動く石
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動く石は、平坦な泥質地表の上にある石が移動し、その背後に細長い溝状の痕跡を残す現象である。レーストラック・プラヤでは、石が引きずられた跡が観察され、その移動過程については、浅い水、凍結した薄い氷板、風などの組み合わせが関与すると説明されてきた[1][2]。
長らく石が実際に動く瞬間は確認されず、風、氷、水、泥の状態などをめぐって複数の仮説が唱えられてきたが、2014年にレーストラック・プラヤで石の移動が直接観測され、浅い冠水、薄い氷板、弱い風の組み合わせが主要な条件であることが強く支持された[9][5]。
石の移動はきわめてまれであり、長期間まったく動かない石もある。このため、研究史の多くは移動痕の分析や地表条件の推定に依拠してきた。また、氷の形成を必要とする移動は気候条件の影響を強く受けるため、移動頻度の低下可能性も指摘されている[7]。
分布と代表例
地形環境
現象の特徴
研究史
動く石の現象は、レーストラック・プラヤの個別的な奇観として広く知られる以前から、乾燥地域のプラヤに見られる移動痕として研究対象となっていた。後年の総括によれば、この種の痕跡は1948年に地質学文献で最初に記載され、その後、南カリフォルニアの複数のプラヤのほか、チュニジアや南アフリカでも類例が報告されている[12]。
20世紀中の研究事例としては、1955年にジョージ・M・スタンリーがレーストラック・プラヤの石の痕跡形成を検討した。1995年にはレイドら、1996年にはベーコンらが移動条件や痕跡形成について論じ、2000年にはメッシーナとストファーが地形分析を通じて石の分布と痕跡を整理した[10][13][14][15]。
2013年にはクレテチカらが、岩石の熱伝導率や水位変動が移動に関与する可能性を論じた。続いて2014年、ノリスらはGPS装置を組み込んだ石、定点撮影、気象観測を組み合わせ、石が移動する様子を直接観測した[9][16]。
移動機構
2014年の観測で強く支持された説明では、まずプラヤ表面が浅く冠水し、寒冷な夜間に数ミリメートル程度の薄い氷板が形成される。翌朝から日中にかけてこの氷板が割れ、風に押されてゆっくり移動し、その過程で石を湿った泥面上で押し動かす。重要なのは、石そのものが大きく浮き上がることではなく、薄い氷板が広い面積で風の力を受け、比較的弱い風でも石を動かしうる点である[9][5]。
この観測では、2013年12月20日に60個を超える石が移動し、計測対象の一部は2013年12月から2014年1月の間に最大224メートル移動した。氷の厚さはおおむね3 - 6 mm、風速は約4 - 5 m/s であり、移動速度は毎分2 - 5メートル程度であった。これは、従来想定されていた暴風や厚い氷板による説明を修正する重要な観測とされた[7][9]。
ただし、移動機構に関する議論が完全に終結したわけではない。2015年には、きわめて滑りやすい表面条件では風だけでも石が移動しうるとの報告が出されている。そのため、レーストラック・プラヤにおける代表的な機構としては薄氷と弱風の組み合わせがもっとも有力である一方、すべての移動痕が同一条件で形成されるとは限らない可能性がある[12][9]。
また、石の形状、底面の粗さ、泥面の含水状態、微地形、冠水の持続時間などが痕跡の形や移動距離に影響することも指摘されている。したがって、動く石は単一要因で説明されるというより、プラヤ表面の含水状態、気温、氷の形成条件、風速、石の形状や重さなど複数の条件が重なったときに生じる現象として理解するのが適切である[9][10][12]。

