不来方高校バレーボール部自殺事件
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| 不来方高校バレーボール部自殺事件 | |
|---|---|
| 場所 | 岩手県不来方市 |
| 日付 | 2018年7月3日 |
| 死亡者 | 不来方高校3年の男子バレーボール部員(当時17歳) |
| 犯人 | 不来方高校バレーボール部顧問(当時41歳) |
| 容疑 | 暴行罪 |
| 謝罪 | 再発防止「岩手モデル」(TSUBASAモデル)の策定 |
| 賠償 | 懲戒免職 (刑事事件は不起訴) |
不来方高校バレーボール部自殺事件(こずかたこうこうバレーボールぶじさつじけん)は、2018年7月3日に岩手県立不来方高等学校の男子生徒が、顧問の男性教諭による不適切な指導(暴言)を苦に自死した事件(指導死事件)である。
『TSUBASAモデル』の概要
2018年7月3日 岩手県立不来方高等学校バレーボール部に所属する生徒が、自宅で朝になっても起きてこないため母親が起こしにいったところ自殺していたのが発見される。
母親「朝起きてこないので、部屋に起こしに行ったら……。もう亡くなっているとわかっていましたが、救急車を呼びました。とにかく何が起こったのか、すぐにはのみ込めなくて……」
被害者のバレーボール部員は、身長が197センチある左利きのミドルブロッカー。中学高校を通じて全国選抜チーム合宿に参加するほどの有力選手で、関東の有名私大から誘いも受けていた[1][2]。 自殺の2日前となる2018年7月1日、天皇杯・皇后杯全日本バレーボール選手権大会岩手県予選決勝では、実業団の岡崎建設Owlsと対戦し、1セット取ったものの敗戦し、準優勝となっていた[3][4]。
2018年7月8日 自殺から5日後に遺書が発見される。文面からバレーボール部顧問の男性教師(当時41歳)の叱責、暴言が自殺の原因と明らかになる。
遺書の内容 「こんなことをしてしまって本当にごめんなさい。許して下さい」 「何度も相談に乗ってもらおうと思いましたが、きっとバレーはやめられないと思うので、(中略)きっとバレーをやっていなければ何も自分にはなかったと思いますが、それでも生きているのがとてもつらかったです」 「先生からも怒られ、バレーボールも生きることも嫌になりました。ミスをしたらいちばん怒られ、必要ない、使えないと言われました」
2018年7月下旬から8月初旬 文科省通達の「子供の自殺が起きたときの背景調査の指針(改訂版)[5]」にのっとり、岩手県教育委員会がバレーボール部員や教員など関係者53人に聞き取りを行い、A4・20ページの調書を作成し公開した。そこにはバレーボール部顧問の男性教師による自殺した生徒への暴言や、心理的に追い込む行為が記載されていた[3]。
「おまえのせいで負けた」「部活やめろ」といった数々の暴言、助言を求めても無視するなど生徒を心理的に追い込む行為があったことが、合わせて44項目挙げられている[6]
この間、不来方高校校長は、遺族から遺書のコピー(A4に丁寧な字で500文字ほど書かれたもの)を手渡されても、「見せません。いま、(顧問は)精神的に弱っているので」と断ったり、「私は○○(バレーボール部顧問の男性教師を姓ではなく下の名前で呼んでいる)を信じています。前任校からは、彼なりに成長しているんです。やり直す機会を与えてやってください」と遺族に願い出たり、また地元メディアに遺書の存在を「メモ紙のようなもの」と説明するなど、遺族側の感情の溝をさらに深めるような言動を繰り返した。[7]
2018年9月 高橋嘉行岩手県教育長(当時)が「痛恨の極み。今後このようなことがないようにしていかなくてはならない」と初めて公式に見解を述べる[8]
2018年10月10日 岩手県議会にて、高橋嘉行岩手県教育長は「(不来方高校バレー部は)強豪校なので、そういう指導は生徒の能力を開花させるためには普通のことだというような評価をしている生徒もいるし、保護者から現在も、部活に復帰してほしいという信頼を得ている面もある」と元顧問を擁護しつつ、「それが客観的に証明できるのはなかなか難しいということで、第三者委員会を設置する」と答弁した。[9]
