褐炭

最も低品位な石炭 From Wikipedia, the free encyclopedia

褐炭(かったん、brown coal[1]、Lignite[1])は、石炭の一種。米国ASTMや日本産業規格では石炭の分類を褐炭、亜瀝青炭、瀝青炭無煙炭の4種としており、そのうち最も石炭化度(炭素含有量)が低いものである[2][3]。なお、これより石炭化度が低いものに規格外の泥炭がある[注釈 1]

ブリケット加工された褐炭。
ドイツ・ハンバッハでの褐炭露天掘り風景。ケルンの西方に多数存在するこれらの露天掘鉱山は、採掘終了後は巨大な人造湖になる予定。一方で、景観破壊、住民集団移転も問題になっている。

亜炭(あたん、Lignite[1])という語もあり、地質学的には褐炭のこととされ[5]、褐炭も含めて亜炭と呼ぶこともある[1]。一方、炭素含有量を60%以上のものを褐炭、60%未満のものを亜炭ということがあり、亜炭は褐炭のうち質の悪いものの俗称とされることもある[1]

燃料としては重視されないが、褐炭のごく一部に黒玉として珍重されるものも存在する。続成作用を強く受けていないため、セコイヤなどの木片の組織が観察されることも多い。仙台市内で産出される亜炭の中には、組織がしっかり残っているものもあり埋れ木として細工物の材料にもなった。

熱源としての利用

水分量が多いため、重くてかさばり輸送コストがかかるわりには熱エネルギーをあまり生産できず、燃料としてのエネルギー効率は低い。また、空気中の酸素化学変化を起こして自然発火する恐れのある官能基が多いので、保管・輸送には適さない[6]。その上、乾燥すると粉末状になり、粉塵爆発の危険が生じる。このため、保管・輸送する際にはブリケット加工を施して、空気との接触面積を小さくする対策が必要になる。これらの手間を省きビジネス上の採算を確保するため、採掘地付近(山元)に火力発電所を建設して、そのまま燃料に使われることも多い。

米国ASTMでは固定炭素比率によって褐炭をligniteAとligniteBの2種類に分けている[2]。また、日本産業規格では褐炭(F)を発熱量(補正無水無灰ベース)でF1とF2に分けているが、いずれも非粘結性である[3]

褐炭は輸送効率とエネルギー効率の低さから、高品位炭に比べ世界市場での取引は少ない。また、露天掘りのため自然環境を破壊することや、無煙炭を燃やす工場や発電所に比べて褐炭を燃やす施設の二酸化炭素排出量(特に、地中や水中への炭素隔離を行わない場合)や煤煙が多いことから、環境負荷の大きい褐炭の使用は欧州などでは政治的な問題ともなっている[7] [8]。例えばドイツは長らく採掘量で世界一の座を占めてきたが、2018年、政府の委員会の報告書の中で褐炭の採掘を段階的に削減していく方針を打ち出した[9]。しかしながら、2023年時点でも一部の環境運動家によって採掘の即時中止、炭鉱の即時閉鎖を求める抗議活動が盛んに行われている[10] [11]

一方で、世界の石炭埋蔵量の半分を褐炭が占めることから、採掘地での発電以外の利用を図るために、褐炭から水分を取り除くなど、輸送・燃焼の効率を上げるための改良技術も研究されている[12] [13] [14]。また、石炭ガス化複合発電において、ガス化した褐炭を用いて発電コストを低く抑える研究も行われている[15] [16] [17]

オーストラリア南東部ビクトリア州ラットローブ(City of Latrobe)の閉鎖された褐炭鉱では、日本が協力して水素を取り出すことで再生を目指すプロジェクトが進んでいる[18]

資源量

世界の褐炭・亜炭の埋蔵量は、より高品位の石炭の埋蔵量をしのぐ6,000億トン以上の規模とされる。日本国内でも埋蔵量は多く、東北地方だけでも3億トンとも推測されている[19]

さらに見る 順位, 国名 ...
褐炭採掘量(2005年)[20]
順位国名採掘量
(単位:百万トン)
順位国名採掘量
(単位:百万トン)
1 ドイツ178.0 11 インド30.0
2 アメリカ合衆国75.0 12 ルーマニア27.9
3 ロシア74.8 13 ブルガリア23.2
4 ギリシア69.1 14 インドネシア23.0
5 オーストラリア66.9 15 タイ王国22.0
6 トルコ64.3 16 ハンガリー12.6
7 ポーランド59.9 17 メキシコ12.3
8 チェコ48.9 18 カナダ11.4
9 中華人民共和国48.3 19 ボスニア・ヘルツェゴビナ8.0
10 セルビア34.0 20 スペイン7.5
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日本国内での利用

品質に関しては石炭化が十分に進んでいないために不純物や水分を多く含み、得られる熱量が小さいことから、製鉄などの工業用途には向かない。日本では明治年間から1950年代まで全国各地で採掘され、主に家庭燃料として重宝された。特に、第二次世界大戦中および直後においては、燃料の輸送事情が極端に悪化したため、仙台市名古屋市などの大都市や、長野市などの中規模都市の市街地などでも盛んに採掘が行われて利用された[21]岐阜県可児郡御嵩町は明治初期から開発が進み、最盛期には全国産出量の4分の1以上を占め、炭鉱の町として栄えた。

廃坑の問題

土砂を埋め戻したり、水を注入させ空間を埋めなければ、地震時などに災害が発生することが懸念されているが、小規模な業者や個人による無計画な採掘も多く、採掘場所が不明確な地域もある。

御嵩町1968年昭和43年)に採掘が終了したが、網の目状に広がっているとされる空洞の全容が解明されず、陥没事故が起こり問題視されている。仙台市では幕末から小規模な採掘が行われていたが、記録が少なく、1980年代頃から住宅地で陥没が発生しているが、抜本的な対策が講じられない状況にある[21]

熱源以外の利用

燃料以外の用途では、第四級アンモニウムカチオンと化学反応した褐炭(amine treated lignite、ATL)は、石油などを掘削する際の掘削泥水英語版に混ぜ、液体の損失を少なくするために使われる。

その他、見た目がきれいなものは「黒玉(ジェット jet)」と呼ばれ、古くから埋れ木細工[22]などの飾り物としての需要がある。

脚注

関連項目

外部リンク

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