スチールホイール
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解説



スチールホイールにはアルミホイールと比較して、以下のような特徴がある。
長所
- 安い - 素材の価格に加え製造手法の面で見ても薄い鉄板をプレス成形して製造するため量産向きで、鋳造や鍛造のアルミホイールと比較した場合安価に製造できる。
- 強い - 靭性(破壊抵抗性)に優れるため、16インチ程度以下であれば同サイズのアルミホイールより軽い[2]。また、万一タイヤがパンクしてもリムだけで相当距離を引きずりながらでも走行することができる[注 2]。他にタイヤチェーンを装着する時ホイールへの傷付きを気にしなくて良い、アルミホイール以上に腐食(錆が発生)しやすいものの、ワイヤーブラシや粗目のサンドペーパーなどで錆を落とした後、(ラッカースプレーなどで)リペイント(再塗装)すればそのまま再利用できる。
短所
- 重い - 鋼はアルミニウム合金よりも比強度が低いため、同一強度に仕上げると重くなりやすい。
- デザイン性に欠ける - スタイリッシュな形状に加工しづらい。ほとんどの場合くすんだ銀色か黒色[注 3]で、ブレーキキャリパーのオフセットによる凹凸と穴(たいていの場合円形、楕円形、四角形のいずれか)が数個開いている(原付バイク用のものは2本にまとまった支柱が3束ある形状)という無骨な見た目となる。このため市販乗用車の場合は、外側に下記樹脂製のカバー(ホイールキャップ(英語版)、あるいはホイールカバー。全体を覆うフルキャップと締結穴周辺までのハーフキャップがある)[注 4]か、樹脂製または金属製のセンターオーナメント(センターハブキャップ、センターキャップ)を取り付けているケースがある。マッスルカーに分類されるアメリカ車やその影響を受けた日本のドレスアップカーでは、クロームメッキされた金属製のホイールカバーや、トリムリングと呼ばれるリムの部分のみを装飾する部品も好んで用いられる。
よくある誤解
「重い」「デザイン性に欠ける」という短所は「全てのスチールホイールに当てはまるとは限らない」(あるいは全てのアルミ/マグネシウムホイールがアドバンテージを持っているとは限らない)ことに留意するべきである。
- 重量
- 鋼は疲労限度があるのに対しアルミニウム合金には限度がなく、繰り返される応力により止め処なく強度低下するため、用途によっては使用期間が想定を超えることを考慮し予め予備強度を確保する必要がある。自動車メーカー純正アルミホイールの多くは全体に肉厚を増して予備強度を確保するので一概にスチールホイールの方が重くなるとはいえない。Honda公式サイトのFAQによると、フリード(標準ピュアガソリン車)の場合14インチ鉄(タイヤ185/70R14)で7.1kg、15インチ(185/65R15)の場合、鉄7.9kg・アルミ8.3kgと同サイズで比べてもアルミの方が重いと言う結果になっている[4]。
- デザイン性
- マルチスポーク形状などデザインを重視したスチールホイールが全くない訳ではなく、自動車やカー用品を販売する側の事情(高額商品である上級グレード車やアルミホイールを売りたいなど)などもあって純正・社外品ともに普及が進んでいないという側面がある。ホイールそのものにデザインを施したスチールホイール(スタイルド・スチールホイール)を純正で採用する車種(例:トヨタ・RAV4およびダイハツ・テリオスキッド、2代目以降のスズキ・ジムニーなどのSUV系、2代目トヨタ・カルディナ(一部)および9代目トヨタ・カローラセダン(ただし法人向けの「Xアシスタパッケージ」のみ)などの小型普通乗用車系、ダイハツ・ネイキッドやスズキ・ハスラーなどの軽乗用車系)も存在する[5]。
種類

プレス加工により鋼板からディスクを成形し、これをリムフランジと溶接し製造する。またリムフランジ部とディスク部とを一体成形する工法もある。
チューブレスタイヤ用
リムフランジ内側に、ビードからの空気漏れをおさえる凸部分「ハンプ」が形成されている。また、空気口は気密性バルブが取り付けられるよう、規格と精度が保たれている。
チューブタイヤ用
リング式ホイールはタイヤの組み換えにタイヤチェンジャーが不要で、設備が整っていない環境で特に便利だが、構造上隙間を無くせないためチューブが必要であり、さらに水や泥の侵入防止とチューブを保護するためのゴム製「フラップ」が併用される。一体型ホイールの場合、外観はチューブレスタイヤ用との判別が難しいが、「ハンプ」と呼ばれるビードシート部分の凸部分がないことと、空気口がチューブのバルブが通る大きい穴になっていることが異なっている。チューブレス用のバルブとタイヤを使用しても、チューブレスホイールとしての使用はできない。
合わせホイール
