京都大学デザインスクール
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背景
21世紀の複合的課題とデザイン学の提唱
21世紀に入り、地球温暖化、大規模災害、エネルギーや食料不足といった、単一の専門領域では解決困難な複合的問題が顕在化した[1][2]。これらの課題に対し、異なる領域の専門家が協働して社会システムやアーキテクチャを再設計する「デザイン学」の必要性が高まった。デザインの概念は、1960年代にハーバート・サイモンが提唱した「デザインの科学」[3]や、梅棹忠夫が指摘した「情報産業時代におけるデザイナーの重要性」[4]を起点として、単なるモノづくり(製品設計)から、関係性や環境を理解し育む「コトづくり」へと大きく進化を遂げた[1][2]。
世界の主要大学における動向
2000年代以降、世界各地の有力大学でデザイン教育の組織化が進んだ[2]。
- スタンフォード大学(d.school):2004年にハッソ・プラットナー・デザイン研究所として設立。機械工学やコンピュータサイエンスを基盤とし、ハンズオン(実践的)なワークショップを通じて「デザイン思考」をビジネスや社会に応用する教育を展開している。学位を授与する独立した専攻ではなく、既存の学問領域に所属する学生が参加する形態をとっている[2]。
- デルフト工科大学:1969年に工業デザイン学部を創設。心理学、機械工学、情報学などの多分野の教員が所属し、人間の欲求(Desirability)、技術の実現性(Feasibility)、ビジネスの実効性(Viability)をバランスよく満たすデザインモデルを追求している[2]。
- ハーバード大学:1936年設立のデザイン大学院(GSD)に加え、2016年には理工学系大学院(SEAS)と共同でデザイン工学修士コースを開設。技術・社会・環境の接点としてのデザイン研究を推進している[2]。
- アールト大学:2010年に工学・芸術・経済の3大学を統合して誕生。産学連携を重視し、ヘルスケアや地球温暖化といった社会的なグランドチャレンジに対する領域横断的な活動を行っている[2]。
京都大学におけるデザイン学の設立理念
こうした潮流の中、京都大学は2013年4月に「デザイン学大学院連携プログラム」を開始した。学術的な基礎研究に強みを持つ京都大学では、デザインを単なる実践的手法としてではなく、「異なる専門分野を繋ぐ共通言語(リンガ・フランカ)」と再定義した[1]。短期の教育プログラムにとどまらず、分野横断的な博士研究を最大の目標とする5年一貫制の博士課程プログラムとして実装され、科学(本質の理解)、工学(技術の創造)、デザイン(社会への適用)が循環する新たな学問体系(Science, Engineering and Design)の確立が目標とされた[2]。