ラヒホイタヤ
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ラヒホイタヤ (フィンランド語: Lähihoitaja、英訳: Licensed practical nurse。日本語では准看護師に相当) は、厚生労働省が少子高齢化で不足が懸念される福祉人材確保のために参考にしようとしていたフィンランドの医療・福祉系の共通基礎資格である[1]。2015年6月、日本版ラヒホイタヤは導入見送りになり、結局は保育士と介護福祉士は試験科目を一部免除して双方の資格を取りやすくする検討がされる事になった。
福祉制度
親族介護支援
フィンランドでは公的なサービスの中に親族による介護が加えられている。親族によって行われる介護は施設やホームヘルパーによる介護より安価と捉えられており、親族介護給付 (Omaishoidontuki) が法律で定められている。報酬の最少額は月額300ユーロで、介護の必要度に応じて増額される。[2] 介護をしている家族等は少なくとも月3日の休暇を取得する権利があり、休みの時に代わりに必要となる介護のサービス提供は自治体が確保する。デイサービスを利用する事が多い。[3][4] 出産・育児・介護のために労働市場から離れる事があっても、男女に関わらず65歳までフルタイムで働けるような仕組みがあり、仕事と介護を両立するために介護休業法が制定されている。労働者は「無給、最大3年、原職復帰」の権利がある。 [5]
教育制度
フィンランドでは教育は就学前から大学院に至るまで無償である。[6][7] 義務教育を終えた生徒はほとんどが高等学校か職業学校に進学するが、教育機会は年齢に関わらず平等に与えられている。[6][8] 後期中等教育 (普通高校および職業学校の事) では、教科書は自己負担があるものの給食は無料である。[8][注釈 1]職業学校では、仕事の現場で役に立つ能力を磨き生涯学習を支える事を目標としている。[6]
フィンランドは“学歴社会”よりは”資格社会”といわれ[9]就職した場合でもより上級の資格を得るために、労働市場と相互に行き来ができるように組み立てられている“生涯学習社会”である。[10]
ヘルシンキ郊外の例では、職業訓練校には若い学生と成人学生の2種類がいる。登校拒否や落ちこぼれ、心理的問題等を抱え将来何をしたいのかわからない15~17歳の若者の立ち直りを支援するコースもある。ラヒホイタヤ養成コースでは成人が35%である。[11]移民用のコースもあり、フィンランドでは政府方針によりフィンランド人と一緒に授業を受けるが、英語で授業を行う訓練校もある。その場合はフィンランド語の授業も行う。ケアの仕事ではフィンランド語は必要であり、フィンランド語ができなければ実習にも響く。移民は問題を抱えている人も多いが、就職に対するモチベーションは高くケア関係への就職率は100%である。[12]
ラヒホイタヤの制度
ラヒホイタヤの教育は1993年に公認された。最初は旧資格と並存していたが、1995年に旧教育は廃止された。[13]
フィンランドにおけるラヒホイタヤはソーシャル・ケアとヘルス・ケアを教える職業学校である。フィンランドの教育制度は自由裁量に任されている部分が大きく、基本過程を終了するのに要するカリキュラムは、場所や教育機関ごとに異なっている。[注釈 2]
ラヒホイタヤと旧来の准看護師の教育訓練課程は大きく異なっており、職務と役割もかなり異なっている。旧来の准看護師の研修では基本的なケアと看護により焦点を当てている一方で、現在のラヒホイタヤの訓練ではより多様な学習をし、様々な立場で働き、各自の専門分野(例:精神保健および薬物依存への福祉対応)で研究する。教育訓練の変化は生徒達にはおおむね好評であったが、必ずしも大学に入学するための高等教育としての資格を与えるものではない点は不満も見られる。
養成教育期間は3年間で120単位。1単位は40時間。うち29単位以上すなわち1160時間以上が現場実習である。[14]
2006年の段階では約80%の施設が自治体または広域自治体連合、約18%が民間で、6校は国が運営している。[15]
一般教養
1年度および2年度で取得。30単位。普通高校卒業以上ならば一般教養は申請により履修免除。[14]
履修内容は国語、外国語、数学、物理、化学、社会、起業支援、労働生活、体育、保健、芸術、文化。[14]
起業教育は選択科目で、財務計画の作成実務、税制に関する知識で将来、独立するための基礎を学ぶ。ラヒホイタヤとして働いていた人が自営業主として自治体の生活支援サービスのアウトソーシング先の受け皿となる事が奨励されている。[16]
共通職業教育
1年度および2年度で取得。50単位。うち実習は15単位以上。[14]
- 発達の支援と指導
- 看護と介護
- リハビリテーション支援
2年間に渡って行われる教育は極めて広範囲で、投薬、注射、衛生境域、放射線、アルコール関係の勉強も含まれるが、例えば 2. の看護と介護における家事サービスの学習では、掃除、選択、食事、衛生管理等について学ぶ。3年度例えば高齢者ケアの専門過程で家事援助に関する内容では、栄養学や糖尿病の人への特別な食事への対応を学ぶというように体系的学習が行われる。これにより、フィンランドの「オムツ交換も看護もできる」ケアワーカーの強みの基礎学習が行われる。[17][注釈 3]
専門分野
3年度で履修する。40単位。うち実習は14単位以上。[14]専門科目の選択肢は多く、9つのコースから1つを選び、そのコースを開設している公立の応用科学大学[注釈 4]に通う。専門分野は以下である。
- 救急ケア
- リハビリテーション
- 児童・青少年向けケア教育
- 精神保健および薬物依存への福祉対応
- 看護および介護
- 口腔・歯科衛生
