吉野俊彦
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下村・吉野論争
千葉県生まれ。武蔵高等学校を経て、1938年に東京帝国大学法学部を卒業し、日本銀行に入行する。日銀では調査局に勤め、内国調査課長、局次長、局長を経て1970年に理事に就任した。
1974年に山一證券経済研究所理事長に転じ、1984年に会長、1985年に特別顧問となり1998年まで務めた。 また1978年1月に前川春雄副総裁を委員長とする日本銀行百年史編纂委員会が発足すると、呉文二、西川元彦と共に日本銀行百年史編纂委員会の委嘱委員を務めた[1]。
神武景気以降、岩戸景気前夜の1950年代後半から1960年代初頭にかけて、戦後復興が一段落し、多くのエコノミストが「復興の勢いは終わり、これからは安定成長に移行する」と見通していた時期に、日本経済は依然として高い成長を維持できるか、それとも成熟・安定化すべきか、高度経済成長の是非と、日本経済の潜在能力をどのように評価するかを巡り、高度成長論者である下村治と安定成長論者の吉野の間で論争をおこなった。
下村治(高度成長派)の主張
- 日本経済は「歴史的勃興期」にある。
- 設備投資が新たな需要を創出する「投資が投資を呼ぶ」サイクルによって、10%以上の高度成長は可能である。
- 銀行のオーバーローン(預金以上の貸出)は悪ではなく、成長の原動力である。
下村は「日本経済という車は、時速80キロで走る潜在能力がある」と主張した。
吉野俊彦(安定成長派)の主張
- 日本銀行の調査部門の立場から、急速な成長はインフレや国際収支の悪化(輸入超過)を招くと警告した。
- 「安定成長」が重要であり、無理な投資は将来的に経済危機を招くリスクがあると論じた。
- 金融政策による調整が必要である(日銀の立場)
下村の主張する「実力成長率」理論に基づき、池田勇人内閣は1960年に「所得倍増計画」を打ち出した。
日銀の歴史や政策、経済学、金融史に関する重厚な著作を多く遺しており、現在も研究や実務の参照資料となっている。 後半生は森鷗外研究でも知られ[2]、晩年は永井荷風について書いた。多数の著作がある。
著書
- インフレーションの経済学 時事通信社 1948
- 九原則と経済安定 労働文化社 1949
- 通貨安定と資産再評価 シヤウプ案を中心に 有恒社 1949
- 我国金融制度の研究 実業之日本社 1952
- 我が国の金融制度と金融政策 至誠堂 1954
- 円の歴史 至誠堂新書 1955
- 歴代日本銀行総裁論 日本金融政策史の研究 ダイヤモンド社 1957
- 欧米金融視察旅行記 至誠堂 1958
- 中央銀行制度の改革 全国地方銀行協会 1959(銀行叢書)
- 琉球旅行記 至誠堂 1960
- 通貨の知識 日本経済新聞社 1961(日経文庫)
- 金融の知識 日本経済新聞社 1961(日経文庫)、のち全訂版
- 日本銀行制度改革史 東京大学出版会 1962
- 日本銀行 岩波新書 1963
- 開放体制下の金融政策 欧州インフレ見聞旅行記 至誠堂 1964
- 私の戦後経済史 至誠堂新書 1965
- 福祉国家の金融政策 地上の楽園・濠洲ニュージーランド旅行記 至誠堂 1966
- 資本の自由化と金融 岩波新書 1969
- 森鴎外私論 正続 毎日新聞社 1972-1974
- 忘れられた元日銀総裁 富田鉄之助伝 東洋経済新報社 1974
- 戦後金融史の思い出 日本経済新聞社 1975
- 日本銀行史 全5巻 春秋社 1975-1979
- 歴代日本銀行総裁論-日本金融政策史の研究 毎日新聞社 1976/講談社学術文庫 2014(鈴木淑夫補論)
- サラリーマンの生きがい 生涯を賭けた仕事を持て 徳間書店 1977.12 のち文庫
- サラリーマンのライフワーク わが生きがい論 徳間書店 1978.8 のち文庫
- あきらめの哲学-森鴎外 PHP研究所 1978.12 のち文庫
- サラリーマンの哀歓 わが出処進退十訓 徳間書店 1978.12
- 権威への反抗-森鴎外 PHP研究所 1979.8
- サラリーマンの知的読書法 経済書から文学書まで 東洋経済新報社 1979 のち徳間文庫
- 横丁のご隠居 経済・人生談議 日本経済新聞社 1980.4
- 虚無からの脱出-森鴎外 PHP研究所 1980.8
- 青春の激情と挫折-森鴎外 PHP研究所 1981.2
- 豊熟の時代-森鴎外 PHP研究所 1981.3
- 双頭の獅子-森鴎外 PHP研究所 1982.7
- 菜根譚の読み方 壁にぶつかったとき勇気が湧く本 徳間書店 1982.8
- 鴎外・逆境の人間学 グラフ社 1983.11
- 複線的ライフワークのすすめ サラリーマン生きがいの探求 充実した人生をどう創るか PHP研究所 1984
- 孤独地獄-森鴎外 PHP研究所 1985.3
- 鴎外百話 徳間書店 1986.11
- 鴎外語録 男の生きがいとは何か 大和出版 1987.11
- 円とドル 円高への軌跡と背景 日本放送出版協会 1987.11、のちNHKライブラリー
- ビジネスマンとしての「私」の勉強術 講談社 1989.1
- わが家のルーツ探し プレジデント社 1990.11
- 鴎外・五人の女と二人の妻 もうひとつのヰタ・セクスアリス 文春ネスコ 1994.8
- 鴎外・啄木・荷風 隠された闘い いま明らかになる天才たちの輪舞 文春ネスコ 1994.3
- 昭和恐慌は再来するか 歴史派エコノミストの視角 ダイヤモンド社 1995.12
- 知恵をしぼれ! デフレを生きる発想 日本経済新聞社 1996.2、「これがデフレだ!」日経ビジネス人文庫 2001
- カイゼル髭の恋文 岡野敬次郎と森鴎外 清流出版 1997.11
- 企業崩壊 私の履歴書(正・続) 清流出版 1998.12
- 「斷腸亭」の経済学 荷風文学の収支決算 日本放送出版協会 1999.7
- 永井荷風と河上肇 放蕩と反逆のクロニクル 日本放送出版協会 2001.6