Wikiwand AI

国民医療費

From Wikipedia, the free encyclopedia

国民医療費(こくみんいりょうひ、英語: Estimates of National Medical Care Expenditure)は、当該年度内に日本の医療機関等で行われた、保険診療の対象となり得る傷病の治療に要した費用を厚生労働省が推計したものである[1]。医療保険制度、公費負担医療制度、後期高齢者医療制度などによる給付額と、患者の一部負担額および全額自費で支払われた費用の推計額を合算して作成される[2]。

国民医療費は、国民に必要な医療を確保するための基礎資料であり、医療保険制度および医療経済に関する指標として用いられる[1]。政府統計の総合窓口(e-Stat)では、厚生労働省保険局調査課が担当する年度次の加工統計に分類され、政府統計コードは00450032である[3]。

2023年度の国民医療費は48兆915億円で、人口一人当たりでは38万6,700円、国内総生産(GDP)に対する比率は8.08%であった[4]。

厚生労働省は、国民医療費を中央社会保険医療協議会における診療報酬改定の検討資料や、生涯医療費を推計する際の資料として利用している[5]。

統計表では、制度区分、財源、診療種類、年齢階級、性別、傷病分類および都道府県別の結果が公表されている[3]。


範囲

国民医療費の対象は、保険診療の対象となり得る傷病の治療費である。公的医療保険などの給付分だけでなく、それに伴う患者の一部負担および保険診療の対象となり得る治療について全額を自費で支払った費用も含む[2]。

さらに見る 国民医療費に含まれるもの, 国民医療費に含まれないもの ...
国民医療費に含まれるもの 国民医療費に含まれないもの
医科および歯科の診療費[2] 正常な妊娠、分娩および産褥に要する費用[2]
医師の処方箋に基づく薬局調剤医療費[2] 健康診断、検診および予防接種など、健康の維持・増進を目的とする費用[2]
入院時食事・生活医療費[2] 美容整形など、傷病の治療を目的としない費用[2]
医療保険による訪問看護医療費[2] 介護保険による訪問看護費や施設サービス費[2]
医療保険の給付対象となる柔道整復師、はり師などによる治療費[2] 医師の指示によらないマッサージなど、医療保険の適用外となる施術費[2]
医療保険の給付対象となる移送費、補装具などの費用[2] 固定した身体障害のために必要となる義眼、義肢、眼鏡などのうち、傷病の治療費に当たらない費用[2]
評価療養・選定療養に伴う保険診療部分である保険外併用療養費[2] 先進医療などの評価療養、差額室料や歯科材料差額などの選定療養のうち、保険診療の対象外となる部分[2]
保険診療の対象となり得る傷病について、患者が全額を自費で支払った治療費の推計額[2] 一般用医薬品の購入費、医療機関へ通うための交通費など[2]
閉じる

2000年4月に介護保険制度が施行された際、それまで国民医療費に含まれていた費用のうち、介護保険へ移行したものは2000年度以降の国民医療費から除外された[1]。

推計方法

国民医療費は、制度区分別には次の費用を合算して推計する[2]。

  1. 国または地方公共団体が負担する公費負担医療給付分
  2. 医療保険制度および労働者災害補償保険制度などによる医療保険等給付分
  3. 後期高齢者医療制度による後期高齢者医療給付分
  4. 上記の給付に伴う患者の一部負担額の推計値
  5. 保険診療の対象となり得る傷病について全額を自費で支払った費用や、自動車損害賠償責任保険による支払額の推計値

公費負担医療給付分、医療保険等給付分および後期高齢者医療給付分には、原則として当該年度内の診療について確定した支払額が使用され、高額療養費も含まれる[2]。

制度区分別の推計額を基礎として、財源別、診療種類別、年齢階級別、性別、傷病分類別および都道府県別の国民医療費が、各種統計や行政記録による構成割合を用いて推計される[2]。人口一人当たり国民医療費は、国勢調査または総務省統計局の人口推計による総人口を用いて算出される[2]。

統計の沿革

国民医療費の推計結果は1954年度から公表されている[1]。

さらに見る 年度・年月, 変更内容 ...
年度・年月 変更内容
1954年度 「国民総医療費」として推計を開始[1]
1957年2月 厚生統計協議会医事統計専門部会が推計方法を決定[1]
1962年度 診療種類別ならびに結核・精神・その他の傷病別推計を追加[1]
1972年度 国民総医療費から買薬費、あんま施術料などを除外し、名称を「国民医療費」へ変更[1]
1977年度 年齢階級別および傷病大分類別の一般診療医療費を追加[1]
1981年度 財源別国民医療費を追加[1]
1987年度 3年ごとの都道府県別国民医療費の推計を開始[1]
2000年度 介護保険へ移行した費用を国民医療費の対象から除外[1]
2008年度 性別国民医療費を追加[1]
2010年度 従来の一般診療医療費を「医科診療医療費」と「療養費等」に分けて表章[1]
2015年度 都道府県別国民医療費を毎年度推計する方式へ変更[1]
閉じる

推計範囲や表章方法は時期によって変更されているため、長期的な数値を比較する際には、制度変更による影響に注意を要する[1]。

年次推移

主な年度の国民医療費、人口一人当たり国民医療費およびGDPに対する比率は次のとおりである[4]。

さらに見る 年度, 国民医療費 ...
年度 国民医療費 人口一人当たり GDP比
1965年度 1兆1,224億円 1万1,400円 3.32%
1975年度 6兆4,779億円 5万7,900円 4.25%
1985年度 16兆159億円 13万2,300円 4.85%
1995年度 26兆9,577億円 21万4,700円 5.13%
2000年度 30兆1,418億円 23万7,500円 5.61%
2010年度 37兆4,202億円 29万2,200円 7.41%
2015年度 42兆3,644億円 33万3,300円 7.83%
2019年度 44兆3,895億円 35万1,800円 7.97%
2020年度 42兆9,665億円 34万600円 7.97%
2021年度 45兆359億円 35万8,800円 8.12%
2022年度 46兆6,967億円 37万3,700円 8.23%
2023年度 48兆915億円 38万6,700円 8.08%
閉じる

