哺乳類において、ヘキソキナーゼには4つのアイソザイム(ヘキソキナーゼI、II、III、IV)が存在する。特に、ヘキソキナーゼIV(グルコキナーゼ)と他のアイソザイムは、グルコース-6-リン酸に対する応答が異なる[5]。この違いは、反応速度や調節の性質の違いによく反映される。
筋肉において、ヘキソキナーゼIIとともにグルコース-6-リン酸を生産している酵素。
ヘキソキナーゼIと同様に、筋肉においてグルコース-6-リン酸を生産している酵素。インスリンにより、ヘキソキナーゼIV等の代謝に関連する酵素とともにその発現は調整されている。具体的には、インスリンはヘキソキナーゼIIの転写を促進する効果を持つ。この効果は、例えば、食事を摂り過剰のグルコースを取り込んだときに働く。グルコース濃度の上昇はインスリンの分泌を促し、解糖を介したグルコースの燃焼を促す。
通常、ヘキソキナーゼIIはその最大あるいはそれに近い酵素反応速度で働いている。なぜなら、血中(グルコース濃度は約4~5 mM)から筋細胞に取り込まれたグルコースは、細胞中のヘキソキナーゼIIを飽和するのに十分な濃度をもたらすためである。ヘキソキナーゼIIはグルコースとの親和性が強く、その1/2飽和濃度[6]は約0.1 mMと低い。
ヘキソキナーゼIIはIと同様にその生成物であるグルコース-6-リン酸からアロステリック阻害を受ける。すなわち、細胞内のグルコース-6-リン酸の濃度が正常よりも高くなると、一時的にその生産が抑えられる。これは、ヘキソキナーゼIIの酵素反応を定常状態に復帰させ、グルコース-6-リン酸の生成速度と利用速度のバランスを保つ。
肝臓においてグルコース-6-リン酸を生産している酵素。グルコキナーゼとも呼ばれる。ヘキソキナーゼII等と同様に、その発現はインスリンにより調整されている。
他のアイソザイムと3つの点で大きく異なる。第一に、ヘキソキナーゼIVが半分飽和するには、通常の血中のグルコースの濃度よりも高い約10 mMの濃度が必要である。この値は、他のどのアイソザイムよりも大きい。第二に、ヘキソキナーゼIVの酵素阻害剤には肝臓に特異的に存在するタンパク質が存在すること。第三に、ヘキソキナーゼIVはグルコース-6-リン酸による阻害を受けないことである。
これはそれぞれが働く器官、すなわち筋肉と肝臓の糖質代謝における役割の違いを反映している。筋肉は、エネルギー生産のためにグルコースを消費する。対して、肝臓は、ホメオスタシスを維持するために、グルコースの血中の濃度に応じてグルコースの除去や産生を行う。