仁田坂英二
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仁田坂 英二 | |
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| 国籍 |
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| 研究分野 | 遺伝学、分子生物学、植物学 |
| 研究機関 | 九州大学大学院理学研究院 |
| 出身校 | 九州大学 |
| 主な業績 |
アサガオのトランスポゾン研究 アサガオ変異体コレクションの保存 ショウジョウバエP因子の研究 |
| 主な受賞歴 |
日本遺伝学会奨励賞(1997年) 松下幸之助花の万博記念奨励賞(2018年) |
| プロジェクト:人物伝 | |
仁田坂 英二(にたさか えいじ)は、日本の遺伝学者。九州大学大学院理学研究院准教授。アサガオ(Ipomoea nil)をモデル生物としたトランスポゾンの研究、および1,500系統を超えるアサガオ変異体コレクションの維持・保存で知られる[1]。初期の研究ではキイロショウジョウバエのP因子によるサイトタイプ決定機構を解明した[2]。2016年にはアサガオの全ゲノム配列の解読に参加した[3]。
研究
ショウジョウバエP因子
初期の研究では、キイロショウジョウバエ(Drosophila melanogaster)のP因子(P element)を対象とした。P因子はDNA型トランスポゾンであり、野外採集系統(P系統)と実験室維持系統(M系統)の交配時に生じる「雑種発育不全」(hybrid dysgenesis)の原因因子として知られていた[6]。仁田坂は、完全長P因子のうちオープンリーディングフレーム0から2のみを保持する欠損型P因子が、P因子の転移を抑制するリプレッサーとして機能し、サイトタイプの決定に関与することを実証した[2]。
その後もショウジョウバエにおいて、P因子の構造変異と転移活性の関係[7]、LINE様I因子の分子進化[8]、brown遺伝子座の眼色変異の分子解析[9]などの研究を行い、1997年に日本遺伝学会奨励賞を受賞した。
アサガオのトランスポゾン
1990年代後半からは、アサガオ(Ipomoea nil)をモデル植物とした研究に軸足を移した。アサガオは江戸時代から変異体が蓄積されており、自家受粉性が強く一世代が一年と短いことから、遺伝解析に適した材料である。
アサガオの多くの突然変異はゲノム中のトランスポゾンが原因であることが明らかにされている[10]。仁田坂は川崎覚とともに、Tpn1ファミリーの構造を詳細に解析した[11]。Tpn1ファミリーはトウモロコシのEn/Spm(CACTA)スーパーファミリーに属するDNA型トランスポゾンであり、共通の28塩基対の末端逆位反復配列(TIR)を持つ。因子内部に宿主の遺伝子断片を取り込んでいる点が特徴的で(gene capture)、同定された因子はすべて完全なトランスポザーゼ遺伝子を欠く非自律性因子であった[11]。
花の形態に関しては、花器官の形成に関与するホメオティック遺伝子DUPLICATED(B機能遺伝子)にTpn1ファミリーのトランスポゾンが挿入されることで、牡丹咲き(八重咲き)の表現型が生じることを単独著者論文として報告した[12]。牡丹咲きは江戸時代から変化アサガオとして珍重されてきた形質であり、この論文でその原因遺伝子が同定された。
アサガオゲノム解読
2016年、基礎生物学研究所、慶應義塾大学、九州大学などの国際研究グループにより、アサガオの全ゲノム配列が解読され、『Nature Communications』に報告された[3]。これは1916年にアサガオの遺伝学研究が開始されてからちょうど100年目の成果であった。ゲノムサイズは推定約750 Mbpで、アセンブリは735.3 Mbpに及び、42,783のタンパク質コード遺伝子が予測された[3]。ゲノム解析により339コピーのTpn1ファミリーが同定されるとともに、矮性遺伝子CONTRACTEDなど多くの変異体の原因遺伝子の解明が進んだ[3]。
ナショナルバイオリソースプロジェクト
アサガオの突然変異系統の組織的な収集は、国立遺伝学研究所の竹中要が1956年の第10回国際遺伝学会議(モントリオール)への展示のために系統を収集したことに始まる[3]。その後1997年に九州大学に移管され、2002年からは文部科学省のナショナルバイオリソースプロジェクト(NBRP)の一環として、九州大学が中核機関となった[1]。仁田坂は九州大学側の担当者として、1,500系統を超える変異体コレクションの維持・提供に従事している[13]。
コレクションには江戸時代(1806年〜1860年頃)に作出された変化アサガオの系統が含まれる[14]。出物(でもの)と呼ばれるホメオティック変異体は、花器官が変化して稔性を失っているため自ら種子を残せない。このため、出物を分離する親系統(親木)を毎年栽培して採種し、翌年に播種するという維持作業を繰り返す必要がある[14]。