2023年度は前年度と比べて1兆3,948億円、3.0%増加し、人口一人当たりでは1万3,000円、3.5%増加した[4]。

2023年度の構成

制度区分別

制度区分別国民医療費は、費用がどの給付制度または患者負担によって支払われたかに基づく分類である[2]。

さらに見る 制度区分, 金額 ...
制度区分 金額 構成割合
公費負担医療給付分 3兆4,594億円 7.2%
医療保険等給付分 21兆5,147億円 44.7%
後期高齢者医療給付分 17兆2,072億円 35.8%
患者等負担分 5兆9,101億円 12.3%
総数 48兆915億円 100.0%
閉じる

患者等負担分には、患者の一部負担と全額自費による支払額に加え、自動車損害賠償責任保険による支払額が含まれる[4]。

財源別

財源別国民医療費は、各制度の給付額を、最終的に費用を負担する主体へ割り当てた分類である[2]。このため、国民医療費は国や地方公共団体の公費だけを示すものではなく、保険料、患者負担および原因者負担も含む。

さらに見る 財源, 金額 ...
財源 金額 構成割合
公費 18兆331億円 37.5%
┗ 国庫 11兆9,252億円 24.8%
┗ 地方公共団体 6兆1,079億円 12.7%
保険料 24兆1,383億円 50.2%
┗ 事業主 10兆5,613億円 22.0%
┗ 被保険者 13兆5,770億円 28.2%
その他 5兆9,201億円 12.3%
┗ 患者負担 5兆6,865億円 11.8%
総数 48兆915億円 100.0%
閉じる

「その他」には患者負担のほか、公害健康被害補償制度、健康被害救済制度および自動車損害賠償責任保険による原因者負担が含まれる[4]。

診療種類別

さらに見る 診療種類, 金額 ...
診療種類 金額 構成割合
医科診療医療費 34兆5,498億円 71.8%
┗ 入院医療費 17兆8,580億円 37.1%
┗ 入院外医療費 16兆6,918億円 34.7%
歯科診療医療費 3兆2,945億円 6.9%
薬局調剤医療費 8兆4,563億円 17.6%
入院時食事・生活医療費 7,437億円 1.5%
訪問看護医療費 5,727億円 1.2%
療養費等 4,744億円 1.0%
総数 48兆915億円 100.0%
閉じる

訪問看護医療費は前年度から23.6%増加し、薬局調剤医療費は5.8%増加した[4]。

年齢階級別

さらに見る 年齢階級, 国民医療費 ...
年齢階級 国民医療費 構成割合 人口一人当たり
0~14歳 2兆7,688億円 5.8% 19万5,400円
15~44歳 5兆8,422億円 12.1% 14万8,300円
45~64歳 10兆5,998億円 22.0% 30万6,800円
65歳以上 28兆8,806億円 60.1% 79万7,200円
┗ 70歳以上 24兆9,902億円 52.0% 86万4,900円
┗ 75歳以上 19兆1,503億円 39.8% 95万3,800円
総数 48兆915億円 100.0% 38万6,700円
閉じる

65歳未満の人口一人当たり国民医療費は21万8,000円であり、65歳以上は79万7,200円であった[4]。

傷病分類別

主傷病に基づく医科診療医療費をICD-10の傷病分類別にみると、2023年度の上位5分類は次のとおりである[4]。

さらに見る 傷病分類, 医科診療医療費 ...
傷病分類 医科診療医療費 構成割合
循環器系の疾患 6兆2,834億円 18.2%
新生物〈腫瘍〉 5兆1,994億円 15.0%
筋骨格系および結合組織の疾患 2兆7,581億円 8.0%
損傷、中毒およびその他の外因の影響 2兆6,977億円 7.8%
呼吸器系の疾患 2兆5,979億円 7.5%
閉じる

65歳未満では新生物〈腫瘍〉が1兆7,168億円で最も多く、65歳以上では循環器系の疾患が4兆9,935億円で最も多かった[4]。

都道府県別

都道府県別国民医療費は、患者の住所地に基づいて推計される[6]。

2023年度の人口一人当たり国民医療費は、高知県が49万6,300円で最も高く、次いで鹿児島県が46万9,800円、徳島県と長崎県がそれぞれ46万7,100円であった。最も低かったのは埼玉県の34万2,500円で、次いで千葉県が34万7,200円、滋賀県が35万1,300円であった[4]。

他の医療費統計との違い

概算医療費

厚生労働省が毎月公表する「医療費の動向」における概算医療費は、医療機関から提出されたレセプトを基に、医療保険および公費負担医療の医療費を迅速に集計した速報値である[7]。

概算医療費には、労働者災害補償保険による医療費や全額自費による治療費などが含まれず、国民医療費の約98%に相当する[7]。国民医療費は対象範囲が広く、確定額や各種推計を用いるため、概算医療費より公表時期が遅い。

OECDの保健医療支出

経済協力開発機構(OECD)が国際比較に用いる保健医療支出は、国民医療費より対象範囲が広い。国民医療費に加え、介護費用の一部、民間医療保険からの給付、正常な妊娠・分娩、予防・健康増進などの費用を含む[8]。このため、国民医療費のGDP比を、諸外国の保健医療支出のGDP比とそのまま比較することはできない[8]。


関連項目

脚注

外部リンク

Related Articles

Timelines

Top Qs

Fact Checks