先天性眼振

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別称 乳児眼振症候群(Infantile nystagmus syndrome; INS)、先天性(乳児)眼振、乳児期発症眼振
診療科 眼科学、神経眼科
症状 不随意の律動的眼球運動、視力低下、固視困難、異常頭位など
発症時期 多くは生後数週間〜6か月頃
先天性眼振
別称 乳児眼振症候群(Infantile nystagmus syndrome; INS)、先天性(乳児)眼振、乳児期発症眼振
概要
診療科 眼科学、神経眼科
症状 不随意の律動的眼球運動、視力低下、固視困難、異常頭位など
発症時期 多くは生後数週間〜6か月頃
原因 視覚入力障害(感覚性)や眼球運動制御系の発達異常(特発性)など
診断法 眼科診察、屈折検査、眼球運動記録、必要に応じてERG/VEP・遺伝学的検査・画像検査
治療 屈折矯正、弱視治療、ロービジョンケア、薬物療法・手術療法(適応がある場合)
予後 多くは非進行性とされ、生命予後への影響は通常ない(基礎疾患の影響は別途評価)
分類および外部参照情報

先天性眼振(せんてんせいがんしん、英: congenital nystagmus)は、出生時または乳児期早期に発症する不随意の律動的眼球運動(眼振)を特徴とする状態である。英語圏の臨床・研究では、出生直後から明確に診断される例ばかりではないことを踏まえ、より発症時期を反映した乳児眼振症候群Infantile nystagmus syndrome; INS)という用語が用いられることが多い。[1][2]

眼振は、眼球が反復的に偏位する「緩徐相」と、視標へ戻る「急速相」あるいは振り子様運動からなることが多い。乳児期発症の眼振は、単独の眼球運動異常としてみられることもあれば、先天性の視覚障害、遺伝性網膜疾患、白子症、視神経異常など多様な眼疾患や、まれに神経学的疾患に伴って出現することもある。したがって、乳児期に眼振がみられた場合は、眼振そのものの記述だけでなく背景疾患の有無を評価することが重要とされる。[3][4]

分類

乳児期に発症する眼振は、従来、視覚入力の低下に伴う感覚性(afferent/sensory)眼振と、明らかな感覚障害が同定されない特発性(efferent/idiopathic)眼振に大別して説明されることが多い。しかし、眼振波形のみから原因を確定することは困難であり、実臨床では眼科的・神経学的評価と併せて病因を検討する必要があるとされる。[2][3]

眼球震盪との違いを下記に示す。

眼振の定義 眼球の不随意な律動的運動

眼球震盪の定義 眼振を含む広義の眼球運動異常

主な違い 眼振は眼球震盪の一種で、より具体的な症状を指す。

症状

先天性眼振では、不随意で律動的な眼球運動が持続的に認められる。眼振の方向は水平性が多いが、垂直性や回旋性を示す場合もあり、振幅や頻度は視方向や注視条件で変化しうる。[1][2]

視力の程度は一様ではなく、眼振の強さや注視の安定性、ならびに併存する眼疾患の有無によって幅がある。小児の眼振では、基礎疾患により重度の視覚障害からほぼ正常に近い視力まで幅があり得ることが指摘されている。[4][5]

多くの症例では、眼振の振幅が最小となる視方向(ヌルポイント、null zone)が存在し、そこでは視機能が相対的に改善することがある。このヌルポイントを利用するために顔や頭部を一定方向へ向ける異常頭位がみられることがある。[1][5]

乳児期から持続する眼振では、神経適応の影響もあり、後天性眼振でしばしば問題となる動揺視を自覚しないことが多いとされる。[1][6]

原因

先天性眼振は多因子性であり、先天白内障、白子症、遺伝性網膜疾患、視神経低形成など視覚入力を障害する疾患に伴って発症することがある。乳児期の眼振の原因として白子症や遺伝性網膜疾患が多いことは、近年の報告でも示されている。[3][7]

また、遺伝的要因が関与する例もあり、X連鎖性乳児眼振ではFRMD7遺伝子変異が原因となることがある。[8][9]

診断

診断は眼科診察を中心に、発症時期、眼振の性状、視機能、屈折異常、眼底所見を総合して行う。乳児期の眼振は多様な原因をもち得るため、眼疾患の鑑別に加え、必要に応じて神経学的評価を行うことが推奨される。[3][4]

原因疾患が疑われる場合には、網膜機能評価として網膜電図(ERG)や視覚誘発電位(VEP)が有用であり、遺伝性疾患が疑われる場合には遺伝学的検査が診断に寄与することがある。乳児期眼振の原因同定において、臨床診察に加え遺伝学的検査およびERGが有用であったとする報告もある。[7][10]

治療

治療の目的は、眼振そのものの完全消失よりも、視機能の最大化と日常生活上の不便の軽減に置かれる。まず屈折異常の矯正を行い、必要に応じて弱視治療を併用する。コンタクトレンズ装用が眼振を減弱させ得ることも指摘されているが、効果は症例により異なる。[11][12]

薬物療法については、ガバペンチンやメマンチン等が眼振強度や視機能を改善しうるとの報告がある一方、エビデンスは限定的であり、適応は個別に判断される。近年の総説でも、侵襲的治療に加え、非侵襲的介入や生活の質(QOL)指標を含めた評価の重要性が指摘されている。[12][13]

異常頭位が顕著で日常生活に支障がある場合には、ヌルポイントを正面視に近づけることを目的として外眼筋手術が検討される。術後の頭位改善が得られる可能性がある一方、残存する頭位異常が生じ得ることも報告されている。[12][14]

視機能障害がある場合、ロービジョンケアや学校・職場での合理的配慮を含む視覚支援が重要である。小児眼振が生活の質に不利益をもたらし得ること、また臨床経路の中で支援提供が重要であることは、ガイドラインでも強調されている。[10][13]

予後

先天性眼振は一般に非進行性とされ、時間経過とともに著明に悪化することは多くない。基礎疾患を伴わない特発性例では、生命予後に影響することは通常ないとされる。[2][15]

一方、視力の程度や学習・就労上の困難は原因疾患や眼振強度に依存し、支援の有無によって生活上の影響は変化し得るため、長期的なフォローと支援が勧められる。[4][10]

疫学

有病率や出生頻度は研究により幅がある。たとえばデンマークの人口ベース研究では、乳児眼振の出生頻度は出生10,000人あたり約6.1と報告され、早産児でより高頻度であった。[16]

関連項目

脚注

外部リンク

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