液滴模型では非圧縮性流体を仮定し、密度は一定であるから核の体積は質量数に比例する。体積項は、強い核力 による引力的相互作用に起因する。この力は短距離相互作用であるため、最近接核子との相互作用のみが結合エネルギーに寄与する。大きな核では、核子の全方向を他の核子に取り囲まれているので、結合エネルギーは核子の総数に比例する。
a
V
⋅
A
(
a
V
≈
15.67
M
e
V
)
{\displaystyle a_{\mathrm {V} }\cdot A\qquad (a_{\mathrm {V} }\approx 15.67~\mathrm {MeV} )}
表面にある核子は、核の内部にある核子に比べて隣接する核子が少ない。従って、核子間の結合が減った分だけ結合エネルギーは弱くなる。よって、この項は不安定化項(負の寄与)であり、原子核の表面積に比例するので、表面項は体積と表面積の関係式から求められる。球の表面積は R 2 に比例するので、体積で表わせば V 2 / 3 に比例する。V は A に比例するので、R 2 ∝ A 2 / 3 となる。核子の少ない核では表面項が強く効くが、核子数が大きくなれば寄与は小さくなる。
−
a
O
⋅
A
2
3
(
a
O
≈
17.23
M
e
V
)
{\displaystyle -a_{\mathrm {O} }\cdot A^{\frac {2}{3}}\qquad (a_{\mathrm {O} }\approx 17.23~\mathrm {MeV} )}
さらなる不安定化要因として、正に帯電している陽子同士のクーロン斥力がある。このエネルギーはクーロンの法則 に従えば、電荷(荷電数 Z )の二乗に比例し、半径に反比例する。ここでは、Z 個の陽子がそれぞれ他の (Z − 1) 個の陽子と反発するので、この項は Z 2 ではなく Z (Z − 1) に比例する(ただし、Z が大きければ差は小さくなっていく)。半径は体積の(したがって質量数の)1/3乗に比例する。核が大きくなるほど、その中の陽子同士のクーロン斥力も大きくなる。このことは、原子番号82(鉛)までしか安定に存在できないことの理由でもある。この斥力により、結合エネルギーはさらに減少する。以上のことから、クーロン項は以下のように見積もられる。
−
a
C
⋅
Z
⋅
(
Z
−
1
)
⋅
A
−
1
3
(
a
C
≈
0.714
M
e
V
)
{\displaystyle -a_{\mathrm {C} }\cdot Z\cdot (Z-1)\cdot A^{-{\frac {1}{3}}}\qquad (a_{\mathrm {C} }\approx 0.714~\mathrm {MeV} )}
この項は量子力学的な性質に起因し、中性子数と陽子数がバランスするようにはたらく。つまり、N = Z のときこの項は消滅し、中性子数と陽子数の差が大きくなるほど結合を弱める。よって、陽子数 Z と中性子数 N = A − Z の不均衡は原子核を不安定にする。この項は N − Z = A − 2Z に比例すると考えられる。この差の符号によって不安定化は代わらないと考えられるので、二乗を取ったうえで、A で割ることによりその補償をする。すると、対称性項は次のように表わされる。
−
a
S
⋅
(
N
−
Z
)
2
4
A
(
a
S
≈
93.15
M
e
V
)
{\displaystyle -a_{\mathrm {S} }\cdot {\frac {(N-Z)^{2}}{4A}}\qquad (a_{\mathrm {S} }\approx 93.15~\mathrm {MeV} )}
中には、分母の4を定数に含め、
a
S
≈
23
M
e
V
{\displaystyle a_{\mathrm {S} }\approx 23~\mathrm {MeV} }
としている文献もある。
中性子と陽子はともにフェルミオン であり、パウリの排他律 に従って一つの量子状態の占有数は一つまでである。エネルギーの低い順に占有された量子状態のうちのエネルギーの最大値によりフェルミ準位 が定義される。対称性項は、中性子と陽子のそれぞれがフェルミ準位をもっていることを表わしている。
観測により、陽子数と中性子数が偶数のときは奇数のときよりも原子核は安定になることが知られており、このことを説明する項も付け加えられる。この項は、殻モデルにより初めて理論的に説明される。殻モデルによれば、中性子および陽子はそれぞれスピン がゼロになるようにペアになるほうが安定である。陽子数と中性子数の両方、または片方が奇数のとき、ペアになれずに余った核子ができ、その核子は結合が弱いと考えられる。
陽子数 Z と中性子数 N の両方が偶数の核(gg-核、独 : gerade–gerade )はしたがって最も結合が固く、Z と N の両方が奇数の核(uu-核、独 : ungerade–ungerade )は最も結合が弱く、残りの核(ug-核)はその中間となる。gg-核は最も安定な核種となり、uu-核は4つの軽い核 2 H , 6 Li , 10 B , 14 N 以外は不安定である。この項の影響は、核子の数が多いほど小さくなる。よって、この項は以下のように見積もられる。
+
{
+
a
P
⋅
A
−
1
2
gg
0
ug,gu
−
a
P
⋅
A
−
1
2
uu
(
a
P
≈
11.2
M
e
V
)
{\displaystyle +{\begin{cases}+a_{\mathrm {P} }\cdot A^{-{\frac {1}{2}}}&{\text{gg}}\\0&{\text{ug,gu}}\\-a_{\mathrm {P} }\cdot A^{-{\frac {1}{2}}}&{\text{uu}}\end{cases}}\qquad (a_{\mathrm {P} }\approx 11.2~\mathrm {MeV} )}
ここまでで与えられた定数の値は、実験的に得られた少くとも五つの核の質量から質量公式を用いて決定された経験的パラメータである。文献によって、どの核を用いるかが異なるため、値は若干変動しうる。これは、どの質量領域に対して最適化したかが異なるためである。