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ベターリッジの見出しの法則

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ベターリッジの見出しの法則(ベターリッジのみだしのほうそく、: Betteridge's law of headlines)は、疑問形で終わる見出しは「ノー」と答えられる、というジャーナリズム上の警句である[1]。一般には、媒体がその内容を断定できるだけの十分な裏付けを持つなら、疑問形ではなく断定的な見出しにするはずだ、という発想に基づく[1]。厳密な法則というより、報道見出しやオンライン記事の見出しを批判的に読むための経験則として用いられることが多い[1]

この法則は、イギリスの技術系ジャーナリストであるイアン・ベターリッジの名にちなむ。2009年、ベターリッジは、米国のテック系ニュースサイトであるTechCrunchの記事見出し「Did Last.fm Just Hand Over User Listening Data To the RIAA?」(「Last.fmはユーザーの視聴データをRIAAに渡したのか?」)を取り上げ、疑問符で終わる見出しは「ノー」と答えられるという自らの格言を示した[2][1]

ベターリッジの見出しの法則は、疑問形見出しを読んだとき、その問いに対してまず「ノー」と答えてみると、見出しの性格が見えやすくなる、という趣旨の警句である[1]。この考え方の背景には、記者や編集者が十分な証拠を持つ場合には断定的な見出しを付けやすく、逆に裏付けが弱い場合には、疑問形を用いることで断定を避けつつ関心を引こうとする傾向がある、という新聞実務上の感覚がある[1]

成立

この法則が広く知られる契機となったのは、2009年2月のベターリッジのブログ投稿である[1]。彼は、TechCrunchが掲載した記事見出しを取り上げ、疑問符で終わる見出しは「ノー」と答えられるという自らの「格言」を示した[1]

きっかけとなったTechCrunchの記事は、「Did Last.fm Just Hand Over User Listening Data To the RIAA?」という見出しを掲げていた[2]。音楽の視聴履歴共有や楽曲推薦機能で知られたLast.fmが、米国レコード業界団体のRIAA(Recording Industry Association of America)にユーザーデータを提供したのではないかと示唆する記事であった。記事本文はこの件を「rumor」(「うわさ」「未確認情報」)と表現しており、断定的な事実報道ではなく、確認の不十分な情報を疑問形で提示したものだった[2]。この事例は、ベターリッジの見出しの法則を説明する際の典型例としてしばしば参照される[1]

前史

ベターリッジの名が付く以前から、疑問形見出しに対する同様の懐疑は新聞界に存在していた。たとえばイギリスのジャーナリストアンドルー・マーは、2004年の著書『My Trade』で、見出しが質問しているならまず「ノー」と答えてみるべきだと述べ、疑問符付き見出しはしばしば大げさで煽情的だと論じている[3]

また、ベターリッジの見出しの法則と類似する格言が、英語圏では「Davis's law」などの名で流通していた例もある[4]

解釈と限界

もっとも、ベターリッジの見出しの法則は、あらゆる疑問形見出しに当てはまるわけではない。CJRこと『Columbia Journalism Review』は、米国のジャーナリズム評論誌であり、この法則を紹介する記事の中で、抽象的・開放的な問いや、単純な「はい」「いいえ」で答えにくい問いには、この法則を機械的に適用できないと指摘している[1]。したがって、「疑問符が付いているから必ず誤報だ」と解するのは行き過ぎであるとしている[1]

また、米国コピーエディター協会のデイヴィッド・サリヴァンは、この法則を「simplistic nonsense」(「単純すぎるナンセンス」)と評しており、実務上も全面的に受け入れられているわけではない[1]

学術分野への援用

この考え方は、報道見出しだけでなく、学術論文のタイトルにも援用されることがある。2016年のJames M. CookとDawn Plourdeの研究は、2014年に刊行された複数分野の学術雑誌論文7,845本を分析し、疑問形タイトル自体が少数であること、さらに「はい/いいえ」で答える型の問いでは、「ノー」よりも「イエス」と答えられる例の方が多かったことを示した[5]。この結果は、ベターリッジの見出しの法則が学術論文タイトルには一般的には当てはまらないことを示している[5]

また、素粒子物理学の分野では、これに類する冗談めいた経験則としてヒンクリフの法則(Hinchliffe's rule)が言及されることがある[6]

法的論点

疑問形見出しは、断定を避けるように見えるため、名誉毀損責任の回避策とみなされることがある。しかし、少なくともアメリカ法上、そのような理解は一般には支持されない。1913年のオクラホマ州最高裁判所判決 Spencer v. Minnick は、表現の意味と害悪が明白で、対象者の同定に疑いがないなら、単に疑問符を付けたからといって責任を免れないと判示した[7]。したがって、疑問形見出しは編集上のレトリックとしては有効でも、法的な免責装置ではない[7]

受容

ベターリッジの見出しの法則は、インターネット上ではしばしば半ば冗談として流通しつつも、見出しの煽情性や報道の不確実性を考える上で便利な批評語となっている[1]。一方で、開かれた問いや評論的見出し、あるいは学術・広告・ソーシャルメディアなどの文脈では別の機能も果たしうるため、万能の判定基準とはいえない[1][5][8]

関連項目

脚注

参考文献

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