ロバート・カイリュー
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ロバート・カイリュー(Robert Cailliau[注釈 1]、1947年1月26日 - )は、ベルギーの情報工学者である。1987年、欧州原子核研究機構 (CERN) において、後のWorld Wide Web (WWW) に先行する最初のハイパーテキストシステムを提案した[1]。WWWという名称が生まれる以前からティム・バーナーズ=リーとともに開発に取り組み、両者はACMソフトウェアシステム賞を共同受賞している。WWWの歴史的なロゴをデザインし、1994年にはCERNで第1回国際WWW会議を主催[2]。さらに1995年には、WWWの開発をCERNからWorld Wide Web Consortium (W3C) に移管する際に重要な役割を果たした[3]。ジェームズ・ギリース著『How the Web Was Born』では共著者として名を連ねており、同書はWWWの起源を詳述した初の書籍として知られている。
カイリューはベルギーのトンゲレンに生まれ、1958年に両親とともにアントウェルペンへ移り住んだ。高校卒業後、1969年にゲント大学を卒業し、土木工学・機械工学・電気工学(オランダ語:Burgerlijk Werktuigkundig en Elektrotechnisch ingenieur)の学位を取得した。1972年にはミシガン大学にてコンピュータ・情報・制御工学 (Computer, Information and Control Engineering) の理学修士号 (MSc) を取得している[4]。
ベルギー陸軍での兵役期間中は、部隊移動をシミュレートするFortranプログラムの保守を担当した[4][5]。

1974年12月、欧州原子核研究機構 (CERN) にフェローとして着任し、陽子シンクロトロン (PS) 部門で加速器制御システムの更新プロジェクトに参加した。1987年4月にPS部門を離れ、データ取扱部門のオフィスコンピューティングシステムグループのリーダーに就任した[7]。1989年、ティム・バーナーズ=リーがCERN内外の多様な文書へのアクセスを目的としたハイパーテキストシステムを提案した[8]。バーナーズ=リーは1990年9月から12月にかけてこのシステムを構築し、「World Wide Web」と名付けた。この間、カイリューはバーナーズ=リーと共同でプロジェクトの資金調達提案書を作成している[9]。その後、カイリューはCERNにおけるウェブ活動の主要な推進者となり、UNIX系OSやClassic Mac OSを含む複数のオペレーティングシステム上でブラウザを開発・支援する学生プロジェクトを運営した[10]。ニコラ・ペローとともに、Classic Mac OS向けの世界初のウェブブラウザ「MacWWW」の開発にも携わった[9][11][12][13]。
1993年には、フラウンホーファー研究機構と協力し、欧州委員会による初のウェブを用いた欧州向け情報発信プロジェクト「WISE」を開始した。
CERN法務部門との連携の結果、1993年4月30日、CERNの将来研究担当ディレクターであるヴァルター・ホーグランドが、ウェブ技術をパブリックドメインとして公開する公式文書に署名した[14]。
同年12月、カイリューは第1回国際WWW会議の開催を提唱し、1994年5月にCERNで開催された[9][15][16]。定員を大幅に上回る応募があり、380人のウェブ先駆者が参加したこの会議は、ウェブ発展の転換点となった。この会議を契機に国際WWW会議運営委員会 (International World Wide Web Conferences Steering Committee) が設立され、以降、毎年会議を開催している。カイリューは1994年から2002年まで同委員会の創設メンバーを務めた。
1995年、欧州委員会とともに「Web for Schools」プロジェクトを立ち上げ、教育資源としてのウェブ導入を推進した。CERNからWorld Wide Web Consortium (W3C) へのウェブ開発移管を支援した後は、広報活動に注力した。2007年1月にCERNを退職している。
カイリューは、汎ヨーロッパの政治運動「Newropeans」の活動的なメンバーであり、ルカ・コミナッシとともに欧州の情報社会に関する提案を起草した[17]。
彼はまた、World Wide Webの過去と未来をテーマとする講演活動を行い、数多くの国際会議で基調講演を務めている。現在はCERN IdeaSquareの外部協力員として活動している。
受賞歴

- 1995年:ACMソフトウェアシステム賞(ティム・バーナーズ=リーと共同受賞)[18]
- 1999年:クリストフ・プランタン賞(ベルギー・アントウェルペン)
- 1999年:サザンクロス大学名誉博士号(オーストラリア)
- 2000年:ゲント大学名誉博士号(ベルギー)
- 2001年:ジュネーヴ感謝メダル (Médaille Genève Reconnaissante)(ティム・バーナーズ=リーと共同受賞)[19]
- 2004年:レオポルド勲章コマンドゥール章(ベルギー国王アルベール2世より叙勲)
- 2006年:トンゲレン市名誉市民章
- 2008年:フランドル科学・芸術アカデミー金メダル
- 2009年:リエージュ大学名誉博士号(ティム・バーナーズ=リーと共同受賞)
- 2010年:ベスト・オブ・スイス・ウェブ特別功労賞 (Ehrenpreis Best of Swiss Web)[20]
- 2012年:インターネットソサエティによる「インターネットの殿堂」入り[21]
- 2021年:ミシガン大学名誉博士号(「World Wide Web」の共同創造への貢献により)
- 2023年:ゲント大学工学部同窓会名誉会員 (Honorary Member of the Alumni Society of Engineers of Ghent University)