チューブタイヤ用のうち、合わせホイールと呼ばれるものは、左右のリムをボルトとナットなどで合体させる2ピース構造になっており、合わせ面へのチューブの噛み込みを防止するため、ゴム製のリングが使用される。リムが分割構造となっているため一般的なリム乗り越し型のタイヤチェンジャーは必要無く、特別な工具が無くてもタイヤの着脱(入替え)が簡単に行なえる。この特徴から戦場での整備が避けられない軍用車両にも多く用いられ、「コンバットホイール」と呼ばれることもある。
軽自動車では1950年代の360 cc規格期より多用された形式であり、1980年代初頭まで一部の550 cc規格車種も採用していた[注 5]。オートバイではホンダ・モンキーを始めとする一部の原動機付自転車で現在も合わせホイールが採用されている。トラック用はリム止めのリングで片側のリムを抑えており、ここへチューブの挟みこみを防止するために、ゴム製のフラップが使用される。今日のスチールホイールと比較して製造に要する材料が少なく済み、ごく安価であることから黎明期の自動車で多用されたが、構造上組み合わせられるブレーキがドラムブレーキにほぼ限定されるため、ディスクブレーキの普及や車両の平均速度の高速化・積載重量の高荷重化などに伴い、現在製造販売される自動車からはほぼ完全に姿を消した。しかし、産業機械用のノーパンクタイヤには、現在でもこのホイールが使われている。
2ピースホイール・3ピースホイール
リムがスチール製かつハブがアルミ合金製のもの(あるいはその逆)や、ホイールディスクの代わりにスポークが使われた例がある[注 6]。
ホイールキャップ(Hubcap)

スチールホイールの意匠性や防錆性を補う目的で装着されるカバー部品。日本国内では単に「ホイールキャップ」または「フルホイールキャップ」と呼ばれ、車種により形状・固定方式・被覆範囲が異なる。英語の“Hubcap”は本来、ハブナットや軸部を覆う小径キャップを指すが、日本語ではスチールホイール全体を覆う大型樹脂カバーも含めて総称される。[要出典]
一般的な乗用車では、ホイール外周のリムフランジ部に樹脂爪やスプリングリングを介して圧入固定され、巨大なマイナスドライバー形状の工具で取り外し、工具を用いずに付けられる。形状は純正ホイールのデザインに合わせて意匠化され、ブランドエンブレムが中央に配置される場合が多い。一方で、トヨタ・クラウンなどの一部車種に見られるように、センター部のみ別パーツ化された「ハブキャップ式」構造も存在し、これは主にスチールホイールのナット部を覆う目的で採用される[6]。このタイプでは、外周を覆うキャップと中央の小径キャップが別体で、後者のみが単独で脱着可能な場合もある。
また、ホイールキャップの被覆範囲によって以下のように分類される。
- ハーフキャップ(Half cap):ホイールディスクの中心部のみを覆う小径タイプ。旧来の商用車やタクシー仕様車に多い。
- フルキャップ(Full wheel cover):ホイール全体を覆う大型タイプ。乗用車で一般的。
- センターキャップ(Center cap):アルミホイールにも用いられる小径キャップで、ホイールナット部の装飾や防塵を目的とする。
ホイールキャップは意匠上の役割に加えて、ナット部やハブ周辺への泥水・融雪剤の付着を抑える防錆機能も持つが、衝撃や変形により脱落する場合もあるため、定期的な点検が推奨される[7]。
製造と供給体制
スチールホイールおよびホイールキャップは、一般に自動車メーカーが自社設計または意匠監修を行い、専業の部品サプライヤーが製造を担当する。ホイールキャップは樹脂成形品であるため、樹脂成形および加飾に特化した外部企業(例:京浜化成工業、東洋化学、デンソーグループ傘下企業など)に発注される場合が多い[8]。
スチールホイール本体は自動車メーカー系列の金属加工会社(トヨタ系ではトヨタ自動車東日本、日産系ではユニプレス、三菱系では三菱製鋼など)のほか、国内外のホイール専門メーカー(例:中央精機、エンケイ、トピー工業、ワシマイヤーなど)が供給している[9]。これらのメーカーは自動車各社の車種別仕様に合わせてプレス金型を共有することがあり、同一サイズ・同一デザインのスチールホイールが異なるメーカーの車種間で流用される例も少なくない。
一方で、ホイールキャップは車種固有の意匠部品であることが多く、他車種との共用例は少ないが、タクシー仕様車や業務用グレードでは標準的な形状が複数車種に採用されるケースがある。これは整備性やコスト効率を重視したもので、外観上の差異が少ない「共通キャップ」仕様として流通している[10]。
このようにスチールホイールとホイールキャップの製造は、完成車メーカーの意匠要求とサプライチェーン上の標準化・共通化とのバランスのうえに成り立っており、外観は専用設計であっても、基礎構造や取付規格は複数メーカー間で共通化される傾向にある。
共通設計と互換性
スチールホイールはアルミホイールに比べて構造が単純であり、JIS規格やISO規格に基づくボルトピッチ・ハブ径・オフセットなどの寸法が共通化されている。このため、メーカーや車種をまたいだ装着互換性が比較的高く、同一サイズ・同一ピッチのホイールであれば他社製車両への流用も技術的には可能である[11]。
