垂直統合
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概説
マイケル・ポーターの1980年の著書Competitive Strategyには次のような定義文が書かれている。
Vertical integration is the combination of technologically distinct production, distribution, selling and/or other economic processes within the confines of a single firm.[2](垂直統合とは、技術的に異なる生産、流通、販売、および/またはその他の経済的プロセスを、単一の企業の内部に組み合わせることである。)
日本大百科全書には、ポーターの定義文で「その他の経済的プロセス」と曖昧に書かれていたものをより具体的に、技術開発、あるいはサービスなどと明記した、次のような定義が書かれている。
垂直統合は、技術開発、生産、販売、サービス提供などの業務を、単一の企業(あるいは企業グループ)がすべて担うビジネスモデルである[3]。
- 部分垂直統合
なお、完全に自社生産するのではなく、自社生産と外部からの購入を併用する方式を部分的垂直統合(テーパード統合、tapered integration)と言う、とマイケル・ポーターのCompetitive Strategyに書かれている。そしてフォード(Ford)とゼネラル・モータース(GM)の例を挙げ、部品などについて自社製造能力を持つ一方、外部のサプライヤーからも購入する、という方式を採用している、と説明している。
- 利点と欠点
垂直統合というビジネスモデルに移行することの利点としては、コスト管理の徹底が図れること、技術漏洩の防止ができること、業務範囲を拡張できることである[1]。また、原料や製品の調達日数や納期を安定化できること、顧客ニーズにあった製品の開発がしやすいこと、品質向上がしやすいなどの利点がある[3]。
一方、欠点としては、設備投資が巨額となり既存事業から撤退しにくくなるなど、経営リスクが大きくなることである[3]。
したがって、垂直統合というビジネスモデルを選択したことが吉と出る場合も凶と出る場合もある。
自動車産業の例
マイケル・ポーターが自著でフォードとゼネラル・モータース(GM)の部分垂直統合について言及したことはすでに説明した。
ジョン・ギャンブル(John E. Gamble)らの2020年の著書はテスラ(Tesla。テスラモータース)の例を挙げている。ギャンブルによると、他の多くの自動車メーカーとは異なり、テスラは部品製造から車両の販売・整備に至るまで垂直統合を推進している[4]。テスラは、長距離走行可能な電気自動車に不可欠なバッテリーを製造するギガファクトリー社に投資した[4]。そして、重要な部品や、頻繁な更新を必要とする新しい部品を社内で製造することによって、同社は素早く学習し、より速く新しいバージョンを発売できるようになった[4]、と説明している。
コンピュータ業界の例
日本のエレクトロニクス業界における例
日本のエレクトロニクス業界衰退の原因について、垂直統合モデルへの固執が原因という説がある[5][6]。
日本の携帯電話業界では、SIMロックなどによって、回線提供者(通信事業者)と機器の結びつきは固定的となり、通信回線・端末・サービスが三位一体の垂直統合化が進んだ。この結果、それぞれのメーカーが独自開発のもとに製品展開を行ったため、ハードウェアの性能、サービスの内容、規格の標準化、価格などの面で国際的な競争に追従できず、俗にガラパゴス化が進んだといわれる。こうして通信回線を持たないAppleなどの大手スマートフォンメーカーの台頭によって産業構造が大幅に変化し、携帯電話の生産からの撤退が相次いだ。
アパレル産業における例
マイケル・ポーターが挙げた例は、紳士服製造会社のRobert Hallだった。 Robert Hall’s difficulties in the men’s clothing business were partly caused by its exclusive use of internal production.(ロバート・ホール社は紳士服の生産を外部企業に委託せず、自社内部の生産だけに依存したことが問題の一因だった) つまりRober Hallの例は垂直統合が原因となりビジネスに問題が生じたほうの例として挙げた。
ロバート・グラント(Robert M. Grant)の書籍が挙げている新しい例としてはZARA(ザラ/インディテックス)がある。Inditexは、Zaraブランドで販売する衣料品の大部分を、自社で製造し、製造工場から、流通も自社が直接管理し、小売店舗までのすべてを自社で行っている[7]。「Zaraの自社生産工場は、生産から市場投入までの時間に特に敏感な製品に集中している。」「自社内生産に関しては、Zaraの工場は生地の裁断に集中しており、縫製のほうは主として約200の請負業者によって行われている。」と解説されている[7]。つまりインディテックスがZaraブランドで行っている垂直統合は、部分垂直統合であると言ってよい。
ファーストリテイリングも同様に製品開発、生産、販売を垂直統合していることは広く知られている。
映画業界における例
映画業界では「ヴァーティカル・インテグレーション」「垂直統合」のほか「縦の系列化」とも言い、同一の会社が映画の製作・配給・興行のすべてを行うビジネスモデルである。
アメリカ合衆国では、このようなビジネス手法は、1940年代後半に独占だとされ、違法との判決が出た。1948年にパラマウントが真っ先にこの判決を受けたので「パラマウント・ケース」(パラマウント判決)とも呼ばれている。この判決が下された結果、パラマウント映画は製作会社組織と配給部門を切り離すことになり、製作会社のパラマウントと配給会社のパラマウント・ピクチャーズを別会社として登記し、別会社として商標登録した。
日本では、第二次世界大戦前から、大手と呼ばれた日活、あるいは松竹キネマ、帝国キネマ演芸、東宝映画、戦後も、松竹、東宝、大映、東映が垂直統合を行った。東宝から分離した新東宝はこの形成に失敗し、経営破綻の原因の1つとなった。