・ヘスは、「光はビタミンDと同等である。」ということを示した[21]

ドイツのゲッティン大学の有機化学者アドルフ・ヴィンダウスによって発見された。アドルフ・ヴィンダウスは、ステロールと関連ビタミンの構造の解明で、1928年にノーベル化学賞を受賞した[22]。彼は、さらに、1930年代にビタミンDの化学構造を確定した。

関連項目

脚注

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