2018年10月13日 遺族側と岩手県教育委員会が初面談。
2018年10月19日 遺族は文部科学省を訪れ、文部科学大臣とスポーツ庁長官にあてた要請書を手渡した。[9]
面談に応じた松木秀彰児童生徒課生徒指導室長 「一般論ではあるが、スポーツや教育の現場でこのようなことはあってはならない」 (遺族の代理人)草場裕之弁護士 「第二の桜宮事件。ただ、体罰根絶の流れがあったにもかかわらず、この男性教師が暴力指導を継続していたこと、前任校の教え子に提訴され暴力行為があったと認定されたにもかかわらず指導を続けた。この2つの点において、桜宮以上に重大な事件」
2018年11月 遺族が元顧問の男性教諭を暴行容疑で岩手県警察警に刑事告訴。[8]
2019年1月 岩手県教育委員会は、第三者委員会を設置。全校生徒830人を対象にしたアンケート調査や、80人超の関係者から聞き取り調査を行った。
2020年4月 盛岡地検は、暴行容疑で刑事告訴された男性顧問を不起訴処分にしたと発表。地検は「複数の目撃証言があったが捜査協力が得られず、公判を維持する証拠が集まらなかった」と説明。[8]
2020年7月22日 岩手県教育委員会の第三者委員会が、「教諭の叱責や言動が自殺につながった」との報告書を教育長に提出する。佐藤博教育長は「(元顧問、学校、県教委の対応について)不適切、不十分とされた。厳粛に受け止め、心よりお詫びを申し上げる」と謝罪した[10][2]。
2020年12月26日 佐藤博教育長は、元顧問の男性教師は2008年から2009年にかけて勤務していた別の高校でも生徒に暴言を浴びせていたことを謝罪する。遺族側は、元顧問の男性教師の懲戒免職処分を佐藤博教育長に求めた[11]。
父親「自分の人格を全面否定する言葉によって、息子は追い詰められていったのではないか。言葉の暴力です。」「顧問はまだ41歳。このままではまた同じ事件が起きる気がします。」 「スポーツで実績を残して大学を出て、すぐ『先生、先生』と言われ、何が正しい指導か、学ぶ機会を持とうとさえ思っていないのでは」[2](2021年5月の雑誌取材にて)
2022年6月24日 岩手県教育委員会は、元顧問の男性教師を懲戒免職にした。元顧問の男性教師の言動は「重度の精神的苦痛を与えた」と判断した。元顧問の男性教師は「激励のつもりで発言していたのだがそのように捉えられていない部分があり申し訳ない」と述べた。さらに岩手県教育委員会は、当時の副校長も戒告とした[12]。
2023年3月13日 岩手県教育委員会は、教育委員会の職員2人を戒告処分にした。懲戒免職となった男性教師の前任校での体罰を不来方高校の管理職に伝えておらず、この情報が共有されていれば自殺を防ぐことができたかもしれないとした[13]。
2023年4月19日 岩手県教育委員会教育長は、自殺の再発防止策を策定する方針を示した[14]。
2024年5月28日 岩手県は、再発防止策をまとめた「岩手モデル」を公表。被害者名からこの方策の名称を『TSUBASAモデル』として積極的に告知することになった。[8][15]
- 不適切指導の禁止と対応
- 研修・教員育成
- 支援体制の強化
- 人事管理の改善
[高校入試制度との連動]部活動の実績を評価項目としない高校入試制度を導入。部活動成果の評価を避ける方向性を明示[16]。
加害側の元顧問の適格性
そもそも当該のバレーボール部元顧問は、本事件発生前からハラスメントで訴訟を抱えていた。
2017年11月に、県立盛岡第一高(前任校)の元バレーボール部男性部員と両親から部活において暴言・暴行を受け、心的外傷後ストレス障害(PTSD)になったとして訴えられ、第1審の盛岡地裁で「顧問の男性教諭の指導は社会的相当性を欠いていた」として、岩手県に20万円の支払いを命じる判決[17]を受けていた。
この判決にも関わらず、当該教諭が不来方高校バレーボール部の指導を継続できていたのが本事件発生の最大の原因である。これは岩手県教育委員会の落ち度である。
なお本事件発生後の2019年2月に行われた第2審の仙台高裁(小川浩裁判長)では、顧問の暴力や人格をおとしめるような発言を認定し、「指導とはほど遠く、教員としての裁量を逸脱した違法な行為」と指摘され、1審判決を変更して40万円の支払いを命じられている[18]。