- 障害者ケア
- 高齢者ケア
- 顧客サービス・情報管理
選択した専門領域では座学と同時に現場での実習に重点が置かれ、学生は2~3種類の領域の現場実習を行わなければならない。学習及び実習で一定のレベルに達した者だけが資格取得のための技能披露テストを受けることができる。査定は現場担当者と訓練校の教師が行う。ラヒホイタヤの資格にはかなり高度な能力が要請されるため、他の専門課程の職場に移ることも可能である。[18]資格取得の費用は無料である。[19] フィンランドでは政府の融資で建てられた学生専用住宅があり、値頃な住宅が無いために教育を諦めるといった事は起こらないようになっている。[20]
以下に、幾つかの専門課程における目標を『フィンランドの高齢者ケア』pp.182-184 より一部を引用する。
- 救急医療ケア専門課程を終了したものは救急患者の看護、救急搬送車の運転およびラヒホイタヤの責任分野の枠内にて発生する問題の解決が行える技能を有しなければならない。彼はまた夜間外来部門などにおいて救急医療の応用的な職務につくこともできなければならない。[21]
- 幼児・児童ケア教育専門課程を終了したものは病院や自宅での健康な新生児ケアの技能を持たなければならない。また日常保育や家族委託保育などでの保育業務ができ、かつ早期教育の場においても作業グループの一員として作業できなければならない。[17]
- 精神衛生、依存性中毒ケア専門課程を終了したものは自立支援的介護手法を使って、精神衛生ケアや、心理療法ケアの多職種協同作業環境において精神障害者のケアプロセスを計画、実行、評価できなければならない。加えて彼はアルコール中毒や麻薬患者のケアを患者、家族、その他の専門家と協同して計画、実行、評価できなければならない。[17]
- 看護や介護ケア専門課程を終了したものは自立支援的介護手法を使って、ヘルスセンターや病院で患者/顧客の看護を、また在宅サービス、在宅看護、サービスハウスやナージンクホームでの介護を計画、実行、評価できなければならない。彼はまた医薬品を取り扱い、その影響を病院内介護や在宅介護の作業環境の中でフォローできなければならない。加えて彼は在宅介護作業環境の中で調理を行い、家庭内の衛生や快適性の維持を行えることが必要である。[22]
- 高齢者ケア専門課程を終了したものは終高齢者自宅にて在宅サービスで、施設ケアで、組織の提供ケアで、高齢者用住宅単位内にて介護し、支援し、リハビリにおいては自立支援的介護手法を使って介助することができなければならない。[23]
進路
選択可能なキャリアパスとしては、ラヒホイタヤの修了以外に、ラヒホイタヤとギムナジウム過程を合わせて修了する道がある。ダブルディグリー[注釈 5]は全ての学校で提供されるものではなく、一部ではまだ試行段階である。また、いくつかの学校は高校の卒業生には申請により単位を一部認定し通常よりも短期間で修了できるようにしている。バイリンガル(フィンランド語、スウェーデン語)で授業可能な学校もある。[注釈 6]職業としては独立して起業する機会もある。ある程度までは、ラヒホイタヤ資格は以前の准看護師と知的障害福祉士の資格に相当する。
ラヒホイタヤの就職先の多くは自治体の正規雇用者であり、他国のケアワーカーに比べ労働条件が良好であることもフィンランドの特徴とされている。[18]
仕事
現場で働くマネージャー[注釈 7]の大半は女性であるが、男性もますますこの業界への道を選ぶようになっている。
男性は、ラヒホイタヤ訓練中は精神保健および薬物依存、救急ケア[注釈 8]の分野に関心を示すが、現場では他の業務に取り組んでいる事が多い。[要出典]
フィンランドのある施設では入居者100人につき看護職18人、ラヒホイタヤ42人、非常勤医師と必要に応じリハビリ職という構成であった。[24]
医療行為
ラヒホイタヤによる皮下注射、吸引[注釈 9]など一部の医療行為については、医師や看護職へ技能を披露し、実施可能と判断されれば許可を受けて実施できる。[24]
ラヒホイタヤの制度が”介護と看護の統合”かつ”施設と在宅サービスの統合”を目指すものであり、たとえば在宅ケアでは従来は別人が行っていた准看とホームヘルパーの業務を同一人物ができる。これが人件費の節約、ホームヘルパーの専門性と労働条件の向上につながった。[18]サービス利用者も入れ替わり立ち代り複数の准看やホームヘルパーの訪問を受けるより、一人と持続的な関係が持てる。これらの結果、フィンランドのケアワーカーの地位はOECD諸国の中でもフルタイムが多いこと、教育レベルが高い事が特徴となった。[25]
| 基礎資格のための教育で得られる準備 | 追加講習によって確認されなければならない技能 | 責任者/許可を与える者 |
|---|---|---|
| -患者ごとのポーションとしての配薬 -自然経由で投与される薬剤ケア -皮下注射,筋肉注射 | -薬品の発注 -皮下注射,筋肉注射 -非医薬性の基礎輸液を含む注入ボトルや輸液バッグの交換 -救急ケア | 許可:活動単位の医療ケア活動の指導医師または彼が任命する医師 技能披露:法定の医療ケアの専門スタッフ |
自然経由で投与される薬剤ケアとは、点眼剤・点耳剤の投与、錠剤の経口投与、舌下投与、座薬や膣挿入薬の投与、[27] 経口、坐薬、錠剤、カプセル、点眼薬、軟膏、貼付剤、吸入薬。[28]
皮下注射は主にインシュリン。[29]
米国
本記事は英語版では LPN (Licensed Practical Nurse) にリンクされているが、米国では LPN の指示のもとで働く Certified Nursing Assistant という別の職があるため、ラヒホイタヤを practical nurse と訳したとしても内容が異なっている。