等位接続詞によって接続された文は、しばしば文脈自由文法で説明できない現象として注目されてきた[1]。
「太郎と次郎と三郎とは、それぞれおやつに柚子と枇杷と林檎とを選んだ」
という文は、「A:太郎は柚子を」「B:次郎は枇杷を」「C:三郎は林檎を」という三つの関係が、ABCABCの順に並んでいる。
これは文脈自由文法では統語的に厳密には扱えない可能性がある。しかし、これを統語論の範疇ではないとして意味論に押し付けることによって解決することは可能である[1]。
語順が比較的自由な言語では、ABCCBAのような典型的な文に対して、その語順を入れ替える事によって交差依存関係に類似した表現を取ることがある。
日本語の文では「~に来る」「~するように言う」などの動詞を含む文において、交差依存関係に類似するものが見られる。
「商品を競売にここに太郎に出しに来るように言った」は交差依存関係にあるとみなすことができる。「商品を競売にここに太郎に出しに来るように言った」
という文は「A:競売に出す」「B:ここに来る」「C:太郎に言う」という三つの関係が、ABCABCの順に並んでいる。[注釈 1]
これは文脈自由文法では統語的に厳密には扱えない可能性がある。あるいは、これを構文として規則に含めることで、文脈自由文法の範囲内で語法として解決できる可能性がある[1]。
この種の交差依存関係の特徴として、語順を入れ替えてより簡素で文脈自由文法で記述しやすい形に変換することができる。
例えば先の例文を並び替えて作った、
「商品を競売に出しにここに来るように太郎に言った」
という文は依然として文法的であり、時としてそれより受容されやすい。
以上の二種類は、あるいはそれを語用論や意味論に押し付けて、文脈自由文法としての形式を貫くことが可能であったが、スイスドイツ語・オランダ語の方言などでは、文法的に語順が定められており、かつ格の一致に関して対応関係がみられることから、これをもって、自然言語を文脈自由文法で説明することに対する強い反証として考えられることが多い[4][1]。
日本語にはこのような文は存在しないと考えられている。
スイスドイツ語では動詞とその項を連続的に並べることができる[6]。
| ...mer |
em Hans |
es huus |
hälfed |
aastriiche. |
| ...私たちは |
ハンス (dat) |
その家 (acc) |
助ける |
塗る |
意味:「私たちがハンスがその家を塗るのを助ける」
この例文では「es huus ... aastriiche (その家を塗る)」の間に「hälfed (助ける)」が挿入されているので、入れ子状の解析ができないとされる。また、この文の名詞には格表示がされており、「es huus」は対格のため、「hälfed」ではなく「aastriiche」に対応する必要がある[7]。
荷:"...dat Jan Piet de kinderen zag helpen zwemmen" (ヤンがピートが子供たちの水泳を手伝うのを見た) の系列の依存関係を含む依存関係樹形図。 Bresnanらは、オランダ語の二・三・四段階の交差依存関係について、次のような例を示している[2]。ここで、"dat"は英語の関係詞"that"に、"laten"は英語の使役動詞"let"に相当するものと考えるとわかりやすい。
| ...dat |
Jan |
de kinderen |
zag |
zwemmen |
| ...<関係詞> |
ヤン |
子どもたち |
見る-past |
泳ぐ-inf |
意味:「ヤンが子供たちが泳ぐのを見た」
| ...dat |
Jan |
Piet |
de kinderen |
zag |
helpen |
zwemmen |
| ...<関係詞> |
ヤン |
ピート |
子どもたち |
見る-past |
助ける-inf |
泳ぐ-inf |
意味:「ヤンがピートが子供たちが泳ぐのを助けるのを見た」
| ...dat |
Jan |
Piet |
Marie |
de kinderen |
zag |
helpen |
laten |
zwemmen |
| ...<関係詞> |
ヤン |
ピート |
マリー |
子どもたち |
見る-past |
助ける-inf |
<使役動詞>-inf |
泳ぐ-inf |
意味:「ヤンがピートがマリーが子供たちが泳ぐようにさせるのを助けるのを見た」
(より自然な訳:「ヤンがピートがマリーが子供たちを泳がせるのを助けるのを見た」)