実際に、日本国内では複数メーカーの小型商用車やタクシー仕様車において、同一金型または共通規格のスチールホイールが使用される例がある。たとえば日産AD/三菱ランサーカーゴ/マツダファミリアバンなどのOEM供給車では、基本構造が共通であるためホイールおよびキャップの互換性が高い[12]。同様に、トヨタ・クラウン(法人仕様)や日産・クルーなど業務用セダンでは、外観上は異なる意匠でも、取付寸法やセンターボア径が共通化されている場合がある。
一方で、ホイールキャップについては装着クリップ形状やリム段差寸法がメーカーごとに異なるため、見た目のサイズが同一でも完全な互換性は保証されない。樹脂素材の経年変化による爪の摩耗や弾性低下が外れやすさの原因となることから、純正指定品の使用が推奨されている[13]。
このようにスチールホイールは構造的な規格共通化が進む一方、外観部品であるホイールキャップは各メーカーの意匠・固定構造の差異が残る領域であり、整備や改造においては両者を区別して取り扱う必要がある。
整備と安全
スチールホイールおよびホイールキャップは、定期点検項目の一部として装着状態を確認することが推奨されている。特にホイールキャップは樹脂製クリップやスプリングリングで保持される構造上、経年劣化や外的衝撃によって脱落・破損する場合があるため、定期的な清掃と装着確認が必要である[13]。
清掃時には、強アルカリ性の洗剤や金属ブラシの使用を避け、樹脂や塗装面を傷つけない中性洗剤を用いるのが望ましい。また、スチールホイール表面の塗装剥離や錆が見られる場合には、早期の再塗装または交換が推奨される。ホイールキャップの裏面に付着した砂塵や融雪剤は、ホイール側の防錆被膜を侵すおそれがある[14]。
走行中の異音や振動が発生する場合、ホイールキャップの片側外れや変形が原因となる例もある。これを放置するとホイールバランスが崩れ、ハブボルトやナットへの負担増大を招く恐れがあるため、異常を感じた場合は直ちに装着状態を点検すべきとされる。
一部の業務用車両では、脱落防止のためにワイヤやタイラップによる簡易固定が行われる場合もあるが、これはメーカー純正の指定方法ではなく、点検整備記録上は暫定措置として扱われる[15]。
スチールホイールの利用状況
スバル・BRZ「R カスタマイズパッケージ」・・・本来趣味性の高い車種でありながらスチールホイール(それもキャップ無し)が装備されるのは、名前が示す通りこのグレードはユーザーがカスタムすることを前提とした「素材」であり、購入後各自で好みのホイールに交換することが前提となっているからである。この様な対処は同じく競技車ベース用である三菱・ランエボ「RS」の大半や日産・シルビア「スペックR・Type-B」などでも見ることができる。
ホイールに全くこだわりが無いドライバーは何らかの理由[注 8]で買い替え/買い増しを迫られた場合に安価で入手できるスチールホイールを購入することがあり、マルチホールタイプ(ハブボルト穴を8 - 12個ほど開けて複数のP.C.D.〈100.0mm・110.0mm・114.3mm〉に対応できるようにしたもの)の社外品がそのような需要層に向けてカー用品店やホームセンターなどで販売されている。
しかし、2020年代現在では大量生産/販売による低価格化をはじめとする各種背景から「あえてスチールを選ぶ理由がなくなった」、ともすれば「そもそもスチールホイールが選べない」状況も散見されるようになってきた。カー用品店やホームセンターでタイヤ組込済みのアルミホイールが廉売されるケースも多々有り、またとりわけCセグメント以上の車種においてはそもそもスチールホイールの純正設定すらない車種も多々見受けられる[注 9]。
一方で強度面の事情もあって、最大積載量500 kg未満の車両を除く貨物自動車ではスチールホイールが積極的に利用され続けている。これらの車両にアルミホイールを使うとなると車両重量および積載荷重に対する安全基準を満たしたJWL-T規格品であることが必要で、純正品・社外品も含めてあまり種類が多くないからである[注 10]。
モータースポーツにおいては、NASCARの車両に現在でもスチールホイールが用いられており[注 11]、NASCAR車両をイメージした社外品のスチールホイールも存在する。また「無骨さ」「ワル(≒不良)っぽさ」といったデザインコンセプト上の問題や、ジャンルにおけるカルチャーからあえてスチールホイールを使用するカスタムカーもないわけではない。中には一度既存のホイールを輪切りにし、溶接でその間に鉄板を追加しワイド化した俗に「加工鉄っチン」と呼ばれるホイールが使用されることもあり、名車再生!クラシックカー・ディーラーズSeason11 Ep.11では実際にレストア対象であるフォルクスワーゲン・タイプ2のために「加工鉄っチン」を制作する様子が登場する。
また、DIYでスチールホイールにコンパウンドややすり、バフがけ等を施し、鏡面仕上げとすることで費用を抑えつつドレスアップするカスタム手法も存在する。
